本格的な冬を迎え、タラの白子であるタチがおいしい季節となった。飲食店などではこの時期、天ぷらのタチ天や、ポン酢をかけたタチポンが提供され、酒のさかなとして人気だ。スーパーにも生のタチが並ぶ。マダラが水揚げされる港町の一つ、網走を訪ね、地元の料理人においしい食べ方を聞いた。
今月2日、久しぶりのマダラの豊漁に網走港は沸いた。午後3時半すぎ、沖合底引き網漁船3隻が帰港。船上で発泡スチロールの箱に詰められたマダラ38トンがクレーンで次々と荷揚げされた。
漁場は網走港から約40キロ北上したオホーツク海。「近年は冬場にしけが多く出漁できる日数が減っているが、しけの後は量が取れている。この冬もこれから増えてくる」と、網走漁協網走地方卸売市場の市場部部長、本田洋平さん(48)は期待する。
マダラの白子をマダチ、スケソウダラの白子をスケダチと呼ぶが、一般にタチと言ったらマダラの白子だ。マダラそのものは通年で取れるが、タチが大きく成熟するのは産卵期の冬場だ。今回は、地元の魚介類を使った料理を多く提供する網走市内の居酒屋「おっ!伝」代表の石黒雅通さん(58)に、ご飯のお供にもなるメニューを作ってもらった。
和食のイメージが強いタチだが、中華風にアレンジしたのが「タチの黒みそ煮」。豆板醬(トウバンジャン)、甜麺醬(テンメンジャン)といった中華調味料を使い、揚げたタチと合わせてマーボー風に仕上げた。市販のマーボー豆腐のもとで代用できるが「市販品はやや甘いので、豆板醬などを加えて辛めにするのがお勧め」という=末尾にレシピ。
タチを揚げる際は手拭いなどで水分を取ってから。キッチンペーパーだと張り付いてしまうことがあるので、布が良い。表面だけ火が通ればOKだ。
身も一緒に味わえるのが「マダチとタラの揚げ出し風」。タチとマダラの切り身を天ぷらにして和風だしのあんをかけ、子ネギを散らす。
こってりとしたうまみが楽しめるのは「タチの白みそ焼き」。さっとゆでたタチを、強火にかけたフライパンで表面がカリッとなるように炒める。八丁みそに酒、みりん、砂糖を加えたみそを載せる。ガスバーナーがあればあぶって焦がすと香ばしい。
重要なのはタチの選び方。石黒さんは「より白く、表面が張って水っぽくないものを選んでほしい」と話している。 (佐藤仁)
*マダラ水揚げ量 道内7割超
北海道はマダラの主要な産地だ。農水省の海面漁業生産統計調査によると、2017年以降の全国に占める道内の水揚げ量は、一貫して70%台を誇る。道内は全域で揚がる。
網走では15年に751トンだったが16年から急増し、18年には5624トンにまで伸びた。その後は年間2千トン前後で推移している。札幌の市場や、釧路や根室、道外の加工場に出荷される。
マダラはタチだけではなく、もちろん身もお勧めだ。石黒さんは「淡泊な味なのでチリソースにも合う。ムニエルにしてもおいしい」と話す。本田さんも「マダラは身近な魚で、身もタチもいろいろな料理に使える。北海道の冬の幸を味わってほしい」とPRする。 (佐藤仁)
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■タチの黒みそ煮
◇材料(4人分) マダチ100グラム、豚ひき肉120グラム、A(豆板醬(トウバンジャン)小さじ1、甜麺醬(テンメンジャン)大さじ2、酒小さじ2、しょうゆ大さじ2、砂糖小さじ2、ニンニク、ショウガすり下ろし各小さじ1/2、ブラックペッパー適量)、長ネギみじん切り適量、片栗粉、サラダ油、ごま油、さんしょう各少々、薄力粉適量、卵1個
◇作り方
①マダチは4房に分け、薄力粉を卵で溶いた衣に絡ませて170度の油で1分ほど揚げる。衣にサラダ油少々を入れると身離れがしやすく、油が跳ねづらい。
②フライパンに油を引き、豚ひき肉を炒める。火が通ったらAと長ネギを入れて軽く炒め、水大さじ4~6を入れて味がなじむまで数分煮る。水溶き片栗粉(片栗粉大さじ2、水大さじ2)を入れてとろみをつける。
③ ②に①を加え、ごま油を回し入れ、さんしょうをまぶす。
(北海道新聞2024年12月20日掲載)