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川口教授「本当に信じられない」 はやぶさの“おつかい”成功に「感激」

» 2010年11月16日 18時09分 公開
[岡田有花,ITmedia]
画像 感慨を語る川口教授。「ちょうど1年前にイオンエンジンが停止し、再開したことをここ(JAXA会見室)で発表した。この1年大きな変化があり大きな成果に恵まれ、本当によかったと思う」とも

 「信じられない気持ちだ」――宇宙航空研究開発機構(JAXA)で「はやぶさ」プロジェクトを率いた川口淳一郎教授は、はやぶさが持ち帰ったカプセルに入っていた微粒子約1500個が、イトカワの物質だと判明したことを受け、会見で感慨を語った。

 地球外の天体からのサンプルリターンとしては、米航空宇宙局(NASA)の探査機「スターダスト」が、エアロゲルを使ったすい星からのサンプル回収に成功しているが、「小惑星からのサンプルリターンは世界初。エアロゲルなどを使わない、コンタミ(汚染)のない状態の回収もはやぶさが初めて」と川口教授は話す。

 はやぶさプロジェクトがスタートしてから15年。「夢のようなゴールを目指してきたが、夢のもう1つ上をいくような、信じられない気持ち」で、「わたしにとってはたいへん、感激的な日だった」という。

1500粒のサンプル 「そんなにたくさんいらないのに(笑)」

 はやぶさカプセルの中身を収集・分析する「キュレーションチーム」が、特殊なへらを使ってサンプルキャッチャー(サンプル容器)の側面をこすり取り調査。1500個程度の微粒子を地球外の岩石質と同定し、イトカワ由来と判断した(イトカワの微粒子、写真公開 はやぶさが回収に成功)。

 イトカワのものかを判断するには当初、大型放射光施設「SPring-8」(兵庫県佐用町)を使った同位体分析など「初期分析」の結果を待つ必要があるとみられていたが、電子顕微鏡による分析の結果からのみから断定。「微粒子が1粒や2粒では結論を出すのが難しかったが、1500もあり、統計的な処理をした結果、イトカワ由来と確信を得た」(JAXAの藤村彰夫教授)という。

画像 カプセルの模型

 川口教授は、サンプル分析の状況を随時、専門の会合などで聞いていたという。サンプルがイトカワ由来と断定し、プレスリリースを発表することに対しては、「本当か? と、わたしが一番慎重だった。サンプルは逃げていかないんだから、初期分析が終わってからでいいのでは、と言っていた」と振り返る。

 だが、初期分析とは異なるアプローチでイトカワ由来と確認できると聞いたとき、「本当に信じられない」気持ちに。「わたしは1粒でいいと思っていたが、1500粒もあると聞いた。そんなにたくさんいらないのに、と正直そう思った(笑)」

「1粒でいいからあってほしい、あるはずだ」

 はやぶさプロジェクトが始まってから15年、はやぶさが宇宙に飛び立ってから7年。「考えてみると、当初は夢のようなゴールを目指して飛行させてきたが、今回、1500個というイトカワ起源の物質を判断するにいたったことは、その夢の1つ上をいくような信じられない気持ち」と感慨深げに語る。

 特に後半の4年半の飛行は「艱難辛苦、たいへんな苦労だった」という。はやぶさは、弾丸を打ち込み、飛び散ったサンプルを回収する計画だったが、弾丸発射に失敗。「弾丸を発射していないと訂正発表した経験があり、その時たいへん苦しかった」と述懐する。

 それだけに、「最後の最後まで確認したいなと思っていた。心の底では(イトカワのサンプルが)あってほしいなと。帰りの飛行が始まった時から、1粒でいいからあってほしい、あるはずだ、あると信じているからこそ、帰りのプロジェクトをみんなで支えられた」。

「はやぶさ自身も喜んでいることだろう」

 はやぶさに今、どんな言葉をかけてあげたいか、という質問に対して、「はやぶさが打ち上がってから、いろんなしつけをつけて、育て上げ、取り組んでもらった。(はやぶさとプロジェクトチームが)協働して持ち帰ったと言える」と、我が子のように語る。

 「はやぶさには燃料がなく、大気の中で燃え尽きないといけないことは予測されており、カプセル・試料の回収を最優先してきた。はやぶさにとってベストなのは試料を回収すること。はやぶさ自身も、今回の成果はたいへんに喜んでいることだろう」

 プロジェクトに関わった全員の成果とも。「プロジェクトのみなさんが献身的に努力してくれてこの発表を迎えられたことに、プロジェクトみんなで喜びたい。宇宙科学研究所(JAXAの前身)時代からのべ40年以上にわたる宇宙開発の積み重ねがあってこそこういう結果にたどりつけた。先輩諸氏と一緒に喜びたいし、感謝したい」

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