こんにちは、ちゃむです。
「できるメイド様」を紹介させていただきます。
今回は201話をまとめました。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
201話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 心と剣
その時、ついに近くまで迫ってきたアビス騎士団の騎士たちが剣を振り回した。
バルハンを含む騎士たちは懸命に防戦したが、残された一般兵士たちも苦戦を強いられていた。
彼らは叫び声を上げながら駆けつけた。
「女王陛下をお守りしろ!」
「死んでも止めろ!」
その激しい決意の声にアビス騎士団の兵士たちは一時的に足を止める。
しかしそれも一瞬のこと。
「そこをどけ!」
轟音とともに戦闘用の長剣が血の嵐を巻き起こした。
アルベロン伯爵だった!
彼は王室騎士団の二人と一般兵士たちを一気に倒し、防壁を突き破って彼女が立っている場所へと突進してきた。
「モリナ!」
「陛下!」
バルハンが慌てて後ろから追いかけたが、ほんの一歩遅かった。
目の前まで迫ったアルベロン伯爵の鋭い視線を受けた瞬間、マリの体は硬直してしまった。
(ああ・・・)
アルベロンは光る鉄剣を彼女の首元へ向けて振り下ろす。
その柔らかな首筋を狙い、冷酷な一撃が迫っていた。
「覚悟しろ!」
しかし、その絶体絶命の危機の瞬間、信じられない奇跡が起こった。
「避けてください、マリ嬢!」
馴染みのある声が虚空を切り裂き、一筋の銀色の光がアルベロンの剣を弾き飛ばした。
ガキン!
「・・・!」
アルベロンは目を見開いた。
この瞬間、この場にいるはずのない人物が彼の前に立ちはだかっていたからだ。
「ど、どうしてあなたがここに?」
輝かしい銀の鎧。
まるで神が直接降臨したかのような威容。
冷ややかな気配を漂わせた海のような青い瞳。
「キエル卿!」
その場の全員が驚愕に包まれる。
辺境伯であり、同盟国最強の騎士であるキエルハンが現れたのだ!
「キ、キエル様がなぜここに?」
マリの瞳が揺らいだ。
キエルハンは平素のように彼女に向かって優しい笑みを浮かべたあと、毅然とした態度で状況を見据えていた。
彼は視線を向け直し、静かに言った。
「少し待ってください。話したいことは多々ありますが、まずはこの鼻につく豚を始末する必要があるでしょう。」
アルベロン伯爵はその言葉に顔を引きつらせ、怒りに震えながら剣を握り直した。
「この野郎!くたばれ!死ね!」
だが、それは一撃で終わる。
キエルハンは片手だけで彼の攻撃をかわし、剣を振った。
瞬く間に銀の閃光が走り、「グッ・・・?」アルベロンの口から空気が抜けるような音が漏れる。
彼は信じられないという表情でキエルハンを見上げた。
その剣は彼の体を貫いており、あまりにも速く、追いつく暇もなかった。
「ば、馬鹿な・・・」
その言葉を最後に、アルベロンは力尽きて床に崩れ落ちる。
「・・・」
場内に一瞬、静寂が訪れた。
その場にいた全員が、この予想外の展開を飲み込めずにいる様子だ。
「キ、キエル様・・・」
その場に立っている唯一の存在、冷静さを保つキエルハンが彼女を見つめながら向き直った。
「マリ嬢・・」
彼は一瞬動きを止めたが、すぐに手を伸ばし彼女の頬を優しく撫でた。
その手に涙が触れると、マリは自分が涙を流していることに気づく。
キエルハンの瞳には、何とも言えない安堵の色が広がっていた。
それは、彼女が今感じている痛みを自分のものとして感じ取っているかのようだった。
「お疲れ様でした。遅れて申し訳ありません。」
マリはその言葉を聞いた瞬間、胸の奥から何かが込み上げてきた。
今まで感じていた痛み、孤独、重圧が全て思い出された。
肩に背負っていた責任や、一人で耐え抜いてきた日々の思いが、彼女を包み込んでいた。
表には出さないよう努めてきたが、実際には耐えがたい苦しみだった。
そして今、その全てを理解してくれる人物が目の前に現れた。
「遅れて申し訳ありません。本当に。」
「キエル様。」
キエルハンはゆっくりと彼女の前でひざまずく。
「キ、キエル様?立ち上がってください。」
マリは彼がひざまずくのを見て戸惑った。
しかしキエルハンは頭を下げたまま言った。
「あの日の誓いを覚えていますか?」
マリの目が大きく見開かれた。
かつて彼女が彼の命を救ったとき、彼は彼女に忠誠を誓ったことがあった。
「私はキエルハン・ド・セイント。あなたに忠誠を誓った騎士として、あなたに私のすべてを捧げに戻ってきました。」
「・・・!」
「どうか、私の心と剣を受け入れてください。」
マリの手が震えた。
「心と剣」___それは騎士のすべてを意味する言葉だ。
しかし、彼女はどうして彼の忠誠を受け入れることができるのだろうか。
そんなことはありえない。
「う、受け入れることはできません。立ち上がってください。」
しかしキエルハンは微動だにしなかった。
彼は柔らかな微笑みを浮かべて言った。
「すでに私は心を決めてここに来ました。拒絶されても、私はあなたにすべてを捧げる覚悟です。」
「・・・!」
そう言ったキエルハンは立ち上がり、アビス騎士団と3軍団を見渡す。
彼らは予想外の状況に驚き、言葉を失っていた。
「アルベロン伯爵は死んだ。無意味な戦いを続けるつもりか?」
彼女に話しかけた時とはまったく違う冷徹な声。
キエルハンは冷静な裁判官のような声色で言葉を続けた。
「命を惜しむなら、すぐに剣を置け。」
「・・・!」
アビス騎士団の騎士たちは歯ぎしりをしながら言った。
「キエルハン侯爵!いくら帝国最強の騎士といえど、あなた一人で我々を抑えることはできません!」
彼らの言葉は強がりのように響いた。
アルベロン伯爵を失ったアビス騎士団は揺れていたが、まだ戦意を失ってはいなかった。
もし彼らが一斉に襲いかかれば、キエルハンはもちろん、モリナ女王も守りきれなかっただろう。
「一人?」
しかし、キエルハンは問い返した。
「誰が一人だと言った?」
「え?」
3軍団の騎士たちの目が驚きで大きく開かれた。
遠くから新たな軍勢が近づいてくるのが見えたのだ。
剣と盾が交差する紋章――皇室親衛隊と近衛騎士団、そして帝国三大騎士団とされるセイテン家門のシルト騎士団だった。
シルト騎士団が突進してきて、空が崩れるかのような大合唱が響き渡った。
「敵に裁きの刃を!」
「裁きの刃を!」
3軍団の顔は一斉に青ざめた。
シルト騎士団だけではなかった。
さらに遠くからもう一つの煙のような影が迫り来ていた。
変節したキエルハンを支持する軍団兵たちだった。
「こ、こんなことが・・・!」
3軍団は体を震わせた。
キエルハン陣営の兵士たちは恐怖に怯えた状態で、勝ち目のない強者に対して言い訳の余地もなかったが、この状況では何も言う必要がなかった。
その時、キエルハンが静かに3軍団に向けて剣を構えた。
「最後にもう一度だけ言う。命が惜しければ武器を捨てろ。」
カキン、カキン。
彼の言葉が終わるや否や、3軍団の兵士たちは次々に武器を投げ捨て始めた。
もはや戦う理由も、戦う力も残っていなかった。
こうして激しかったクローヤン王国軍と3軍団の戦いは幕を閉じた。
クローヤン王国の大勝利だった。