ポール・ヴァーホーヴェン監督は1987年の映画『ロボコップ』で、冷たい鋼鉄製の人間型ロボットによって正義が果たされる未来社会の姿を描いた。そんな皮肉屋のヴァーホーヴェンも、自身が想像した近未来のセキュリティが、「Knightscope K5」のようなかたちで現実になるとは思いもしなかっただろう。
Knightscope社が製作したこのパトロールロボットは、2014年11月13日に「MIT Technology Review」で紹介された後、11月18日にはサンフランシスコのCBS系列テレビ局KPIXでも紹介された(以下の動画)。
上の動画は、カリフォルニア州マウンテンヴューにあるKnightscope社の駐車場で撮影されたものだ。時おりクルクルと向きを変えながら移動する、ずんぐりとしたスタイルの「K5」は、ロボコップの主演俳優ピーター・ウェラーよりも、イギリスのSFドラマ『ドクター・フー』に登場するダーレク、あるいは『スター・ウォーズ』シリーズのR2-D2に似ている。
身長約1.5mのK5は、90度間隔で配置された4つのカメラや赤外線センサー、マイクロホンアレイ(複数のマイクロフォンを配置して集音することで、音源方向の推定や雑音除去などが可能になる)、専用の「ナンバープレート読み取りカメラ」、GPSセンサー、そして動画の送信や、近くにいる他のK5のトラッキングに用いるWi-Fi対応システムを搭載する。
KPIXの動画を見る限り、重量約135kgの巨体の移動速度は、せいぜい時速8kmほどに見える。また、パトロール経路の近くに人間がいるのを見つけると、警告を発しながら、自分は脇に避けたりする模様だ。Knightscope社の共同設立者ステイシー・スティーヴンスによると、K5は武器、または泥棒を追い払うためのその他の手段を一切備えていない。武装ロボットではなく、「犯罪に対する抑止力」なのだという。
もしも誰かが、少しだけ歩調を速めて逃げるのではなく(K5の動きはのろいので、全速力は必要ない)、K5に襲いかかることを選んだ場合にはどうなるのだろうか。K5は、スティーヴンス氏が「車の盗難防止アラームに似ているが、それよりもずっと強烈」と表現する、金切り声のような警告音を発して対応する。
K5の現時点での課題のひとつは、バランスを崩して倒れると自力では立ち上がれないことにあり(Knightscope社がMIT Technology Reviewのために行ったデモでも、実際にそうした場面があったようだ)、おそらくこのアラームは、K5自身が助けを呼ぶのにも役立つだろう。
シリコンヴァレーのある会社は、複数のK5を導入して警備の任務に当たらせようと、すでに注文を入れているらしい(Knightscope社はその社名を明かさなかった)。また、同社がKPIXに語ったところでは、「50社近い数の会社」がK5の導入を希望し、ウェイティングリストに名を連ねているという(動画によると、K5は販売されず、「一般的な警備員の給料よりも低い時給で」貸し出されるという)。
TEXT BY SAM MACHKOVECH
PHOTO BY KNIGHTSCOPE
TRANSLATION BY KENJI MIZUGAKI/GALILEO