トラヴェルノートにつづる “世界”を旅するモノローグ:METHOD #12

ウェアラブルなプロダクトやサーヴィスを紹介するコーナー「METHOD」で、本誌特集「ワンダーラスト」に合わせ、旅の道程と風景に沿ったモノローグのスタイルでお届けする。次なる旅への準備として、移動への欲望をかき立てるアイテムとともに、トラヴェルノートにつづられる“妄想”ジャーニーを愉しんでほしい。(雑誌『WIRED』日本版VOL.38から転載)
トラヴェルノートにつづる “世界”を旅するモノローグ:METHOD 12
PHOTOGRAPHS BY KAZUHIRO FUJITA

国境も、時間も、次元も自由に飛び越えるような旅に出た。そう決心させたのは、さまざまなモノとの出合いだった。「これさえあれば」「これと一緒に」──そんな思いを繰り返すうち、呪縛されていた内なるWanderlustが、宙へと放たれた。旅することへの欲望をかき立てる衣服やグッズの数々を紹介する。


イノヴェイティヴなモノたちに誘われて

ある日、愛用の眼鏡ブランドでクリップオンのサングラスを見つけた。必要なときだけ、いつもの眼鏡に装着すればいいのだから、旅行中のさまざまなシーンに対応してくれるはずだと考えたが、これが大正解。寒冷地でも使えるし、思いの外エクスペディション向けダウンウェアとの相性もいい。

雪山にはクラシックな顔の“オリジナル”をベースにした、最新のダウンウェアでチャレンジした。極寒地において、コレを超えるアウターは存在しない(はず)。最高のパフォーマンスと環境性能の両立は、これからの時代におけるものづくりのニューノーマルになるべき指標だ。

今回の旅のコンセプトに、繊細な機械式腕時計なんて似合わない。毎日のライフログは継続したいし、ソーラー充電機能やアクティヴィティトラッカーとしての機能だって欲しいから。雪山登山でもマリンスポーツでも、耐衝撃性能で世界的に知られる“権威”の安心感は絶大だった。

道中、よく着ていたのはタウンでもアウトドアでも着られるフィールドジャケット。なんて上品な“白”なんだろうと思うし、聞けば白漆という無着色の漆にインスパイアされた生地なのだという。どこに行っても「どこの服?」と尋ねられる。漆器は英語でJapanだけど、このジャケットもどこか日本人の精神性を象徴しているようで、ちょっと自慢気にブランド名を告げた。

スカーフや腰巻き、さらにはクロスボディのミニバッグとしても活躍したのが「スカーフバッグ」。もし忍者が現代に存在したら、こんな装備を身に着けているかもしれない(レタリングはないだろうけど)。かさばらないから、次の旅も必ず持って出ることにしよう。

旅の思い出が、目に見えて増えていくのは楽しい。だからヴィンテージのワッペンが目を引くこのベレーには、ピンズやバッジを付けることに決めた。極上のアルパカセーターと合わせて着ても、絶妙な感じでほっこり感が出る。南米の生産者たちの就労環境、生活水準改善の賜物でもあるこのセーターは、買う人も、売る人も、つくる人も幸せにする。これぞラグジュアリー。

実はこの旅に出る前に、真っさらな新品のヌメ革ブーツをおろした。途中で替えひもにチェンジして、砂利道でついた傷も味わいと思いながら履き込んでいるうちに、いつの間にか美しい飴色に成長していた。自分だけの旅の記憶が刻まれた唯一無二のブーツ……なんてカッコいいんだろう。

パリ・オートクチュールでコレクションを発表している日本人デザイナーが、オンラインで“オンリーワン”のシャツをオーダーできるサーヴィスを始めたと聞いたので、旅の途中で早速トライ。「今度世界遺産の植物園に行くんです」。そんな思いを語りデザインのベースとして送ったフローラルプリントシャツは、白のフリル使いが印象的なワンピースとして生まれ変わって帰ってきた。世界のどこからでもオーダーできて、どこでも受け取れる体験もまた、新しいラグジュアリーだ。

現地での移動時に重宝したのが、アップサイクルな素材使いが面白いバックパックだ。さりげない高級感が所有欲をくすぐる。 寝るときはいつものオーガニックコットンパジャマが欠かせないし、やはり下着はシルクがいい。歯ブラシや歯磨き粉がないホテルも少なくないから、普段使いのセットを入れて、念のため香りのよい紙石鹸も持参。

機内では、ニットのセットアップを重宝した。超希少なカシミアなのに、ペインターみたいな染み付きなのがチャーミング。眠れないときはおこもり中のストレス発散にも貢献してくれたヴァーチャル空間にトリップ。自分が着る服と同じ服をアヴァターにもデザインするブランドなんて、ワクワクしかない。

高まり続ける移動への欲望にとどめを刺したのは、未来的かつ職人的なレザーバッグだ。このバッグがあれば、すっかりラグジュアリーなものとなってしまった「移動」という行為そのものを楽しめる。


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PHOTOGRAPHS BY KAZUHIRO FUJITA

TEXT BY JUNYA HASEGAWA @america

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