1983年から「ビッグコミックスピリッツ」(小学館)に連載され、単行本は現在101巻、累計1億部以上を販売しているグルメマンガの金字塔「美味しんぼ」(作:雁屋哲/画:花咲アキラ)。「食」に興味がある人なら誰もが一度は読んだことがあり、また、「美味しんぼ」に触発されて料理人の道を歩んだ人も少なくないなど、日本の「食」に多大な影響を与えてきたマンガだが、「ビッグコミックスピリッツ」の5月12日発売号で大きな「区切り」を迎えた。
「美味しんぼ」25年の歴史を通して、一貫して描かれてきたのが主人公の山岡士郎と、その父・海原雄山の「親子の確執」。海原雄山が芸術に没頭するあまり母親に無理を強い、死に追いやったことから絶縁状態となり、山岡士郎は事あるごとに海原雄山に反発してきた。作品内で繰り返し行われている「究極vs至高」の対決も、この親子間の対立が軸となっている。
そんな2人が、5月12日発売号でついに歴史的な和解の時を迎えたのだ。その意図について、作者の雁屋哲はブログで次のように述べている。
「今回一区切りつけたのは、ひとえに私の我が儘からである」
「どうにもこうにも、身体が続かなくなってきたのだ」
「以前は机に向かうと、独りでに案など出て来た物だが、いまは体中逆さにして振っても何も出て来ない。脳みそが空っぽになったというのか、硬直してしまったというのか、何も案が浮かばない」
「私が一番恐れるのは、作品の質の低下である。今でも、初期に比べると大分質が低下していると思う」
つまり、ストーリー上の必然性というよりは、作者の体力の限界から仕事のペースを落とすために、「一区切り」付けるとの判断に至ったようだ。編集部は「一区切り」付けることをなかなか承諾してくれなかったが、雁屋哲が「我が儘」を押し切った形だという。
ただし、「美味しんぼ」はこれで終わるわけではなく、少しペースを落としながら今後も継続していくとも宣言している。25年の節目で大きな転換をすることになった「美味しんぼ」。これから山岡士郎と海原雄山の関係がどのように変化し、描かれていくのか楽しみだ。