メスがペニスのような伸縮可能な交尾器を持つ昆虫を見つけたと、北海道大学と慶應義塾大学などの研究グループ4月18日発表した。オスとメスで交尾に対する積極性が逆転しているためとみられ、性選択(性淘汰)の理論を検証する上でも重要としている。
この昆虫は、ブラジルの洞窟に住むチャタテムシの1属。メスがペニスのような交尾器を持ち、オスに挿入することで交尾を行う。この「メスペニス」の根元には多くのとげが生えており、約40〜70時間と長い交尾時間中、メスはオスをしっかり拘束して精子を受け取るという。
一般に、メスは卵という大型細胞を作ったり、妊娠期間や産卵などが必要な分、多くの精子を容易に作れるオスと比べ、生殖に支払うコストが高い。オスは多くのメスと性交して繁殖することが可能なため、オスは交尾に積極的な一方、メスは相手を選り好みする傾向がある。交尾相手を選ぶことにより進化が進むことを性淘汰と呼び、クジャクやゴクラクチョウのオスの羽根はその例と考えられている。
このチャタテムシ属の場合、オスはメスに対し、栄養の入ったカプセルを交尾中にメスに渡す。その分オスが支払うコストが増え、オスよりメスのほうが早いペースで交尾が可能になっているため、オスの栄養を奪い合うメスの同士の競争から雌雄の積極性が逆転し、メスに強い性淘汰が働いたことが交尾器の逆転を促したと考えられるという。
昆虫は、「とりかへばや物語」にちなんで「トリカヘチャタテ」と名付けられた。性淘汰理論に加え、性差が進化した背景などを考える上で重要な意味を持つとしている。
成果は「Current Biology」に掲載される。
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