ロンドンで、2012〜14年にかけて発掘された古代ローマ時代の「手書き板」の詳細が発表された。解読の結果、なかには「借用書」も含まれていたという。
405枚の木製の手書き板が見つかったのはロンドンの中心部で、金融会社ブルームバーグの新社屋の建設現場に近い場所だった(ローマ時代に築かれた「ロンディニウム」の中心部は、現在のシティ・オブ・ロンドンに当たる地域。なお、ロンディニウムとは先住民族ケルト族の言葉で「沼地の砦」を意味していた)。
ある1枚には、西暦57年1月8日という日付が書かれていた。別の板の日付は西暦43年ころで、これは古代ローマ人が英国の地域を支配した最初期の時期にあたる。
さらに別の板には、ロンドンに関する最も古い記述があるが、これはローマ時代の歴史家タキトゥスが、自身の著作でロンドンについて記述した時期よりさらに50年前にあたるという。
見つかった405枚の板のうち87枚はすでに解読されており、英国で発掘されたこの種の標本としては最大規模となっている。
解読されたなかには、金銭の返済を求める内容や、ロンドンの貿易業者への借用書などがある。
ある板には、「パンと塩と引き換えに、ヴィクトリアタス銀貨で26デナリウス分のお金と、10デナリウス分のPaterioをすぐに送ってください」と書かれている。また、別の板には、「Venustusの自由民が、Spuriusの自由民であるグラタスという者から105デナリウスを借りました」と書かれている。
これらの板は元々、表面に蜜ろうが塗られたうえで、針を使って文字が彫られるか刻まれていたと見られている。上の画像は、発見された段階での板であり、こうしたわずかな刻みから文字が復元された。
手書き板の解読に当たったのは、オックスフォード大学の古典学者ロジャー・トムリンで、写真と顕微分析を利用して文字を解読した(文末の動画で詳しく紹介されている)。
「地中に埋まった木版が損傷を免れることはめったにない。これほど良好な状態が保たれたのは、湿った土によって酸素が遮断され、木版が腐らずに済んだためだ」とロンドン考古学博物館(MOLA)は説明している。「いまは埋め立てられているが、ローマ時代にはこの一帯をウォールブルック川が流れていたからね」
PHOTOGRAPHS COURTESY OF MOLA
TEXT BY EMILY REYNOLDS
TRANSLATION BY TAKU SATO/GALILEO