『博士の愛した数式』『峠 最後のサムライ』などで人間の美しい在り方を描いてきた名匠・小泉堯史監督が、吉村昭の小説「雪の花」を映画化。松坂桃李主演で1月24日に公開される。本作は、江戸時代末期の福井藩を舞台に、数年ごとに大流行して多くの人命を奪う疫病から人々を救おうと奔走した実在の町医者の姿を描いた物語。福井藩の町医者・笠原良策を松坂が、その妻・千穂を芳根京子が演じている。今回は、時代劇での共演が5年ぶりとなった2人に撮影中の思い出などをインタビュー。撮影を通して考えた、時代劇を制作する意味についても語ってもらった。
フィルム作品の経験は“自信”につながる
――映画『居眠り磐音』での共演から5年。再び時代劇での共演となりましたが、お互いの印象に変化はありましたか?
松坂:お互いにいろんな作品や監督と出会って、経験してきた分の厚みを感じました。今回は、小泉組でたくさんの先輩方も出演されていたので、どちらかといえば、我々は若手側だったんです。その中でも堂々とお芝居されている姿を見て、この5年の間に相当いろいろなことを経験してきたんだなって感じました。正直なことを言うと、僕はフィルムの現場が初めてだったので、芳根さんの佇まいを見て勝手に頼りにしていました。
芳根:えー!今、過去の自分を悔やんでいます(笑)。
――やはり、ワンシーンワンカットが基本のフィルム撮影となると、心持ちも異なるものでしょうか?
松坂:そうですね。緊張感は自然と湧き上がってきました。あとは、ただ単純に「フィルムの映画に出られるんだ!」というのがうれしくて。興奮と緊張があったのが正直なところです。「これ以上ない状況だな」と感動しました。
芳根:やはりフィルムの作品を経験した自分に自信が出ますよね。今は、良くも悪くも「もう1回やろう」が簡単にできてしまう時代だからこそ、1回1回の重みというものを、体感できているのは貴重な経験だなと思いました。
松坂:わかります。今、我々、お互いに連ドラで主演をやらせてもらっているんですけれど「セリフを絶対に間違えたくない」という意識が人一倍強い気がします。
芳根:でも、松坂さんも緊張していたと聞いて安心しました。緊張していていいんだと思えたというか。それから、つい先日、ドラマの現場でカメラマンさんから「YouTubeに上がっている殺陣のシーン見たけど、すごいね!」と言われて「あれフィルムなんです」と言ったら、フィルムで殺陣をやる、一発勝負っていうのに震えていて。「よくやったね!」と言っていただきました。
松坂:フォーカスとかも手震えるだろうね。
――お話は戻りますが、芳根さんから見て、松坂さんの印象は変わりましたか?
芳根:実は前回の2人の役柄が、すれ違う役だったので、そこまで一緒のシーンがなくて。なので「やっとお話できました!」という感覚が近かったです。前回は悲しい顔ばかりをさせてしまったのですが、今回は背中を押すことができて、すごくうれしかったです。
現場には「スーパーベイビーたちがいた」
――今回の映画ならではの所作や、仕草は?
松坂:今回僕は時代劇だけれど、侍じゃない、町医者の役を演じるのが初だったので、お薬を調合するとか、人を診るときの所作とか、今までやってきた時代劇とは違う振る舞い方が多くて。すごく新鮮でした。
芳根:もちろん時代ゆえの美しさなどもありつつ、そこまで「こうでなきゃいけない」というのがなく、現場に入れたかなと思っています。それは経験を積んでこられたからなのか、この作品だからなのかは確かではないのですが…。チャキチャキした明るい一面もあるキャラクターだったので、良い意味ですっと現場にいることができました。
――現場には、たくさんの子役の方がいたかと思います。共演しての感想は?
松坂:やはりフィルムということもあって、赤ちゃんが泣くか泣かないかのドキドキ感みたいなものはありました。でも、本番カメラが回ると、しゃべっている人の方をちゃんと向いて話を聞いていて。頼もしかったですね。スーパーベイビーたちがいらっしゃいました。