R.N.Nolan(1979)は,情報システム活用の成長段階を初期,普及期,統制期,統合期,データ管理期および成熟期の6段階(ステージ)に区分しました。この発展段階説は,まだパソコンやインターネットが普及する以前のものですので,この図で書かれていることは,現在から見ると重点が異なっているところもありますが,情報システム部門と利用部門との関係をよく示しています。
- 初期
- コンピュータの導入直後では,まだ試行錯誤の段階ですから,情報システム部門自身がコンピュータ技術を習得しながらシステム開発をしています。エンドユーザもあまり関心を持たず,新奇なものには関わりたくないという認識です。
- 普及期
- この段階になると開発が急速に行なわれますので,情報システム部門の要員を増強するために利用部門の人をプログラマにしていきます。利用部門の関心も急速に高まりますが,ややもするとブーム的な関心です。その間に情報化費用は急速に増大します。
- 統制期
- 急速なシステム化により,費用がかかると共に,個々のシステムがバラバラであることが問題になります。そこで,全体の観点から統合しようという機運がたかまります。そのために,今まではシステム化についてほとんど放任していたのを,基準を設けて統制しようとします。それにより,情報化費用の伸びは抑えられます。しかし,統制により情報システム部門の権力が増大しますし,利用部門の熱も冷めてきますので,利用部門は,あるときは積極的に参画したり,あるときは無関心になったりというような状態になります。
- 統合期
- 統制期が続くと情報化が沈滞してしまいます。ここで,パラダイムシフト(質的革新)が重視されます。経営的な観点から情報化の意義を考えて,経営者のリーダーシップのもとで情報システム部門も利用部門も一緒に情報化を考えようという状況になります。
- データ統合期
- 全社的な統合を考えると,情報資源の管理,特に各システムで収集したデータを,もっと有効に活用することが重要だと認識されます。それでデータベース化をしたり,そのデータベースからエンドユーザが情報を得ることによって業務に役立てることが重視されます。また,情報システムを開発し運用する費用と情報システムによる効果について,利用部門が責任を持つことが認識されてきます。
- 成熟期
- ここでは,理想的な段階として成熟期を描いています。経営戦略と情報システムとが統合されること,情報システム部門と利用部門の任務が見直され,それに合致した組織になるとしています。
この発展段階説がいわれた頃は,米国で統制期から統合期への動きが始まった頃でした。データベースの機能が発展し,情報検索系システムとしてのEUCが始まりかけていた頃でもあります。そのために,ここではデータ管理だけが重視されている傾向があります。
ここで重要なのは,ステージ3の統制期とステージ4の統合期の間にパラダイムシフトが存在することです。ステージ3までは,情報システム部門が情報システムを管理しており,エンドユーザはそれに責任をあまり持っていなかったのですが,ステージ4以降では,情報システムに関する責任を情報システム部門とエンドユーザが分担するようになってくるとしています。