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NAKAHARA-LAB.net

2018.8.13 07:08/ Jun

「箇条書き」ばかりしていると「頭が悪くなっちゃう」のはなぜか?

※8月14日から8月26日までは「夏期充電期間」ということで、ブログの更新を原則お休みいたします! またお逢いしましょう!
  
「箇条書きは、やめてください。極力、文章にしてください」
  
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 僕は、自分のゼミ生や大学院生に、このように指導をすることがあります。
 大学院の場合は、これに加えて、論文指導のときは、パワーポイントなどを用いた「プレゼン」も禁止します。ゼミへの提出書類は、すべてワードで文章で打ち込んだものを準備してもらい、パワーポイントなどでプレゼンすることを禁止してしまいます。
  
 それはなぜか?
 あのね、いじめぢゃありません(笑)
   
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 それは端的に申し上げると「箇条書き」ばかりをしていると「頭が悪くなる」からです。
 ええと、「悪くなる」は言い過ぎました(笑)。
   
 「箇条書きは頭がよくならない=思考のトレーニングにならない」
  
 からです。
 
 だから、僕に対して「箇条書き」や「プレゼン」で論文指導を求めることは「禁忌」にしているのです。
 箇条書きしたドキュメントをもってきてもらい、僕の頭の中で「再構成」してしまえば、僕としては文章を読むよりも楽なのですが、それで動くのは「僕の頭」であり「学生の頭」ではありません。なので、思考のトレーニングとして「箇条書き」などを禁止しています。
   
  ▼
  
「箇条書きは頭がよくならない」
  
 ここで「頭がよくならない」は、あきらかに比喩です。
  
 「箇条書き」は簡便な表現でありますが、それは「脆弱性」をもっています。
 「箇条書き」は、箇条に書き出した要素、概念感のあいだに「論理(ロジック)」をつくったり、「ストーリー」をつくったりすることができないのです。というか、それが一般には、求められないのです。
 なので、箇条書きばかりをしていると「思考のトレーニング」にならない。ロジックをつくったり、ストーリーをつくらなくても、提案ができ、人に伝えられると思い込んでしまうからです。
    
 箇条書きばかりをしていると、何が起こるか。
  
 まず罹患してしまうのは、「思いついたまま羅列病(られつびょう)」です。
 問題や現象や考え方を「思いついたまま」、それらの関係や、そこに駆動するロジックやストーリーを「ほとんど」顧みないままに、羅列して、「なんか、よく考えたなー、今日頑張っちゃったなー」と勘違いすることが「習慣化」します。
  
 この下位症候群には「プライオリティつけられない症候群」、「ロジックレス症候群」「ストーリーガン無視症候群」というものがつづきます。  
  
 要するに、思いついたままを「羅列」するだけなので、概念間の包含関係、論理などを考慮することができないのですね。
   
 これに対して、箇条書きをやめて文章にすると、これらに「脆弱性」をもっている場合には「文章」になりません。
 文章は、「思考の飛躍を、いやがおうえでも、見える化」します。論理が飛べば、文意が通らないし、唐突に感じます。ストーリーをつくることができなければ、単調に感じます。要するに、文意のとおる文章をつくるとは、それだけで思考のトレーニングになるのです。
  
 これが、中原研では箇条書きを認めない理由ですが、いかがでしょうか?
  
  ▼
  
 ロジカルシンキングを学んだり、ロジック面を強化したい方は、世の中にはたくさんいらっしゃいます。書店にいけば、その手の本はあふれている。
   
 まず、明日から出来ることは、僕は、箇条書きを辞めて文章にすること。そして、願わくば、作成した文章を、気の置けない人に見せてフィードバックをもらうことだと思います。地道ではありますが、これが一番の早道です。
  
 あなたは、最近、箇条書きに慣れ親しみすぎていませんか?
 あなたは、最近、ロジカルに伝えられていますか?
 あなたは、最近、頭が悪くなっていませんか?
    
 そして人生はつづく
  
  ーーー
  
新刊「女性の視点で見直す人材育成」(中原淳・トーマツイノベーション著)が、ついに刊行になりました。女性のキャリアや働くことを主題にしつつ、究極的には「誰もが働きやすい職場をつくること」を論じている書籍です。7000名を超える大規模調査からわかった、長くいきいきと働きやすい職場とは何でしょうか? 平易な表現をめざした一般書で、どなたでもお読みいただけます。どうぞご笑覧くださいませ!
  

  
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