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「中野の神社をたずねて 北部編」

―2010年2月27日から2010年9月23日までの展示
visit:2010/09/05

中野区中央図書館の地域資料コーナーは、半年ごとの入れ替えで地域のことを調べた展示をしています。2010年2月27日から2010年9月23日までのテーマは、中野区北部の神社をたずねた内容です。2010年2月25日まで展示されていた「中野の神社をたずねて 南部編」の続編になります。

北部編の展示で取り上げられた神社は、上高田氷川神社、新井の北野神社、沼袋氷川神社、片山(松が丘)の北野神社、須賀稲荷、江古田氷川神社、妻恋稲荷、大和町八幡神社、鷺宮八幡神社、北原神社の10社。どれも図書館職員さんが実際に訪ねて、撮影した写真が展示されており、中には普段公開されていないものを撮影した写真もあります。

展示コーナーの左側には、各神社の位置を示した地図と、狛犬・神狐の写真。上高田氷川神社の雄々しい粉犬もあれば、大和町八幡に併設されている稲荷神社の鼻がまるっこくて可愛い神狐もあって様々。印象としては前回の南部編で展示されていた狛犬たちより、デザインが互いに似ているような気がしました。写真だけからの推測ですが、地域性というより造られた年代が北部の狛犬の方が互いに近くて似ているのではないかと思います。

各神社についての説明を読むと、南部編では源義家や源頼信が祠を建てたのが起源の神社が目立ったのですが、今回の北部編では太田道灌が石神井・練馬を攻める際に祈願したという言い伝えが残されている神社が目立ちます。太田道灌の造営した神社は、南部編でも中野氷川神社・本郷氷川神社・神明氷川神社が紹介されているので、中野区の神社は道灌抜きには語れないといってもいいくらい。その他には、北部の場合、地域の農民が豊穣を祈願するのに祀った神社が多い印象を受けました。

§ 今も続く祭りの伝統

また、南部編との比較でいうと、今回の展示は祭りにより焦点を当てています。南部編は祀られているものなどにより焦点をあてていたのですが、北部編では祭りの説明、しかも保存会などによって、今でもその伝統が残っているという記述がたくさんあり、すっかり感心してしまいました。

例えば、江古田氷川神社の獅子舞。この獅子舞は、三頭の獅子、花笠のほかに東西南北を現す四神を配しているのが特徴で、その起源は鎌倉時代に遡るといわれており、その格式を崩すことなく何百年も続く獅子舞は全国にも少ないのだそうです。その他には、上高田氷川神社の上高田囃子も、300年前からのものが、毎年ではなく3年に一度という形で今尚引き継がれている。鷺宮八幡神社の鷺宮囃子も保存会によって引き継がれている。

御輿担ぎの行事などに比べると、練習や技術の習得が必要とされる囃子は、引き継いでいくのが難しいと思うのですが、平成のこの時代まで繋いでこれているって素晴らしいと思います。この展示期間中に行われた祭りも多いので、この展示を見てお祭りに出向いた方もいらっしゃるのではないでしょうか。あ、そうか、夏にかけての展示だから、今回は祭りに焦点をあてたのかもしれませんね。

§ 豊穣を祈願する行事

中野区は農地も多かった地域なので、豊穣を祈願する行事も多いです。展示によると、中野区では、富士山や成田山などに参拝して、五穀豊穣と心身の健康を祈願する「講」が盛んだったそうで、その風習は松が丘地域を中心に昭和48年まで続いていたそうです。

江古田・片山地域では、「万垢離(まんごり)」という行事があり、垢離取不動(こりとりふどう)を出た各字(あざ)の代表が江古田川に裸で入って、互いに水をかけて身体を清め、江古田氷川神社で五穀豊穣と家内安全を祈願したそうです。こちらは昭和10年代に行われなくなってしまったとのこと。

伝統の祭りと違って、こちらの行事は今では行われていませんが、それを図書館が調べてまとめているっていいいですよね。この地域資料コーナーの展示内容は、冊子資料としてもまとめられて、地域資料として中野区内の図書館で所蔵しているのです。だから、展示が終わってからも読めるし、中央図書館以外の中野区立図書館でも資料が読めるんです。

上の豊穣祈願の行事についても、展示されていた文章に「昭和48年まで続いていた」「昭和10年代に行われなくなってしまった」という記述があったたのですが、後者が「10年<代>」という記述になっているのに対し、前者が「48年」と言い切っているのは、資料なり証人なりが2010年の今も残っているから言い切れるのではないでしょうか。こうした風習や俗事というのは、失われてから調べようとしても難しいことも多いと思うので、こうした記録を図書館に残しておくのは大事なことだと思います。

更に今回は、私以外にも展示を見ながら一生懸命メモをしている利用者の方がいらっしゃって、私まで嬉しくなってしましました。この地域資料コーナーの展示は、中野区を通して日本の歴史を知れる点もあり、本当に毎回興味深いのです。中野区中央図書館に来た方はもちろん、もみじ山文化センターのイベントに来た方や、ガラス窓を利用してダンスの練習をしている人にも(笑)、ぜひ見て欲しいです。