初代編集長ブログ―安田英久

あなたもAkamaiのCDNが使える! True CLOUDはEC/Webサイト向けクラウドの真打か

処理性能を自在に増減でき、AkamaiのCDNを利用できる、Webサイトやネットショップに最適なクラウド。

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Web担のなかの人

ネットショップ担当者やWeb担当者にとって夢のようなクラウドサービスが開始された。GMOホスティング&セキュリティが2010年3月からサービスを開始したクラウド型のホスティングサービス「True CLOUD(トゥルークラウド)」だ。

規模を問わずネットショップやWebサイト向けの魅力をもったTrue CLOUDの特徴をご紹介しよう。

まず、True CLOUDは、Webサイトやネットショップを運営するサーバーの機能を提供するサービスだ。つまり、これまでのレンタルサーバーと同様に、契約するだけでネット上にHTMLや画像を公開したり、プログラムを動作させたりできる「パブリッククラウドサービス」だ。

では、True CLOUDは既存のレンタルサーバーと何が違うのだろうか。要点は大きく3つに分けられる。

  • 必要に応じて性能を増減 ―― サーバーの性能(CPU速度やメモリ量)、ディスク容量を、アクセス状況に応じて増やしたり減らしたりが自由にできる。
  • Akamai CDNを利用可能 ―― Akamai(アカマイ)のコンテンツ配信サービスを利用して、ページの表示速度を向上し、サーバーの負荷を下げられる。
  • サーバートラブルがない ―― サーバーのハードウェアに故障があっても、サービスが停止することがない。

それぞれ詳しく説明していこう。

必要に応じて性能を増減
1日単位でCPUやメモリの量を自在にコントロール

クラウドサービスはこれまでのレンタルサーバーと異なり、「物理的なサーバーを借りる」のではなく、「提供されるサーバーの機能を借りる」もの。サービスの内部では大量のサーバーを接続しており、特別な仕組みを使ってその性能を切り売りしている形だ。そのため、あるWebサイトに対して、ある日は1万PV分の処理性能を割り当て、別の日には100万PV分の処理性能を割り当てるといった制御が可能となっている。

True CLOUDでは、サーバーの性能や費用が「クラウドノード」という単位で管理されており、必要に応じてノードを追加したり減らしたりすることで、CPU、メモリ、ディスク容量、データ転送量を増減できる。

これまでのレンタルサーバーでは、処理性能を増減するには契約プランを変更したりサーバーを追加したりする必要があり、その作業に数営業日かかっていた。そのため、土日にアクセス数が増えるが平日はアクセスが少ないWebサイトでは、土日のアクセス数に合わせた契約にする必要があった。つまり、週に5日間は動作しないサーバーに料金を支払う形となっていたのだ。また、Yahoo!ニュースに取り上げられたりテレビで紹介されたりして急激にアクセス数が増えると、多くの人がアクセスしてきているのにサーバーがダウンしてしまうという状況になりがちだった。

しかし、True CLOUDでは「クラウドノード」という単位で性能を増減でき、1日単位で利用ノード数を増やしたり減らしたりすることで、平日は2ノード、週末は10ノードという運用が可能となる(ノードの増減をスケジュール設定することも可能)。

平日の設定
クラウドノード数2ノード
CPU1.2GHz
メモリ容量752MB
ディスク容量20GB
データ転送量(月間換算)500GB
週末の設定
クラウドノード数10ノード
CPU6.0GHz
メモリ容量3.76GB
ディスク容量100GB
データ転送量(月間換算)2500GB

1クラウドノードあたり、CPU 0.6GHz相当、メモリ容量 376MB、ディスク容量 10GB、データ転送量 250GB の性能があり、利用しているクラウドノードの性能の合計を1つのサーバーとして利用できる形となる。

たとえば3GHz相当のCPU性能が必要ならば5ノードをまとめて1つのサーバーとして利用するということだ。最大数の60ノードを組み合わせるとCPU速度が36GHz相当、メモリ22GB、ディスク600GBというモンスターサーバーになり、月間のデータ転送量も約14.6TBまで可能となる。

ただし現状では、処理性能の調整はノード単位となっており、CPUとメモリだけ増やす場合でもノードを追加する形となる。また、ノードを一時的に追加する場合は1ノード1日315円となっている。

Akamai CDNを利用可能
表示速度を向上する配信ネットワークを小規模サイトでも安価に利用

前述のような処理性能の動的な増減は、他のクラウドサービスでも実現している機能だ。True CLOUDの真骨頂は、さらにAkamai(アカマイ)のCDN(コンテンツ配信ネットワーク)を利用できることにある。CDNによってコンテンツ配信性能を上げられるため、サイトの利用者はページを快適に表示できるようになり、さらにサーバーの負荷を減らせることにある。

Akamaiは世界で最も利用されているCDNのサービス。配信サーバーが全世界に分散配置されており、サイトを訪れたユーザーに近い配信サーバーが自動的に選ばれ、その配信サーバーがメインのサーバーの代わりに画像や動画などのデータを配信する仕組み。

  • アクセス数が増えても負荷が各地の配信サーバーに分散されているため、メインサーバーの負荷が大幅に抑えられる
  • サイト閲覧者はネットワーク的に近い場所との通信になるために、ページを快適に表示できる
  • メインサーバーのデータ転送量が抑えられる

といったメリットがあるため、たとえば任天堂Wiiのゲームコンテンツ配信、全日空のサイト、NBAの動画ストリーミングなど、名だたるサイトやサービスがAkamaiのCDNを利用している。

昨今ではユーザー体験を改善してサイトの価値を高める要因として、ページの表示速度の重要性が改めて注目されている。サイトパフォーマンス改善のゴメス・コンサルティング株式会社は、Webサイトの表示速度とビジネス指標の関係を次のように解説している。

Webサイトの表示速度が「1秒遅く」なるだけで、ページビューが「11%減少」、コンバージョンが「7%減少」、顧客満足度が「16%悪化」する。
ゴメス・コンサルティング株式会社の資料より

また、検索エンジンは、表示速度が速いページはより高い順位で表示するようになっていくといわれている。そういった意味でも表示速度を改善するCDNの価値は高まっているのだが、これまでCDNというと、高額なサービスで、超巨大サイトでしか使えないものだった。

しかしTrue CLOUDでは、あなたのサイトででもAkamai CDNを使えるのだ(オプションサービスで、月額料金は1万円程度)。契約も支払いもTrue CLOUDの契約とまとめられ、DNSに1行追加するだけで利用を開始できる。CDNというと動画や写真を中心としたサイト向けだと思われているが、前述のようにサイト表示の高速化ツールとして考えると、サイトで利用している画像やCSSなどのファイルをCDN化できることは大きなメリットだろう。また、ECサイトで商品写真をたくさん掲載している場合も、CDNのメリットを最大限に活用できるだろう。

大手サイトでなければ利用できない夢のサービスだったAkamai CDNをふつうのWebサイトでも利用できることは、日本のWeb担当者にとってすばらしい福音だといえるだろう。もちろんAkamaiを利用できるクラウド/ホスティングのサービスはTrue CLOUDだけだ。

ただ非常に残念なことに、現時点では、CDNを通じて提供できるのは「画像」「動画」「CSS」「JavaScript」に限定されている。つまり、HTMLやPHPなどの部分はAkamai CDNを利用できないのだ。もちろん、画像やCSSだけでもCDNを使えればWebサイト表示の高速化には十分だし、YouTubeなどを使わずに自サイト内で動画を提供している場合は、動画をCDN化できるのは非常にありがたいだろう。

また、Akamai CDNを利用するには、オリジナルのデータを配置したサーバーを参照するDNSにAkamaiを指定する必要があるため、次のどちらかが必要となる。

  • HTMLやPHP用のサーバーと画像/CSS用のサーバーを別の契約として分ける
  • サーバー契約は1台で、HTML用のサーバー名(たとえばwww.example.jp)と画像用のサーバー名(たとえばcdn.example.jp)を別々にバーチャルホストで設定する

HTMLと画像を分けるというと面倒そうだが、まずはApacheのリライト機能を使って、/imagesや/cssなどのディレクトリへのアクセスをAkamaiにリダイレクトする設定にすると、HTMLを一切変更しなくても既存のサイトの画像だけをAkamai化できる。

少し変わった利用スタイルとしては、HTMLやPHPなどの本体部分は現在利用しているレンタルサーバーに置いたままで、画像などだけをTrue CLOUDにサーバーに移すという使い方も可能だ。

サーバートラブルがない
クラウド+バックアップで枕を高くして寝られる

True CLOUDは、サーバートラブルが(ほぼ)ゼロになるのも特徴だ。

クラウドサービスは、内部でディスクやメモリに障害が発生したとしても、障害の発生していない他のサーバーに動作中のサービスの内容が自動的に移されて、そちらで動作を続ける。そのため、外からみてトラブルがあったことは、ほとんどわからない。

さらにTrue CLOUDのサービスは、無停電装置を備えた耐震設計のデータセンター複数に分散して稼働している。もちろん、データセンター間をまたがってのTrue CLOUDサーバーの移転(マイグレーション)も可能だ。

また、オプションのトリプルバックアップシステムを利用すれば、サイトのコンテンツを日/週/月ごとに自動でバックアップできるのも安心だ。

サーバーのトラブルにおびえずに、Web担当者やネットショップ担当者が枕を高くして寝られるサービスだといえるだろう。

用語集
CSS / DNS / HTML / IaaS / JavaScript / PHP / Perl / クラウド / コンバージョン / ディレクトリ / ドメイン名 / ページビュー / 検索エンジン

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