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「好きなことで、生きていく」“YouTuber”はマスメディアを必要としない
実際、彼らの動画を見たことのない人は「よっぽどすごいことをやってるんだろう」と思うだろうが、今「○○をやってみた」系の第一人者であるはじめしゃちょーの場合、ジェンガで階段を作って登ってみたり、ニベアクリームを100個分入れた風呂に入ってみたり…といった“ノリ”。ゲームの実況中継では、ゲームをしながら「ワーッ!キャーッ!」とやってるだけだし、女性YouTuberの場合は、メイクの解説やその他、歌を歌ったり、ダンスをしたり、料理を作ったり、大食いしたり……といった感じなのである。
彼らの“芸”についてYouTuberに詳しいエンタメ雑誌の編集者は次のように語る。
「正直言って、40代以上の一般人にとっては、ほとんどが学芸会ノリの“内輪ウケ”にしか見えないでしょう。テレビに出たとしてもまったく通用しません。でもYouTuber自身は、YouTubeとその他の活動で十分やっていけるので、マスメディアの必要性をあまり感じてないし、テレビに出たいという欲も薄いでしょう。それでも、けっこうイケメンのYouTuberであれば、ファン参加型のイベントなどで数千人規模のお客さんが集まる。若い人たちにとって彼らはアイドル的な存在なんです」
今、日本には数万人レベルのYouTuberがいるとも言われ、有名YouTuberにもなれば10万人以上のファンがつき、動画の視聴回数も数百万回を超えるのはザラ。その影響力もバカにできない。収入も、HIKAKINにいたっては年収1億円を超えるという説もあるが、実際にそれだけで生活できるYouTuberはごくわずか。かつて『クローズアップ現代』(NHK総合)でも、YouTubeに動画をアップしたら月にけっこうな収入があったので、「これだけで生活できる」と脱サラしたら収入が激減したという実例をあげていた。
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生回数増加の手法を研究 YouTuberがビジネス化
そうした流れは教育分野にも及んでいる。インターナショナル・メディア学院は2016年3月、日本初の本格的な「YouTuberコース」の開設を発表。自分自身は顔出しせずに活動することを目指し、ITの基礎知識を学んで、どのようなジャンルの動画にするか、動画チャンネルの動画再生回数をどうやって増やすかなど、具体的な手法を研究して、YouTuberとしての技能を身につけるという。
ちなみに同学院のHPでは、「ご自分のお子様をターゲットの動画として、ご両親がこのコースを受講できます」と付記され、若者だけではなく、その親の世代への訴求も行なわれている。
「実際、今YouTubeでは、“子ども(小学校低学年以下)”がオモチャやゲームで遊びながら解説するという動画が、若者のYouTuberにまさるとも劣らない人気なんです。もちろん親たちがその背後にはいるのでしょうが、テレビなどのコンテンツと同じで、子どもネタはハズシがない。5歳のがっちゃんというスターがいたり、“YouTuberキッズ”なんて言葉があるくらいですから」(前出・スタッフ)
将来の夢がサッカー選手でもYouTuberでも“好きなこと”という意味では同線上?
つまり、サッカーも元々は“好きなこと”からスタートしているという点では、サッカー選手を夢とする子どもも、YouTuberとする子どもも実は同線上にあると言えなくもない。今やYouTuberは、子どもたちにとってはサッカー選手や医者と同じように、スター性、アイドル性、地位や名誉、そして高収入を期待できる憧れの職業なのである。
今後、このままYouTuberの裾野が広がっていくことになれば、日本文化の新たな創造と発信につながる可能性も十分にあるだろう。ただ、最後に前出の編集者が、「悪ふざけの延長としての“ネタ合戦”が過熱しすぎて事故にならなければいいのですが…」と、警鐘を鳴らしていたことも付け加えておきたい。
→10周年のYouTubeがネット社会にもたらした“革命”と“余波”(15年05月29日)