▼各現象をクリックすると説明文が表示されます。
励起子分裂
一つの励起子を二つの励起子に分離させることができます。二倍の数になった励起子から発電する太陽電池が実現されれば、従来の太陽電池に比べて出力電流を二倍にすることができます。それを実現するために、新材料の開発や励起子分裂の十分な理解が必要になってきています。
レーザー
一つの励起子は、全く同じ特性(波長や位相)をもつ発光を他の励起子から誘導することができます。この過程はレーザーの基礎原理となります。また、広い利用範囲が期待される、有機物質を用いた有機レーザーは多くの挑戦的な課題が未だ残っています。
発光
正電荷(ホール)と負電荷(電子)が分子内で出会うと励起子を作り、分子は高いエネルギーを得ます。その励起子はこのエネルギーを光として放出することができます。この発光現象はディスプレイ、照明、センサーなどに応用されていています。
発電
起子は光のエネルギーを吸収することによって作られます。そのときに励起子を正電荷(ホール)と負電荷(電子)に分けることによって、電力が生まれます。有機物質を使った有機太陽電池は、フレキシブル・軽量・低コストな太陽電池を作るための一つの方法になっています。
円偏光発光
適切な分子構造を設計することで、光の電場が回転しながら伝わる、円偏光を発生させることができます。円偏光は3Dディスプレイなどの新しいディスプレイ や光ディスクなどの光学ストレージ、センサーなどに利用されています。
長寿命な励起子
発光も含めた励起子が失われる過程を抑制することによって、励起子をエネルギーとして長い時間貯めることができます。現在、エネルギーを貯蔵して遅れて放出する過程を利用した新しい応用に取り組んでいます。
私達は本プロジェクトにおいて、分子構造と物性の相関解明、新規材料の開発、励起子(エキシトン)を
利用した新規デバイス構造の構築、有機材料を利用した新規電子デバイスの確立を目指し研究を行っています。
2013年、エキシトンの基礎原理を確立し、励起子の自由な制御を目標とする、安達分子エキシトン工学プロジェクトが科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業・総括実施型研究(ERATO)に採択されました(研究期間は2019年の3月まで)。本プロジェクトでは、主に有機固体薄膜中における新しい励起子(エキシトン)過程を開拓し、未開拓の分子エキシトン過程を制御することにより新しい光学物性、高性能デバイス、新材料創製を目指します。これらの研究開発により、新しい光物理過程での理論・新材料の創出が進み、有機ELデバイスの基本性能向上や、情報通信用の新しい光源など、従来では実現不可能と考えられていたデバイスの創製、さらには、バイオエレクトロニクスの端緒を築くことが期待されます。本プロジェクトで、新しい概念を拡張しながら「分子エキシトン工学」を確立し、高性能光デバイスを開拓していきます。未来社会で活用される新しい光デバイスの創出を推進していきます。
エキシトンの性質を理解し利用する上で、分子構造が物性に与える影響を理解し、最適な分子を創造することは非常に重要です。分子設計・合成グループでは、用途に合わせて分子設計を行い、得られた分子の基礎物性を次の材料設計にフィードバックすることで最適な分子の実現と構造と物性の相関解明を目指しています。
有機分子のエキシトン過程は、用いる材料単独だけでなく、デバイス構造により制御することが必要です。本研究では、分子エキシトン過程を効率良く制御・利用するために、固体薄膜、液体状態、単結晶などの様々な分子の凝集状態を利用して、高性能な有機EL、太陽電池、トランジスタ、熱電変換デバイスなどを探索します。
物性・解析グループでは、励起子が失活する際に放出される光を最大限に生かすことを目標に、新規発光機構や素子構造に焦点を絞り、励起子のダイナミクス、分子配向による励起子の制御を可能にする製膜プロセスの開発を行っています。今後は研究で得られた結果を実デバイスへ応用していきます。
生物は優れた構造や機能を持ち、多くの生命反応の過程においてエキシトンや電子が関わっています。バイオデバイスグループでは生命の機能や構造を取り入れた新たなデバイスの開発や、優れたデバイス材料のバイオ系はの応用を軸にバイオ関係化学と光有機デバイス科学の融合領域の開拓を目指します。
本センターには様々な装置があり、新材料の創出や薄膜・デバイスの特性評価が可能です。30人以上が利用できる合成室や、NMR、TG-DTA、複数の昇華精製装置、9台以上のグローブボックス付きの蒸着装置、電子ビームリソグラフィー、光学測定室XRD装置、紫外・可視・赤外の吸収スペクトル装置、発光分光装置、絶対PL量子収率装置、ストリークカメラ、有機ELや太陽電池やトランジスタの特性評価装置などを保有しています。
安達分子エキシトン工学プロジェクトは九州大学伊都キャンパスの最先端有機光エレクトロニクス研究センター(OPERA)を拠点とします。当研究センターは有機エレクトロニクスの開拓のために2010年に設立され、本プロジェクトを中心に研究を行います。九州大学内の研究室、京都大学、早稲田大学を含む学外の研究グループとも共同で研究を進めていきます。