「日本の音楽業界の動きは遅れている。もっとスピードアップしてほしい」――こう話すのは、アジア最大級の定額制音楽配信サービス「KKBOX」を手掛ける台湾KKBOXのクリス・リン共同創業者兼CEOだ。
国際レコード産業連盟(IFPI)が3月に発表したデータによれば、2013年の世界音楽売り上げは前年比3.9%減の約150億ドルだった。前年割れの要因は日本が16.7%減と大きく落ち込んだためで、日本市場を除くと0.1%減とほぼ横ばい。IFPIは「定額制サービスが主要市場の成長を支えている」と報じている。
世界的には定額制&ストリーミングサービスの売り上げが急伸する一方、日本はこの波から取り残されている。その原因はどこにあり、日本の音楽市場はどこに向かうのか――KDDI子会社として日本で2011年から定額制サービスを提供しているKKBOXのリンCEOに聞いた。
――日本は海外諸国と比べ、定額制音楽配信サービスの普及が遅れていると言われる。日本で実際にサービスを提供していても業界の遅れを感じるか。
リンCEO そうですね、遅れていると感じます。日本の音楽業界にはもっとスピードアップしてほしいと思っています。
日本のレーベルはわれわれのような定額制サービスに対してオープンではありますが、最新のJ-POPコンテンツを提供してくれてはいません。ユーザーが最も望むのは最新コンテンツですから、日本で本格的に定額制サービスが普及するには、レーベルによる最新楽曲のオープン化がカギになるでしょう。
日本は今でもCDの売り上げがかなりの規模ですし、TSUTAYAなどのCDレンタルビジネスもまだ堅調ですから、レーベルが最新コンテンツを手渡したくないのも理解できます。また、彼らが「定額制サービスのような破壊的なモデルを導入すると、CDの売り上げ低下がさらに加速するのでは」と懸念しているのも分かります。
しかし私が思うのは、たとえ日本のレーベルがこうした“破壊的なモデル”を導入しなくても、CDの売り上げが落ちていくのは間違いないということです。なので今こそオープン化に踏み切ってほしいと考えています。
――CDの売り上げは落ちる一方で、もう伸びることはないのか。
リンCEO まずCDプレイヤー自体の出荷数がどんどん減っています。また、人々はTSUTAYAなどでCDをレンタルした時、そのCDをただ聞くだけではなくデジタルフォーマットに変換しますよね。つまり、CDは音楽を配信するための最終的な手段ではなく、音楽を配信したり、音楽の形式を変換するための1つの媒介でしかないのです。
デバイスに音楽を送り込むための方法はCDだけではありません。このプラスチック(CD)よりも効率的な手段があるはず――というのが、私たちが世界で見ている技術的なトレンドです。
ただし、私は日本の「TSUTAYA」のことを本当に尊敬しています。彼らはCDレンタルという帝国を築き上げただけでなく、それにコーヒーショップを加えたり、書店や図書館と併設させたりして日本独自のライフスタイルビジネスを作り上げました。この点は非常に尊敬していますが、それでもやはり、このビジネスモデルがいつまでも持続するのは非常に想像しにくいと思います。
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