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建産EYE
2019/03/01
被災地へ畳を無料提供 畳事業者が全国組織化
近年、日本列島での自然災害の猛威が一段と高まりを見せつつある。そうした被災による苦難を迅速に和らげようと、畳を無償提供する畳事業者による全国組織化が実現した。これに呼応して参加した畳事業者は実に522社に達し、162自治体との災害時の防災協定ができ上がった。しかも被災地に最も近く、地理、状況判断にたける地元畳業者が窓口となり、枚数などを判断して、スピーディーに運び込む。
避難場所は学校の体育館や教室、自治体などで、板間、コンクリ―ト床が多く、被災者が持ち込んだ布団、毛布では住み心地が悪く、苦悩するケースが多い。そこで畳でそうした悩みを解消しようと畳事業者が立ち上がったわけ。畳文化は日本特有のもの。畳は毛布や布団とのなじみが強く、弾力性があり、さらには防音、防寒、調湿、遮熱効果も高い。
畳の表面に使われているい草は、癒しの効果があり、被災者の気持ちを「少しでも和らげ、心のケアの一助になれば幸い」との配慮もある。
『5日で5000枚の約束』プロジェクトが発足したのは、「東日本大震災で被災者が冷たい板の間の上に座っているのを見て、畳屋として何とかしたい」との思いから、前田畳製作所(神戸市)の前田敏康社長が救援を思いついたのがきっかけ。5日間で5000枚の供給体制からスタートを切ったのが2013年のこと。
14年の長野県北部地震では40枚、16年の熊本地震では6680枚、18年の西日本豪雨では16か所で合計718枚と、被害状況などによって事情が異なるが、8つの災害で合計8189枚を届けた。畳のサイズは1760×880㎜、運搬しやすいよう厚さは35㎜と通常より薄くしている。使用後は地元自治体に寄贈する仕組み。
近畿地区委員長を務める武内秀介関西畳工業社長(写真左)、吉金英明吉金畳商店社長(写真右)は、今後は「全国ネットワークへの参加事業所を引き続き募り、体制の拡大に努めたい」としている。
また「避難所へ届けた後は避難所を訪問し、適切に利用されているかを確認し、アドバイスするなどアフタ―ケアもしっかり行っていきたい」としており、ボランティアとの連携など、今後の一層の活躍を期待したい。