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格安ホテルチェーンを運営するインドの「OYO Rooms」が過去数週間で世界の200都市から事業を撤退させたと海外メディアが伝えている。急激な事業拡大から一転して縮小に動いたため、人員や客室数の削減が続き、つい先日も中国で5%の余剰人員を解雇したと報じられたばかりだ。
同社のリストラに関するニュースは昨年中頃から続いている。リストラ以外にも虚偽の決算報告の疑いや長期にわたって全く宿泊利用がない空き室の存在、物件オーナーからの抗議など問題が続出している。本国インドや中国を中心としたフランチャイジーからは債務不履行、独善的な契約条件や契約違反などを訴える声が挙がっている。
2013年に創業したOYOは、既存のホテル物件に最低限の改装を加え、自社ブランドとしてフランチャイズ展開してきた。加盟金は不要で、売上高の1割未満をロイヤリティとして納めるだけでOYOの看板を掲げられるという触れ込みで、収益の上がらない個人経営のホテルオーナーを大量に取り込んだのだ。
2017年には中国へ進出し、格安ホテル業界に激震を与えたのも記憶に新しい。創業者のリテッシュ・アガーウォール氏は「2023年までにOYOブランドを世界最大のホテル管理会社にしたい」と息巻いていた。その後、事業拡大のためインド以外の各国へ進出し、公式サイトやアプリ経由で簡単に予約ができるシステムを展開するも、投入した多額の資金をよそに黒字化にはとても及ばない状況が続いている。
収益化を急ぐOYOは自社でもサービスアパートメントなどの事業を開始。当初は自社資産を持たずに出発したはずの事業が徐々にアセットヘビー型に移行し、資金もますます必要になった。
また中国市場では運営モデルを一新し、物件オーナーに基本給を保障する一方で、オンライン運営や宿泊費の設定ついてはOYOが権限を持つようになった。さらに客室稼働率を上げるためにオンラインの平均客室単価(ADR)を下げてRevPAR(販売可能な客室1室あたりの収益)を上げ、多くの宿泊客を呼び込んだが、これ以降、オーナーにとっては光熱費などの変動費負担が大きな重しとなった。こうした運営管理に不満を感じたオーナーらが拡散した悪評によって、加盟店が目に見えて減少したことが公式サイトからもうかがえる。
コワーキングスペース「WeWork」が昨秋に上場を撤回したことなどから、大規模に資金を投じて急速な拡大を図る事業モデルに投資市場も疑念を抱いている。OYOの筆頭株主ソフトバンク・ビジョン・ファンドは、米ライドシェアUberの株価が上場後に大暴落した件や上記のWeWork上場撤回などを受け、多額の損失を計上するとみられる。これ以上の損失を食い止めるために出資先の収益状況を重視し、より慎重な姿勢になるのも無理はない。
ソフトバンクグループ傘下のZホールディングス(旧ヤフー)は昨年11月、日本で展開していた「OYO TECHNOLOGY&HOSPITALITY JAPAN」の合弁関係を解消している。ソフトバンク側はOYOの経営陣に対し、今年中ごろまでにEBITDAベースで黒字化すること、その後速やかに上場することなどの条件を突き付け、順調にイグジットを実現できるよう求めているという。
OYO不振の原因は多々あるが、急速に市場シェアを伸ばすために同社が採った事業モデルに根本的な綻びがあった。結果的に多くの大手ホテルチェーンに対して新たなビジネスチャンスの存在を知らしめ、彼らに容易に模倣されてしまうからだ。
(翻訳・愛玉)
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