米国では、何百もの企業が、自分たちの出すゴミの処理料として数十億ドルを支払っている。
これらの企業はこの数十億ドルを、業者ががらくたを運ぶための運送費だと思っている。しかし、実際のところその大部分は、ゴミ処理場という不動産そのものの維持費として使われている。
ゴミのために土地を維持するのは、いかにも無駄なことだ。しかし、この仕組みはゴミ処理場を所有するゴミ運送業者に多額のお金を生んでくれる。だから、彼らにはゴミをリサイクルするインセンティヴがほとんどない。
そんななかでまったく異なるアプローチを試しているのが、ネイト・モリスが率いるルビコン・グローバルだ。彼らは、ゴミ処理地もゴミ回収車も保有していない。代わりに彼らが行うのは、事業者がゴミを削減し、ゴミ処理地に向かう廃棄物の量を最小化する手助けだ。
この戦略によって、ルビコンは米セブン-イレブンや米スーパーマーケットチェーン・ウェグマンズといった全米の企業との大型取引を獲得した。そしてさらに先日、3,000万ドルを調達したと発表した。その資金は、全米に事業を拡大し、新しいリサイクル技術研究に投資するために使われるのだという。
アメリカ合衆国のゴミは、2社の数十億規模の廃棄物処理企業、ウェイスト・マネジメント社とリパブリック・サーヴィス社によって支配されている。それに比べてルビコンはとても小さな企業だが、環境に優しいだけではなく、コストも節約できることをアピールして、多くの企業から支持を集めている。
ゴミは少なく、お金は多く
ネイト・モリスとレーン・ムーアが2007年に設立したルビコンは、何千もの小規模なゴミ運送業者が、国単位の大きな入札の一部に参加できるヴァーチャル・マーケットプレイスをつくった。それによって、ゴミ運送業者間の競争を促し、サーヴィス費用の引き下げを狙っている。
それに加えて、ルビコンはゴミが出されてから回収されるまでの流れをモニターして、不必要な回収機会を減らす提案を行ったり、ゴミの中に埋もれている価値ある物を見つけ出して、それを違うかたちで再販売する事業も行っている。ゴミの廃棄量を減らし、コストを節約できれば、それだけルビコンは儲かる仕組みになっているからだ。
モリスは次のように語る。「当社のビジネスモデルの特徴は、収入源の構成にあります。ゴミ処理業界で初めて、すべてのインセンティヴが揃う仕組みをつくることができたのです」。つまり、ゴミ処理地に捨てられるゴミの量を減らすほどルビコンは儲かり、それによって企業は処理コストを削減できる。また小規模なゴミ運送業者にとっても新たなビジネスチャンスが広がっている。
ウォートン・ビジネススクール教授でグローバル環境リーダーシップ・イニシアティヴの学部主任であるエリック・オーツは、既存のモデルの再構築が、ゴミ処理業界に変化をもたらすためには不可欠だと言う。
「地球の人口増加によって、使う物の量は増え続けていきます。どこかの時点で、古いモデルは機能しなくなるでしょう。いかにして従来のやり方を変えたくなるように仕向けることができるかを考えるべきなのです」
ルビコンは、このイニシアティヴの企業顧問委員会のメンバーであり、まさにこれを実行している企業だ、とオーツは続ける。「とても簡単なことなんです。ゴミを減らすことによって費用が少なくできることに越したことはありません。それは、事業の理に適っていますからね」。
ゴミそのものを時代遅れに
ルビコンの成功は、同社が開発しているソフトウェア・プラットフォーム「カエサル」にかかっている。ゴミ運送業者、顧客、リサイクルの機会に関するすべてのデータを解明するハブ(中心)として機能するシステムだ。
新しい顧客がオンラインになると、ゴミの流れをデータで分析してカエサルに登録する。すると、カエサルは自動的に一定の地理範囲内でリサイクルできる方法の一覧を表示してくれる。しかもそこに登録されるゴミが増えるほど、カエサルの提案の精度は上がっていく。カエサルは、小規模なゴミ運送業者が取引の入札を行い、顧客が自社ゴミのデータをモニターできる場所でもある。
モリスによると、すべての物なかで最も価値ある資源はデータだと言う。「いまもっているデータは、最終的には顧客が抱えるサプライチェーンの課題に対してフィードバックするときにも役立つと思っているのです」。
ルビコンが調達した資金の大部分は、新しいリサイクル技術のテストを行っている研究開発ラボ「ルビコンX」に注ぎ込まれる予定だという。その目的は、すでに存在するリサイクルの機会を見出すだけではなく、新しい可能性も探ることにある。すでにルビコンXは、ヴァーチャルでゴミの流れをモニターできる「カメラ搭載ダンプスター(米国式のゴミ箱)」や、ゴミが回収されたら知らせるセンサー等をテストしている。
「これはほかの多くのごみ処理企業が避けてきた、新しい代替テクノロジーを試す場所だ。当社は、ゴミそのものを時代遅れにする方法を試しているんだ」とモリスは語る。
ルビコンはいまどきのテックスタートアップの典型といえるだろう。先行するUberやAirbnbのように、「テクノロジーがもたらす効率性は、既存の大企業をも転覆できる力がある」という明確な信念のもと、頑迷固陋なローテク産業に参入したのだ。
しかし、企業は消費者よりも頑なで、オーツもゴミ産業の現状を変えるのに、何十年でなければ何年もかかるかもしれないと言う。「一朝一夕ではこの世界は変えられません。でもとにかくできる限りやるべきです。もし対価を支払ってもいいような優れたアイディアをもっていれば、その企業は成長するものですから」。
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TEXT BY ISSIE LAPOWSKY