まえがきのまえがき
駅そばなどでよく見かけるコロッケがのった酔狂なメニュー、コロッケそば。
ジャガイモのホクホク感や肉の旨み、玉ねぎの甘み。そういったものが一切ない、よくわからないパサパサした食感の冷凍コロッケ、自称コロッケがのったコロッケそばこそが至高の存在だと思う。
そして正直、どう食べたらいいのかわからない食べ物である。汁が染みないようにちょっと避けて食べるか、浸して崩して食べるか、半分だけ崩したり、がっつり底において育てたり。
まえがき
こんにちは、くまのみです。
以前はマッチングアプリのエンジニアとして働いていました。
スマートキャンプにはデータアナリストとしてジョインし1年半が経ちました。
ひとくちにデータアナリストといっても業務内容や必要なスキルはコロッケそばの食べ方のように振れ幅があり、それぞれの会社の環境や事業フェーズに合わせて、働き方を変える必要があります。
ぼくの入社とともにデータチームも動き出し、たまたまですが社内で評価していただく機会もありました。ここまでのうまくいったこと、だめだったことを含めてふりかえろうと思います。
個人的には成功体験より失敗体験を聞く方が好きです。
この記事はテックなブログではなく、完全にポエム記事になります。
入社半年編
期待と不安の滑り出し
採用面談で出会ったエンジニアの方と、同じチームで働けることを期待して入社しました。
しかし、入社当日にはその方は京都支社へ移動してしまっていた。
「早々にひとりぼっちなのかな」と不安になったが、気軽でいいわぁなんて浮かれていました。
実際にはひとりぼっちではなく、上長がいて社外のデータPMもいました。
データチームは4人で構成されており、データPMがロードマップの策定や方針を決めていました。
その中でぼくはデータ民主化に注力していくことになりました。
ありがたいことにデータ基盤周りはすでにエンジニアの手によってほぼ完成していたので、これを使えばサクッといけそうだと楽観視していました。しかし、実際にはそう簡単にはうまくいきません。苦戦する半年を過ごすことになります。
BIへの不信感を払拭
親会社でLookerを使っていることからLookerを使うことのできる環境がすでにありました。
LookerとはDBのカラム定義、集計定義、データの関係をLookMLというもので記述できSQLの知識が浅くてもある程度のデータの可視化ができるようになるBIツールです。そのLookMLもかなり定義されていました。
主要なKPIと呼べそうな数字を把握するためのダッシュボードもいくつかつくられており、あとは利用するだけの状態に見えました。
Looker上でダッシュボードがいくつか作られているものの、なぜか全く利用されていませんでした。各部署の方たちはRedashを利用して数字の確認をしているようでした。
Lookerを利用していない理由を聞くと「なんか数字がズレてるんですよね」と返ってきました。この数字の「ズレ」に苦しめられることになります。
僕は正しい数字をちゃんと出すことができればLookerを利用してもらえるのではないかと考えていました。ズレる原因はいくつか存在し、集計軸や条件の考慮漏れ、考慮過多、集計範囲の絞り込み等ありました。
正しい数字を出そうとすればするほど、過去に書かれたRedashのクエリ結果とは乖離が大きくなったのです。
「この数字はここの部分の考慮が漏れているので数字が合わないんです」のように伝えていたのですがデータ利用者の方には全く響きませんでした。
「そうなんですね、わかりました」という返事をいただくものの、Lookerを一向に見ようとはしてもらえません。
主要KPIや各種数字に関して、Redashの数字を正として扱ってきたこれまでの流れがありました。
ズレとはRedashとLookerでの数字のズレであり、正しいか正しくないかはさほど重要ではなかったのです。
ぼくはアプローチを変えることにしました。
たとえ若干間違っていたとしてもRedashとLookerの両方で同じ数字を出せるようにしようと。
正しい数字が出ていようと使われないダッシュボードは無用の長物だからです。
- Redashを正として数字を見ているためLookerの数字を同じ調整する
- Redashと同じ数字がLookerで確認できていることを担当者と一緒に確認する
- 同じ数字にしたのち、Redashのクエリを本来あるべき条件を考慮した正しいデータに近づける
- Redashのクエリはこの点が考慮もれている等と全体に周知したうえでRedashのクエリを修正して良いかの可否を問う
- Redashの修正をしたのち、Lookerにも条件を反映していく
この1~5を何度か繰り返しLookerでも同じ数字がでていることを意識づけ、ズレはなさそうだという認識合わせをデータ閲覧者に向けて実施しました。
これによって抱いてしまったLooker(BI)への不信感をすこしづつ払拭していきました。
既存を大事にしすぎた問題
データ基盤周りはすでにエンジニアの手によってほぼ完成
と先に書きました。ほぼなのです。
ちゃんと運用されれば運用フロー込みで仕上がっていくものであった広告パラメータ管理用の一部のデータが、Lookerが利用されず運用されていなかったため頓挫していたものがありました。
これまでにほぼ作られていたものがあったので流れに乗っていこうとしましたが、うまくいきませんでした。ちゃんと整備しなおし運用フローを移譲したとしても、担当者が運用してくれるかどうかは別なのでした。
使われないものはちゃんと捨てるという選択をするのに時間がかかりました。
各部署からのお使いクエスト
今までプロダクト開発サイドに来ていたデータに関する依頼を巻き取るようになります。
ゲームのお使いクエストのような感覚で進めていくのですが、依頼者の所属部署ごとに必要なドメイン知識が異なり、キャッチアップするだけでヒィヒィいう生活を送ります。
各部署の方からかなり助けてもらうことも多々出てきます。依頼者の方に「私に聞かれても」というような質問を投げつけることも多々していきます。ブチギレられてもしょうが無いと思うのですが、優しい方ばかりだったので経験値をちびちび貯めていくことができました。
転職を機に新しくはじめたこと
上長は他の部署の方も見ている関係でぼくに割ける時間は限られていると認識していました。
コミュニケーションの場は1回15分、週2回行われる1on1がメインでした。
ある程度ぼくが何をしているのか分からないと自由に行動させてもらえないのではと考えました。
そのため1on1の前に現在実施中のタスク、今後やりそうなタスク、共有事項、困ったこと等を書いておき共有するようにしました。
正直業務をサボっていても誰かにバレるわけでもないです。ただ真面目に働いていたとしても活動は見えにくいので自分の行動ログの可視化は必須でした。
この記事の執筆時では139回の1on1のログが残っています。週に2度の能動的とも受動的ともとれるふりかえりによってDCAPサイクル(PDCAサイクルの逆順で、実行(Do)→評価(Check)→改善(Action)→計画(Plan)の4つのステップを繰り返し、業務改善や課題解決を図るフレームワーク)が割と早く回るようになりました。
あと記憶力が良くないので、土日を挟んでしまうと先週やったことでさえほぼ覚えてなかったりします。自分がやってきたことをちゃんとふりかえるうえで大事な作業になりました。
半年のふりかえり
入社早々のどこの誰かもわからない人間が今まで正しいとしていた数字に対していちゃもんをつけても「そうだよね!正しくしようね!」みたいな流れになるのは稀かなぁと思います。
結局データを扱うのは人なので人に寄り添い、人のこころを動かさないと何の意味もなさないこと気づきました。
データはただしく扱わないと!!のような情熱がちょっとだけぼくの活動の邪魔をしました。
SMARTCAMP AWARD
スマートキャンプでは半年間で自身がVMV(VisionMissionValue)を体現した取り組みを発表をする場があります。
役職者を除いた全社員がそれぞれの事業部ごとにトーナメント方式で発表し、1次予選、2次予選を勝ち抜くと半期に一度の会社のキックオフで発表をしMVPを決める社内発表会です。100人くらいから1人のMVPが決まります。
半年間のぼくの成果は、これといって目立ったものがなく1次予選で敗退でした。
正直に言って自分の成果をドヤるというかアピールするのは得意ではありません。恥かしがり屋なので発表するのもちょっと億劫なタイプです。ひっそりとぼくの半年は幕を閉じました。
入社1年編
淡々とお仕事をこなす生活
気づくとデータチームが一人減ってました。さみしい。
今期もデータ民主化をがんばるぞ!と意気込んでいました。
半年かけて事業のドメイン知識もちょっと溜まり、Lookerへの不信感も払拭されつつある中で問題がおこります。
Lookerの費用が高いため、他のBIへの移行も検討しなくてはならなくなりました。
これにより1ヶ月の間、ぼくは右往左往することになります。
各部署にデータに関するユースケースをヒアリング実施、ドキュメント化し最終的にはLookerを使い続けて良いことになりました。
1ヶ月ほどロスしたおかげでフラストレーションがかなり溜まりました。これが良い方向に発散され、ここからひたすらアウトプットを出し続けることになります。
ユースケースのヒアリング時にぽろっと出てきた課題の解決や、各部署へヒアリングしたことで距離感がすこし近づき新たにデータの依頼をいただくことも増えていきます。
施策の事前調査、効果検証、データ抽出、業務効率化に寄与していきました。
それと並行してデータPMの方で推進していた「データを用いて事業への直接的な利益向上実績を創出」するための施策の実施しました。CVRの改善だったのですが良い結果が生まれました。
エースの喪失
データ基盤周り
を率先して整備してくださっていた通称エースさんが退職されました。
ちょっと困ったなぁというときに助けてもらえていたのですが「だって他に頼りがいねぇ」状態になります。
もっと迷惑かけるくらい頼っておけばよかったような気もしてます。
1年編をふりかえる
キャッチアップする力が非常に高い人が周りにチラホラいるのですが、ぼくはそういうタイプではないです。あとからふりかえると入社半年のさえない期間も非常に大事でした。
ちびちび消化していったお使いクエストでも経験値が少しづつ溜まり、レベルがいくつか上がったと思います。自分の知らないデータを布教し民主化していくことは難しいでレベル上げは必須でした。複数部署からの依頼をこなしていった結果、ある程度データに関する理解が進んでいきました。
もしかしたら会社が想定していた速度でのデータ活用はできなかったかもしれません。
コツコツと積み重ねていくことしかぼくにはできませんでした。
スマートキャンプ内にデータアナリストの枠はぼくひとりです。成果がちゃんとだせていなければ追加で人が増えることもないでしょうし、データアナリストの枠自体も不要だと思われても仕方がありません。
データPMの方がデータ民主化やデータを用いた施策等で、進むべき道を示して走り方を教えてくれるような環境がスマートキャンプにはありました。この点が非常にありがたいと感じました。
SMARTCAMP AWARD
SMARTCAMP AWARDの1ヶ月ほど前にプロダクト開発の部長?と1on1することがありました。
その時にエンジニアの方には他部署向けに成果をちゃんとアピールするためにも発表を頑張って欲しいみたいな話を聞いたのがきっかけで、発表するための資料をちゃんと書こうと思うようになります。
データチームで実施したことを社内に展開しようと思うと、上長は役員でPMは業務委託なこともあり、ぼくが成果を発表しなくては成果が埋もれてしまう状態でした。
社内でのデータチームの認知度の向上をし、データ民主化をより推進していくために自分が変わらないといけないときがきたんだなと実感しました。
結果としては普段そこまで目立たない人間が一生懸命話したところが功を奏したのか・・・。
- 半期MVP 🏆
- 社員賞
- SCBB賞(VisionのSmall Company, Big Business)
という3つの賞をいただくことができました。
データ絡みで困ることしかない毎日だと思っているので、いずれコラボレーションする機会が来るのを楽しみにしております!!
のようなコメントもいただけてとても嬉しかったです。
さらに嬉しかったことはデータチームの告知を全社的にでき、来期以降のデータ民主化活動を円滑に行なうための地盤の強化ができたことでした。
入社1年半まで
さらに淡々とお仕事をこなす生活
前期のAWARDで全社的に活動を告知したことで、今まで依頼が来なかった人たちからも依頼が来るようになりました。これは、データ民主化の最終形である社員自らがデータを取得できるような体制を整えるためには、まずはデータが欲しい、データを使いたいと思ってもらうことが大事なため、大きな一歩となりました。
これまでの1年間に及んだお使いクエストによるレベル上げと、前期の活動結果が評価されたことで、円滑な業務処理ができるようになりました。持ち前のうっかりさで、定期的にうっかりしたり、早とちりしたり、誤字脱字はしょっちゅうあるものの非常に円滑でした。
より多くの人にデータを目にする機会を増やし、ほんの少しでもデータを元にプロダクトを考えてもらえれば、組織全体のデータリテラシーが少しずつ向上する良いサイクルが生み出せるのではないかと考えています。
鉄は熱いうちに打てに近い考えで、データが欲しいと感じた方に向けて、可能な限り早くデータを手にしてもらうように活動してきました。時間が少しあいてしまうと見ている方向が変わったり、関心が薄れたりしてしまうからです。
また、能動的に他部署の方に1on1を実施しながら困りごとがないかヒアリングを進め、データ活用を推進してきました。
半年間の活動を振り返ると、目立った失敗も目立った成功もなく、ちゃんとやれているのかの実感が湧かないまま過ぎていきました。
業務幅の広がり
施策する際にデータを元に意思決定する習慣ができている状態を定着させていこうと考えました。
仮説検証用のデータ抽出はどのくらいきているのか、どのくらいで対応完了しているかなど、ぼくの手元にくるタスクを分類化し来期以降どういうふうに進めていくかを考えるための土壌整備も進めました。
施策後の効果検証を円滑に行なうためのトラッキングログの設計等も対応していき、業務の範囲というか組織貢献の範囲が広がっていった気がします。
入社1年半ふりかえり
困っていると言われて可視化してみたところ、使われなかったり、作った後に音沙汰がなかったりすることもありました。しかし、意外にも他で活用できたりと無駄になることがありませんでした。
正直この半年間は山あり谷ありといったことはなく、平坦な道をまっすぐ走るような、ひたすらまっすぐ走っていた感覚でした。
目標設定でしっかりとゴールが決まっていたことも大きかったと思います。
SMARTCAMP AWARD
なんやかんやあったようななかったような。
運が良かったので半期MVPをいただくができました(2度目)。
MVPを取るとアートボードを親会社のマネーフォワード総会の時にいただけるみたいでした。
- 半期MVP 🏆
MVP受賞のコメントをもらえたことも嬉しかったのですが、一番嬉しかったのはMVP受賞のちょっと後に起きた出来事でした。
1次予選の発表をした際に、別のプロダクトの新人エンジニアの方が発表されました。その方の発表がとにかく素晴らしかったので、今回のMVPはその方だと思い込んでいました。
いい発表だったなぁとぼくのモチベーションも上がり、日報で「来期ももっと頑張ろうと思った」みたいなことを書きました。
打ち上げの際に、その新人エンジニアの方から「日報で褒めてもらったことがとても嬉しかったです」と言われました。その言葉を聞いたとき、どこの誰かもわからない人間からちゃんと脱却できた気がして、とにかく嬉しかったです。
最後に
エンジニアからデータアナリストに転職して1年半が経ちました。悔いも後悔もありません。 正直、パッとしないエンジニアだったので、今の方がのびのびと働けています。
データアナリストとしての仕事は、データの収集・分析・可視化・活用の4つに大きく分類されます。ぼくは分析よりもデータの可視化と活用に重きを置いて活動してきました。
ただあらためて考えると、ぼくがこうして活動できたのは各部署各メンバーの人たちが助けてくださったことが一番大きくありがたかったです。かけだしデータアナリストがちゃんと活動できるよう成長するまで面倒みてくれることは稀有だからです。
これからはプロダクトに関わるすべてのメンバーのデータリテラシーを向上、データドリブンな意思決定を促進させ、プロダクトの成長に貢献することで恩返ししていきます。
これまでデータアナリストというロールがなかった会社に、データアナリストではなかったぼくを雇い入れることは、そばの上にコロッケを乗せちゃおうと考えることくらいかなり挑戦的なことだったんじゃないかと思います。そして、どう扱って良いのかも迷ったんじゃないかとも思います。
入社直後の社員リレー記事で、「スマートキャンプは意外とちゃんとしていた場所だった」みたいなちょっと失礼なことを書いているのですが、そんなぼくでもちゃんとチャレンジさせてくれて、評価までしていただけたことにとても感謝しています。