東洋英和女学院 不正行為に関する調査結果「極めて悪質」 深井智朗院長を懲戒解雇 2019年5月10日
東洋英和女学院大学(池田明史学長)は5月10日、同院長・人間科学部保育子ども学科教授の深井智朗氏=5月10日まで同学院サイトに掲載されていた写真=による「研究活動上の不正行為が認定された」とし、同大学研究活動上の不正行為防止に関する規程第17条に基づく調査の結果を公表した。
公表された資料によると同女学院は、本紙がweb上で公開した2018年10月3日付の記事に端を発し、聖学院大学、金城学院大学在職中に研究、発表した著書『ヴァイマールの聖なる政治的精神――ドイツ・ナショナリズムとプロテスタンティズム』(岩波書店)、論考「エルンスト・トレルチの家計簿」(『図書』岩波書店、2015年8月号掲載)に「捏造の疑いがあること」を認め、調査委員会を設置。両大学の協力を得て、研究活動上の不正行為の有無を調査したという。
調査委員会の陣容は佐藤智美氏(東洋英和女学院大学副学長)を筆頭に、聖学院大学元学長の阿久戸光晴氏(福岡女学院大学学長)、荒巻慶士氏(弁護士)、水島治郎氏(千葉大学法政経学部教授)の学外者3人を含む6人。
2018年10月17日から19年3月15日までに関係者への事情・意見聴取を実施した結果、深井氏が「実在しない人物と論文を基に本件著書を書き、その著書の一部にて他者の文献より適切な表示をせず引用を行なった」こと、「実在しない架空の証拠を基に本件論考を著した」こと、「研究者としてわきまえるべき基本的な注意義務の著しい懈怠(けたい)があった」こと(捏造・盗用)を認定した。
深井氏が多数の著書、翻訳書を刊行してきたことから、「社会的影響度はかなり高い」「研究者のみならず一般読者にとっても非常に悪影響を及ぼしていることは明らか」と断じ、「学術的・社会的影響度について、『極めて大きい』」「行為の悪質度について、『極めて悪質』である」と非難した。
この結果を受けて同女学院は5月10日に臨時理事会を開催し、深井氏を懲戒解雇処分とすることを決定。「学内の紀要、論集、年報等の査読、編集の厳格化を進め、不適切な行為の早期発見につとめる」「研究データの保存と開示に関する学内ガイドラインの遵守を徹底する」などの再発防止策も明らかにした。
同大学は「本学職員によりこのような事案が発生したことについて、多くの関係者の皆様に多大なご迷惑をおかけしたことを深くお詫び」した上で、「今回の事案を厳粛に受け止め、教職員の研究倫理に関する意識向上の徹底を図り、不正行為の再発防止に取り組んでまいります」と宣言している。
これを受けて深井氏は同日公表したコメントで「今回の調査結果については、真摯(しんし)に受けとめ、速やかに必要な訂正や修正を行いたい」としながらも、今年3月11日付で辞任届・退職届を提出していることを理由に「学院の教育と研究に関するすべての立場から退いておりますので、……何らかの形で私宛にお問い合わせ頂きましても、これ以上お答えできることはございません」と本人による釈明の予定がないことも言明した。
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