仏前式の流れ
日本古来の由緒ある結婚式として見直されつつあるとはいえ、「仏前式」はまだまだ少数派。どんな流れで進行するのかまったくわからない、という人も多いでしょう。
以下に、簡単に「流れ」を紹介します。
- 1. 入堂(にゅうどう)
- 両親、親族、参列者の順で入堂します。全員が着席してから、媒酌人と呼ばれる立会人に付き添われた新郎新婦が入堂。最後に僧侶が入堂します。
- 2. 啓百文
(けいびゃくもん)朗読 - 僧侶が仏と先祖に二人の挙式を報告するための経文の一部を読み上げます。
- 3. 念珠の授与
- 念珠とは数珠のことです。僧侶は、白い房の念珠を新郎に、赤い房の念珠を新婦に授けます。新郎新婦は受け取った念珠を左手の親指以外の4本の指にかけ、合掌します。
- 4. 司婚の辞
- 僧侶の求めで、新郎新婦が夫婦としての契りを交わす誓いを立てます。その後、僧侶が参列者に結婚の成立を宣言。
- 5. 焼香
- 新郎、新婦の順で、左に念珠をかけたまま行います。
- 6. 誓杯の儀
- 神前式で行なう三三九度とおなじようなものですが、仏前式では三段の杯のうち小杯だけを使います。新郎新婦の誓杯に続いて、親族固めの杯を交わします。
- 7. 法話
- 僧侶が新郎新婦にお祝いの言葉を述べ、結婚の意味を説く法話を聞かせてくれます。
- 8. 退堂
- 起立して合掌、礼拝ののち、僧侶、新郎新婦、媒酌人、両親、親族の順に退堂します。
以上が大まかな流れです。今何をしているのか、どんな意味があるのか。きちんと理解しておくことが大切です。また、結婚指輪の交換をしたい場合は事前にお寺に申し入れを。念珠授与の前後に組み込まれます。
仏前式の費用
仏前式の挙式料は、10~25万円程度。教会挙式や神前式に比べると、かなり安い費用で式が挙げられます。これも近年「仏前式」が見直されつつある理由のひとつですね。ただし、この費用の中には衣装や着付け、写真代などは含まれていません。普通のお寺では、まず衣装のレンタルは行なっていないので、新郎新婦自身が手配しなくてはなりません。和装のレンタル料金の相場は次のとおりです。
- 白無垢…打掛から帯・小物一式混みで10~20万円
- 色打掛…15~25万円
- 引振袖…10~15万円
- 新郎紋付羽織袴…5~15万円
また、特別大きな寺院でないかぎり披露宴やパーティができるような会場は併設されていませんので、披露宴を行なう場合には会場や料理の手配が必要になります。「結局なんだかんだと費用がかかるじゃない…」と思われそうですが、そこは工夫次第。たとえば自宅の仏前や地元のお寺で式を挙げて公民館やレストランで披露宴を行なえば、立派な「挙式+披露宴」でもかなりリーズナブルに抑えられます。
最近では仏前式でも“指輪の交換”を行なうカップルが増えています。「念珠の授与」で新郎新婦に授けられる「数珠」は費用に含まれていますが、指輪は新郎新婦自身でご用意を。
仏前式での新郎新婦の衣装
仏前式の衣装は、基本的には神前式と同じと考えてください。寺院やお堂で挙式する場合は原則として「和装」です。ただ、お寺によっては洋装(ウェディングドレス)を許可しているところも。どこまでがOKで何がNGか…。衣装を選ぶ前に、挙式を予定しているお寺に確認しておきましょう。
< 新郎の衣装 >
現代男性の和装第一礼装「紋付羽織袴(もんつきはおりはかま)」です。足元は白足袋と白草履を合わせます。新郎の衣装にはバリエーションがほとんど無く、形はほぼこの一点です。色は「黒」が圧倒的多数ですが、白やグレーといった色もときおり見かけます。
< 新婦の衣装 >
打掛から掛下まですべてを白で統一した「白無垢」+綿帽子または角隠し、のスタイルが最もスタンダードな式服です。色打掛は、挙式後の披露宴で羽織るものだと言われてきましたが、実は色打掛も白無垢と同等の“婚礼式服”なのです。ということで、色打掛+角隠しの組み合わせで挙式に臨むこともあります。
また、「お引きずり」と呼ばれる「引き振袖」も、古くから婚礼衣装として用いられてきました。おはしょりを作らず裾を引きずるように着る振袖で、色柄も豊富なのですが、本来は挙式で着ることができるのは黒地の「黒引き振袖」だけです。頭には角隠しを合わせます(※白無垢は綿帽子、色打掛・引き振袖は角隠し)。
振袖は未婚女性の正式礼装。つまり、振袖を着られるのはこれが最後のチャンスということもあり、この黒引き振袖を選ぶ花嫁も多いのだそうです。
仏前式での誓いの言葉は?
教会挙式では、神父さんに「○○を誓いますか?」と聞かれて新郎新婦は「誓います」と答えますよね。仏前式の“誓いの言葉”は、それとはちょっと違うのです。
ご本尊にふたりの「結婚」を報告し、この「縁」に感謝を述べ、これからどんなふうに夫婦として生きていくかを誓言するというものです。仏前式の誓いの言葉は「新郎新婦ふたりの誓い」であり、新郎が代表で読み上げます。その内容についてはお寺、宗派によって異なり、決まった言い回しはありませんが、人前式のように何を伝えてもOKというわけではありません。予め決まった文言が用意されていて、それをベースに自分たちなりのアレンジを加えるといったところでしょうか。
昔ながらの由緒正しい伝統を保ちながら、少しずつ現代に合った進化も遂げている「仏前式」。これから話題を呼びそうです!