_ ということで、 1.1.1.1が 正式にアナウンスされた。今のところ APNIC からはアナウンスはなさげ。
_ ドキュメントはまだ縦に近い斜め読みしかしてないんで、いくつか気になったところだけ。
_ 3/30 の時点では v6 アドレスは 2001:2001::、2001:2001:2001::という話があって、こっちもわかりやすいアドレスを確保したなーと思いつつも、つながらないからこれからがんばるのかなと様子見してたら、実際は ぜんぜん違うアドレスじゃねーか。どういうこった。
_ privacy policyでは、情報はよそに売ったりしねーよ、ログは24時間で消すよ、とかそういうのが書かれてるけど、DNS についてしか書いてなさげ。1.1.1.0/24 は DNS 以外にもありとあらゆるゴミトラフィックが大量に流れるアドレスで、それゆえこれまで誰にも割り当てずに APNIC が予約していた。DNS 以外にもおかしなトラフィックが流れてるんだけれど、そいつらをどう扱うか書かれてるところが斜め読みでは見つからなかった。こちらについては言及がない以上一切ログも取らずにすべて捨てると解釈するのが適当なのかもしれないけど、つまり port 53 以外に攻撃したら攻撃元の調査はできないと解釈しちゃっていいんですかね。また、こういうゴミトラフィックは研究対象として APNIC が欲しがりそうな気がするんだけど、もう研究は終わったからもういらないってことなんですかね。
_ という毎日新聞の記事。重要なポイントはふたつ。
政府は国内に拠点を置くインターネット接続業者(プロバイダー)に対し、ネット上で漫画や雑誌を無料で読めるようにしている海賊版サイトへの接続を遮断する措置(サイトブロッキング)を実施するよう要請する調整に入った。権利者ではなく、政府が要請するということ。
ただ、接続遮断要請に明快な法的根拠はない。法に基づくものではないということ。
_ この件はおそらく、 2月の内閣知的財産戦略本部会合の議論がもとになっているものと思われる。が、ここに上がっている配布資料をぜんぶくまなく読んでも、現行法のままで実施可能となる根拠がわからん。ブロッキングをやってほしいと積極的に提案してるものもあるが、そういうものは現行法でやるか法改正が必要かといった点には一切言及しておらず、逆に制度に言及している資料は現行法制では困難と明言するか、そうではなくても検討が必要としていて、現行法でただちに可能とは誰も言ってない。
法制化によらない迅速なサイトブロッキング導入の必要性に係る意見という文言が唐突にあらわれている。意見を出すだけなら別にかまわんのだけど、ここに上がっている資料からただちにそれが導入可能となる結論に結びつくとはとても思えない。妥当でない意見は却下されるのが当然であり、この意見が法によらずブロック要請するという政府の方針につながるのはおかしい。とはいえ、この件が政府のほかのところで議論になってるという情報は聞いていない。
_ この委員会、通常は公開でやってるのに、なぜかこの件が議論された第3回会合だけが非公開でおこなわれ、詳細な議事録ではなく、簡潔な要旨しか公開されてないんだよ。こういう重要なことこそ透明性を高めた議論が必要なはずなのに、非公開のたった2時間の会合でなぜ検討が完了してしまうのか。
_ この名簿の2ページ目に会合の構成メンバーのリストがある。コンテンツ分野を扱う会合なのでメンバーもコンテンツホルダーばっかりなのはしかたないけれど、ほんとに実施されるなら実際にブロックをおこなうことになる ISP の関係者がまったくいない場でこういう議論がおこなわれるというのは異常。なお、この名簿には 法律の専門家の tweet まとめで唯一擁護している福井弁護士の名前が含まれている。コンテンツホルダーばっかりの会合だからそっちに阿ってると決めつけるつもりはないけれど、少なくともそういう議論に参加していたという立場を表明しないのはフェアじゃないだろう。
_ 現行でおこなわれている児童ポルノブロッキングは、2008年に 総務省と 警察庁がそれぞれ検討して民間に任せるのがよかろうということになり、その結果あらためて民間でおこなわれた 法的整理によって可能と判断されて実施されるに至った。新たな立法措置がとられることも政府の要請もなく、制度上は民間が既存の法律の範囲内で自主的にやっているということになっている。この児ポブロックの検討のときに、すでに著作権侵害は緊急避難として扱えないとはっきり結論されている。実際に著作権侵害をブロックするのであれば、この結論をひっくり返すだけの材料が必要になるはずだが、それがあるとは思えない(単にコンテンツ業界が疲弊しているというだけでは材料にならない)。
_ 政府の要請に法的根拠がないのであれば、ISP はあくまで自主的にブロックするという形式になり、法的リスクを一方的に引き受けることになる。コンテンツ業界の利益のために、自分たちには一切メリットがないどころか逆にリスクのある要請を受ける ISP があるとはとても思えない。