初代編集長ブログ―安田英久

オンライン動画、スタートまで2秒超で5.8%ずつ離脱していき、中断1%ごとに再生時間が5%減る

大規模な調査データから見えてきた、「ユーザーはいかに動画を見るのにせっかちか」の情報
Web担のなかの人

今日は、オンライン動画の表示パフォーマンスに関する大規模な調査データから見えてきた、「ユーザーはいかに動画を見るのにせっかちか」の情報をお届けします。

オンライン動画の再生開始まで2秒より多くかかった場合、かかる時間が1秒増えるごとに動画の再生をあきらめる率が5.8%増える。

途中でのリバッファリングによる再生中断が動画全体の長さの1%分発生するごとに、リバッファリングがない場合に比べてその動画の閲覧時間が5%短くなる。

そんなデータが発表されました。

世界的なCDN(コンテンツ配信ネットワーク)であるアカマイのS. Shunmuga Krishnan氏と、マサチューセッツ大学(とアカマイ)のRamesh K. Sitaraman氏による論文「Video Stream Quality Impacts Viewer Behavior: Inferring Causality Using Quasi-Experimental Designs」です。

この論文では、アカマイのCDNを利用して配信される各オンラインストリーミング動画について、

  • 開始までどれぐらい時間がかかったか
  • 途中でリバッファリングにより再生が中断されたか

を調べ、さらに各動画の閲覧者が

  • 動画の再生を途中でやめたか
  • どれぐらい長く動画を見たか

を調べています。

ニュース・エンターテインメント・映画などの12種類のコンテンツ提供事業者のデータのうち、オンデマンド動画のみを対象(生放送は除外)としており、北米・欧州・アジアを中心とするユーザーの動画閲覧を、10日間にわたって調べたもの。

調査対象となったデータ全体では、10万2000個の動画に対して670万ユニーク閲覧者による2300万回の動画閲覧がありました。その期間に1ユーザーが平均3.42回訪問しており、ユーザーあたりの延べ動画再生時間は32.2分。ユーザーは1回の訪問あたり2.39回動画を再生しています(再生した動画のユニーク数は1.96種類)。

論文から、いくつかのポイントを紹介します。

  • 動画の再生開始が2秒を超えると、閲覧者は再生をあきらめ始める。再生開始までの時間が1秒長くなるごとにあきらめる率が5.8%増える。

    再生開始までの時間が2秒を超えるあたりから再生をあきらめ始め、その時間が1秒増えるごとにあきらめる率が5.8%増えています。
  • 尺が短い動画(30分未満のニュースクリップなど)のほうが、尺の長い動画(30分以上のテレビドラマなど)よりも、再生開始までの時間に厳しくなる。

    準実験では、同様のユーザーが短い尺の動画において長い尺の動画における場合よりも早く再生をあきらめる率は、その反対の場合よりも11.5%多く発生していました。

    再生をあきらめる率は、尺の短い動画のほうが、尺の長い動画よりも高くなっています。
  • インターネット接続速度が速いユーザーや良いコンピュータを使っているユーザーは、再生開始までの時間により厳しく、より早く再生をあきらめていた。最も辛抱強く待ち、再生をあきらめる率が低かったのは、モバイル機器のユーザー。

    準実験では、同様のユーザーが光ファイバ接続の場合にモバイル接続の場合よりも早く再生をあきらめる率は、その反対の場合よりも38.25%多く発生していました。

    再生をあきらめる率は、接続速度が速ければ速いほど高くなっている。
  • 再生中のリバッファリングによる中断時間(の動画全体の長さに対する比率)が長くなると、閲覧時間は短くなる。

    準実験では、同様のユーザーが動画の尺の1%に相当するリバッファリングによる中断があったユーザーは、リバッファリングによる中断がなかった同様のユーザーに比べて、動画の閲覧時間が5.02%短くなっていました。

  • 動画が再生できなかった(リンク切れ、再生ソフトのバグ、ネットワークの問題などによって)ユーザーは、後日そのサイトを再訪して他の動画を見る率が下がる。

    準実験によると、動画を再生できなかったユーザーがサイト訪問から1週間以内にそのサイトを来訪する率は、問題なく動画を再生できたユーザーに比べて2.32%低かった。


こういう調査ではデータをもとに相関性を示すだけの場合が多いのですが、この調査では、準実験計画法(Quasi Experimental Design、QED)によって、何らかの原因によってある結果が発生しているという因果性を推論しています。

調査対象となったデータも非常に多いため、こうした調査データにありがちな「どこかの企業がお金を出して都合の良い結果を出すためにさせた調査」とは異なる、ちゃんとした調査だと考えて良さそうです。

この動画再生に関する調査データも、サイトの表示速度に関する話題もそうですが、インターネットユーザーというのが、いかにせっかちかがわかります。Web担当者としては、インフラ面の検討やコストにもからむ点なので、悩ましいところです。

ただ、「動画再生まで2秒を超えたらNG」じゃなくて、「2秒を超えたあたりから脱落し始める」(50%があきらめるのは11秒~12秒あたり)なので、効果とコストのバランスを考えて投資できるのが助かりますね。

ちなみに、こうした表示パフォーマンスに関する私の考え方は、シンプルです。ユーザーにとってメリットなのなら、改善すべし。セグメントごとにユーザーを理解して適切なコンテンツを作ることに比べたら、表示パフォーマンスの改善は脳味噌を使わずにツール(またはお金)で解決できるものなのだから、やらなきゃ損

さて、あなたは動画再生まで何秒待てますか? そして御社の動画コンテンツを見ているユーザーさんたちはどうですか?

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