低山でも油断禁物 高尾山系でも年100件以上の救助隊出動
2020/10/18 04:00 ウェザーニュース
秋の行楽シーズンは山に登る人も多いでしょう。しかし、秋は天気が変わりやすいので油断は禁物です。
都心から簡単にアクセスでき、年間約260万人が登山する高尾山系(東京都八王子市)でも遭難は多発しており、年に100件以上の救助出動があるとのことです。
2007年発足の高尾山岳救助隊
高尾山岳救助隊による要救助者の引き上げ訓練の様子(写真:警視庁)
「昨年、両親と弟、4人で高尾山に登っていた15歳の少年が行方不明になりました。延べ81名で捜索を行いましたが、その日のうちに発見できず、翌日になって10kmほど離れた津久井署管内のコンビニにいるところを神奈川県警が発見し、ケガもなく保護することができました」と語るのは高尾山岳救助隊です。
高尾山岳救助隊が発足したのは2007年。警備課長を隊長として隊員18名、支援班4名の総勢22名からなります。隊員は過半数強が地域課ですが、ほかにも警備課、刑事組織犯罪対策課、生活安全課、交通課からも参加しています。月に1度のペースで山岳救助訓練を行い、シーズン中は高尾山のパトロールも行っています。
パトロールの様子(写真:警視庁)
守備範囲は高尾署管内の高尾山(標高599m)、小仏城山(こぼとけしろやま・670m)、景信山(かげのぶやま・727m)、堂所山(どうところやま・731m)、陣馬山(じんばさん・855m)など高尾山系と呼ばれる山々です。
死亡事例が5件発生
高尾山岳救助隊が昨年(2017年)出動したのは、山火事1件を含めて107回にのぼります。
月別では登山者が増える春の4〜5月、秋の9〜11月の出動が多くなります。
高尾山系遭難者・死傷別
「遭難の原因は、滑落、転倒、道迷い、疲労、病気などさまざまです。多くが無事に救出できましたが、死亡が5件、重傷が18件ありました。死亡事例のうち2件は病死で、56歳の男性が急性心筋梗塞、50歳の男性が急性心機能不全でした。それに自殺(首吊り)が1件。あとの2件は滑落で亡くなっています」(高尾山岳救助隊)
急斜面を70m滑落
標高が低い高尾山で、どのような状況で滑落死したのでしょうか?
「2017年の元旦に発生した事例です。琵琶滝コース(6号路)の途中で70代男性が急斜面を約70m滑落し、樹木に引っかかっていました。接触時には意識があり話すことができたのですが、担架に収容して斜面から引き上げたところで容態が急変しました。急遽、防災ヘリを要請し、ロープで引き上げて搬出しましたが、残念ながら亡くなりました。標高は低くても滑落で亡くなることもあるのです」(高尾山岳救助隊)
山登りの心得、「登山計画書」提出も
高尾山は中腹までケーブルカーやリフトで登ることができる手軽さから軽装で登山する人が少なくありません。高尾山岳救助隊は、ホームページで次のように呼びかけています。
(1)山の天気は変わりやすく、また下山するときは暗くなっていることもあるので、雨具、ライト、水、地図、非常食を携行してください。
(2)低い山でも、ヒールのある靴やサンダルは危険です。登山靴などしっかりした靴で登山し、シーズンにこだわらず防寒着を携行してください。
(3)救急用の医薬品や包帯、絆創膏などを持参してください。
(4)家族に行き先を伝えてから出発し、定時連絡を行ってください。また登山計画書を作成し、登山ポストや最寄りの警察署、交番へ提出してください。
(5)初心者だけでなく経験者と一緒に登山してください。
標高が1000m足らずの山でも遭難するリスクがあります。特に秋の登山は雨具や防寒着は必携。携帯電話の電波が通じない場合は尾根に出て試してください。
この記事はウェザーニュースが2018年10月21日に配信した記事を加筆、修正したものです。