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移転前の旧・台東区立くらまえオレンジ図書館

旧・くらまえオレンジ図書館は2011年12月18日を最後に移転のための休館に入りました。その後、現在のくらまえオレンジ図書館が2012年2月1日に移転開館しました。

以下は、移転前の旧・台東区立くらまえオレンジ図書館の訪問記です。

移転前の旧・台東区立くらまえオレンジ図書館 訪問記

last visit:2007/12/22
§ 図書館の場所

くらまえオレンジ図書館は蔵前小学校の一画を利用した図書館です。場所は都営浅草線の蔵前駅と都営大江戸線の蔵前駅の真ん中を西に少し移動したところ。新堀通りと国際通りに挟まれた位置に蔵前小学校があります。

蔵前小学校の裏にパンダの像が2対に挟まれた門がありまして、くらまえオレンジ図書館へはそこから入るようになっています。このパンダ、よく見たら左が口を開いて右が口を閉じているので、阿吽の対になっているのですね。でも、阿吽の対は一般的には右が「阿」のようなので、もしかしたら阿吽ということでなく2対置いただけかもしれないけど。

§ 図書館内の様子

くらまえオレンジ図書館は小学校の中の図書館ということで、安全面等の理由から利用に制限を設けており、誰でも利用できるわけではありません。入口にインターホンがあるのでそれで職員さんを呼び、専用のカードを入口で提示してオートロックを開けてもらう仕組みで、その専用カードは区内在住の方、または区内小中学校在学の方とその家族にしか発行されません。

というわけで、普段なら利用者として普通に図書館を利用して訪問記を書いている私も、この図書館に限っては台東区立中央図書館さんに許可をいただいて訪問させていただきました。台東区立図書館さん、どうもありがとうございます!

入口のインターホンで話を通し、オートロックを開けていただくと、小学校の通用口といった雰囲気の場所です。そこで靴を脱いでスリッパに履き替えて、校内の左手にあるくらまえオレンジ図書館へ。入口上のくらまえオレンジ図書館のロゴとは別に、入口右に生徒さんが彫ったと思われる「図書館」の看板もぶら下げてありますね。

引き戸を開けてくらまえオレンジ図書館に入ると、すぐ左に縁側と床から一段上がった和室があるのにびっくりします。くらまえオレンジ図書館は元々小学校の図書室だったところを区の図書館にしたもので、図書室だった当時の写真が館内に飾ってあるのですが、この縁側と和室はその頃からあるんですよね。面白~い。

この和室は、平日は小学校のクラブ活動で茶道をするのに使ったり、図書館のおはなし会を開催するときの場所としても利用しているとのこと。くらまえオレンジ図書館が一般に公開されている日は閉め切って職員さんの作業等に利用しています。ちょっと入ってみたいけど、残念(笑)。格子窓になっているところがあるので、そこから中を覗いたところ、掛け軸がかかっていたりして本当に一般の和室といった様子です。

和室を左に見ながら通路を進むと右にカウンター、その向こうに書架があります。書架はもっと子供寄りの書架を想像していたのですが、大人向けの小説や家事関連本なども並んでいます。割合で言うと児童や幼児向けの本の方が多いですし、図書館自体も小さいですから、他の誰でも利用できる台東区立図書館に比べたら一般向けの本はやっぱり少ないんですけど。

インテリアも窓に熱気球のカットシールが貼ってあったり、ぬいぐるみが置いてあったりするけど、普通の図書館の児童コーナーに比べたらそういった飾りつけも少ないですね。むしろ和室があったりと落ち着いた印象の方が強い気がします。

カウンター手前右には、「くらっきい」と「としょっきい」というくらまえオレンジ図書館のキャラクター(本が顔になっていて、手足がついている)のイラストがあるのですが、このキャラクターも私が見た限り図書館内ではチラシの中で1ヶ所使われていたくらい。もっと館内に使ってもいい気がするけど、あまり子供っぽい雰囲気にしないようにとかしているのかな。

図書館入口右にある掲示板には、蔵前小学校にゆかりのある小説家、夏目漱石と佐江衆一が紹介されています。蔵前小学校は精華小学校・小島小学校・済美小学校が統合した学校(元の精華小学校の場所が今の蔵前小学校)で、精華小学校は前身が戸田小学校なのですが、佐江衆一は精華小学校に、夏目漱石は塩原家の養子だった時代に戸田小学校に通っていたんです。夏目漱石は塩原家から夏目家に戻った際に市谷小学校に転校、佐江衆一は戦争で宮城県に疎開して、その後蔵前小学校に戻ることはなかったということ。著名な小説家を2人も輩出している小学校とは、なかなかいいところに図書館を作ったものですね。

同じ掲示板に貼られていた説明によると、くらまえオレンジ図書館という名前は小学校の生徒さんに公募した結果だそうで、オレンジというのは蔵前小学校のスクールカラーなのだそうです。図書館の入口の上のロゴもオレンジで、くらまえオレンジ図書館の図書館カードもオレンジ。利用案内のチラシもオレンジですね。ちなみに、東浅草なかよし図書館の方は紫が図書館カラーですね。

掲示板のそばには吉村昭の文庫本が集められていて、不思議なことにこれには台東区立図書館のシールが貼られていません。職員さんに聞いてみたところ、くらまえオレンジ図書館の開館当初は小学校の図書室の蔵書と台東区立図書館の蔵書が一緒に置かれていたそうで、今はもう台東区立図書館の蔵書しかないのですが、この吉村昭の本だけが最後の名残りとして置かれているそうです。蔵前小学校校長のお薦め本なのだそうで、どちらかというと児童より中高生とか上の年齢向けだから学校図書室の方でなく、こちらの置いてあるのかもしれませんね。

カウンターの向こう側はほとんど書架だけで、閲覧机はなく、椅子が少しある程度。でも、和室の周囲に縁側があるので、そこに座って読書することができます。子供だと寝転がって読んだりもしてますね(笑)。

蔵書数は少ないけれど、一般向けの棚の中の中高生向きの本には緑色のシールをつけたり、その下の小学生用のお薦め本には「○年生」というシールで対象学年の目安が貼ってあります。自分の学年そのままの本を読んでもいいし、それ以外の学年のものを読んでもいいですよね。ちなみに私は、学研の「○年の学習」を、小1のときに「2年の学習」、小2のときに「3年の学習」と1学年上を購読する、ある意味生意気な子供でした(笑)。

くらまえオレンジ図書館は小さな図書館だからということでしょうか、くらまえオレンジ図書館内の検索機ではくらまえオレンジ図書館の蔵書と台東区立図書館の蔵書が検索できるのですが、台東区の他館やネットからの検索ではくらまえオレンジ図書館の蔵書は検索できない。検索結果に出ないから予約もできない。すこやかとしょかんと同じ仕組みですね。つまり、実際にくらまえオレンジ図書館に足を運ぶ人にしかくらまえオレンジ図書館の蔵書を借りることができないわけです。

あと、くらまえオレンジ図書館と東浅草なかよし図書館の蔵書はあわせて3冊までしか借りられないという制限もあります。台東区立図書館全体では15冊までなので、もしこの2館で3冊借りたら他の館で借りられるのは残りの12冊までということになります。

こういった仕組みは制限といえば制限なのですがそれによるメリットもあって、台東区立図書館全体では予約待ちになっている本がこうした制限のある図書館の棚にあり、すぐ借りられるという場合もあります。私が行ったときも、その時点で80人ほど予約待ちがいた『陰日向に咲く』が棚に置いてありました。だから、利用条件に適っている方は利用した方がお得ですよ。

でも、実際に見学させてもらったり話を聞いたりして、純粋に図書館としての機能より、小学校と保護者や地域の人とが本・図書館を介して関わりあっていくという点がくらまえオレンジ図書館の機能なのかもな、と思いました。館内に貼られていた図書委員新聞によると、20分休みに読み聞かせをやったりしていたようで、そうやって学校の中で保護者のボランティアさんや図書館職員さんと接したり、それにボランティアさんもご自身のお子さんの友達以外の生徒さんと知り合ったりとか。私のような子供のいない人にとっても、小学校内の図書館を利用したら、教育のこととか少し考えたりしますもんね。

蔵前小学校の生徒さんやそのご家族はもちろん、そうでない方もくらまえオレンジ図書館の利用条件に適う方なら、せっかくの施設なので一度利用してみてはいかがでしょうか。