「バカ野郎!」罵声が日常の9年半で得た1つの学び 伝説の落語家「立川談志」に最も怒られた弟子
「師匠には、1万回以上怒られました。『バカ野郎!』なんて、ほとんどあいさつ代わりでした」
そう話すのが、伝説の落語家・立川談志の弟子であり、現・立川流真打の立川談慶氏だ。前座という修業期間を「9年半」という異例の長期間すごした談慶氏は、こう語っている。
「私を含めて弟子たちは、狂気としか思えないほどの『気づかい』を要求され続けていました。でも、その結果得た果実を手中に収めることができたのは、談志ではなく、弟子である私たちだったのです」
落語界の師匠と弟子という、普段私たちが垣間見ることのできない世界。その伝統の中で培われてきた「気づかいの本質」を描いた書籍『狂気の気づかい: 伝説の落語家・立川談志に最も怒られた弟子が教わった大切なこと』が上梓された。
ここでは、その「はじめに」を一部編集のうえ、全文掲載する。
「そこまでやる」にはワケがある
「え、そこまでやるんですか……?」
落語家・立川談志に対する私たち弟子の「気づかい」を話すと、多くの方がそんな反応をします。
電話1本で呼び出されたら、夜中の2時でも駆けつける。
居場所を告げずに「いますぐ来い」と言われたら、場所を推理して探し出す。
家事・身のまわりの世話は、言われたらすべて行う。もちろん給料はゼロ。
「馬鹿野郎!」には、自分が悪くなくても「すみません!」。
新年会は数十人の弟子全員が、談志1人の顔色をうかがうことに終始。
たしかに、異常です。いまだったら絶対に許されない「○○ハラ」のオンパレード。
私自身、慶應義塾大学を出て東証一部上場企業のサラリーマンを3年ほど勤めた後に弟子入りしたものですから、この「異常さ」には心底、戸惑ったものでした。
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