2回
2024/12 訪問
『大使閣下の料理人』、故郷に錦
鳥取で、どうしても詣でなければいけないお店だった。
日本海を目の前にした自然豊かなこの地は食材の宝庫である。当然飲食店のレイティングもハイレベル。
食べログランキング上位3軒は、いずれも超絶高級店。そりゃ機会に恵まれれば一度くらい訪問してはみたいけど。
そんな敷居の高い御三家に続く第4位として健闘しているのが、鳥取が誇るB級グルメを看板にご当地の味覚を提供してくれる『御縁』である。
文字通り世界を股に掛けて経験を積んできたベテランシェフが、地元で御母様と営んでおられる。
シェフは、少し前まで世界各国の日本大使館、領事館で腕を奮ってきた公邸料理人だった。
バーレーン、東ティモール、インド、イタリア、シンガポール…その他にも香港、エチオピア、タイなどでも日本料理の指導や日本PRイベントで活躍されてきた強者である。
現在、インバウンドに沸く日本だが、こういう方々の海外での地道な活動が繁栄の礎となっていたのは間違いない。
連絡すると、小さなお店なの直ぐに満席になりますよ、と言われ開店早々訪問した。
鳥取名物のホルモンそばで〆る最後から逆算して、まずはここでしか巡り会えない逸品を戴くことに。
鳥取大山牛のタタキ、鹿野鶏の白子、大山牛すじ鍋、竹輪豆腐、アボカドサラダ…
鶏の白子自体初めてだったが、地元でも滅多に手に入らない逸品を鉄板で軽く焼いてくださった。
鱈の白子よりもさっぱりした感じで、全くクセがない。
大山牛のもも肉のタタキは、脂身も控えめで、肉の柔らかさも最高の加減。これぞ、日本の畜産スキルの極意と見た。
竹輪豆腐も初見の一品。白身魚のすり身を豆腐に混ぜ込んで成形した日本全土でありそうでここ鳥取だけのユニークさ。お刺身のように切り揃えて醤油で戴くのが流儀らしい。
甘勝ちの味噌仕立の牛すじは鍋は、冬場のもっと冷え込んだ日なら、神の救いになるだろう。
凍えた身体を温めてチカラをくれるはず。
最後のホルモンそばは、期待通り。
もうひと皿いけそうな勢いだったが、ここはセーブしておいた。
日本全土にはまだまだ良心的で素晴らしいお店が頑張ってくれている。
そんな思いで、胸が熱くなった。
2024/12/10 更新
あまりにも素敵なお店に会えたので再訪してしまった。店主が帰国して合流されるまで、こちらのお店は店主の御母様が長年守ってこられたとのこと。
それを裏付けるように、壁一面に個人的に来店したスポーツ選手やタレント、料理人のサイン色紙が掲げられている。
自分が店のカウンターに座ってる間にも、何人もの若い男性がドアを開けて『おばちゃん、ごめん、今日は来れない、堪忍な』と顔だけでも見せにくる辺り、お母さんの人柄がよく伝わってくる。
再訪したは良いが、急激な寒さで体調を落とした。
それでも食い意地は張っていて、比較的身体に優しげな品々はなんでしょうか、と店主に尋ねてみる。
機転を効かせてニンニクの素揚げを作ってくれる。
これは力を取り戻せそうだ。
揚がり具合がちょうど良くホクホクとして、消化にも良さげだ。
もう一度食べてみたかったのが、牛すじ鉄鍋で煮込んだ土手鍋だった。ご飯が無限に欲しくなる奴だったが、ここはホルそば用に胃のスペースを空けておかねば。
薄く切り揃えられた豆腐がしっかり旨味を吸い込んでくれて、冷えた身体は温まるし、柔らかく煮込まれた牛すじは噛み締める度に味わい深いし、で至福の時間を一人過ごしていた。
〆に選んだカレーホルそばは、お母様のオリジナルレシピ。外で食べたカレーうどんの、ルーの味に不満を覚えて、研究を開始され、試行錯誤の末に辿り着いたスパイス調合とソースとのこと。
鉄板で炒めたそばとホルモンを自慢のカレーソースと共に鉄鍋で暫し煮込んで作られる。
通常のホルそばとは、また違った食感と味わい。
第二のご当地グルメとして、広めて欲しいな、これは。
親子二代で継承されるレシピと、世界で揉まれてきた二代目が吹き込む新しい風。
伝統が引き継がれる理想の形ではないかな。
今こそ、こういうお店が脚光を浴びるべきでは、とも思う。