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アメリカの鉄道を変えるのは、日本の新幹線しかない

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    アメリカの鉄道を変えるのは、日本の新幹線しかない

    アメリカの大地でその勇姿が見たい!

    日本が誇る新幹線。車社会で公共交通機関がイマイチなアメリカにもその速さ、快適さ、安全さから待望論があるようです。遅々として進まないアメリカの高速鉄道計画を進めるためには新幹線しかない!と断言する、米GizmodoのBryan Lufkin記者の期待にあふれたラブコールをお届けします。

    ***

    時速300マイル(時速480km)を超える高速鉄道は、未来思考の技術が、いかに現実社会の輸送問題を変えるかという究極の例でしょう。過去数十年の間に、世界にはたくさんの安全でサステナブルな高速鉄道が誕生しました。そんな中、高速鉄道が50年以上前に導入され、世界でもっとも成功を収めた国…それが日本です。

    一方で、アメリカの高速鉄道はバイパーウェア。いつまでたっても実が伴いません。高速鉄道に一番近いのは東海岸を走るアムトラックの特急アセラですが、それでもたかだか時速150マイル(時速241km)。高速鉄道の計画がしぼんでいるフロリダ州のような場所もありますが、カリフォルニア州やテキサス州は高速鉄道導入を目指しています。

    高速鉄道計画で大きなハードルとなるのは、アメリカ人に電車文化を受け入れさせることです。車派のアメリカ人が文字通り、この計画に「乗る」ように仕向けなければいけません。しかしこの取り組み、先日もフィラデルフィアでアムトラックの悲劇的な事故があったばかりなので、なかなか難しい。電車を使うようにさせるには、正しい電車を輸入する必要があるでしょう。安全で、速く、静かで、エコで、そして人々が乗りたくなるような電車。そんな電車は日本から来るに違いありません。

    日本の鉄道革命

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    新幹線の京都駅。image by Shutterstock

    みなさんはこう思うかもしれませんね。「なんで日本なの?他の国にもっと速い電車もあるのに!中国の商用マグレブは時速270マイル(時速435km)出るんでしょう?」はい、その通りです。そして日本の「シンカンセン」(訳注:原文でもshinkansenと書いてます!)はたったの時速200マイル(時速320km)。でもですね、鉄道を信用してない国に新しい旅客インフラを導入して、人々の移動方法を根本的に変えることを狙うとしたら、それは長期的な取り組みになるでしょう。スピードそのものは重要ではありません。大事なのは安全低排出快適さ、そして時間通りに走ることなんです。

    日本の高速鉄道は、日本語で「新幹線」。既存の鉄道に対して新しい幹線鉄道という意味で、世界で最初に誕生した高速鉄道です。1964年の開業から、いくつもの国が最先端の新幹線を後追いしています。最初に誕生した路線だけで年間1億5000万人以上が新幹線を利用。その空気力学的デザインは恐るべきスピードを実現し、その線路はカーブでもフルスロットルで走れるように建設されています。

    新幹線は、日本の第二次世界大戦後の急速な技術発展の象徴なので、みなさんもポストカードでその姿を見たことがあるかもしれません。桜と、冠雪した富士山の間を走り抜ける流線型のシルバーの車体を。

    51年にもわたって新幹線は日本列島を駆けめぐり、新幹線網はこれまでに100億人の人々を運んできました。新幹線にはいくつかの路線がありますが、もっとも数が多いのは東京都大阪を片道わずか2時間半以下で結ぶ東海道新幹線。その距離は300マイル(480km)以上で、カリフォルニアで計画されている、サンフランシスコとロサンゼルスをむすぶ鉄道とほとんど同じです。

    日本では、遅れを時間単位や分単位で計測しません。秒単位です。新幹線の遅れは平均36秒。悪天候時でも、です。

    完璧なまでの安全記録

    51年で100億人もの乗客を運びながらも、新幹線の死亡事故はゼロです。高速鉄道が40人から101人の命を奪う重大事故を起こしたことがある中国、ドイツ、スペインとは対照的。ちなみにフランスも死亡事故ゼロの記録保持者ですが、日本の高速鉄道より20年ほど歴史が浅い。

    日本列島が台風、大雪、山崩れ、そしてもっともおそろしい地震などの自然災害が多い国だということを考えると、新幹線の安全記録はまったく見事としか言いようがありません。

    2011年3月11日の午後。日本史上最悪、そして記録の残っている1900年以来4番目に大きいマグニチュード9.0の巨大地震が日本列島を襲ったとき、27本の新幹線が運行中でした。しかし、緊急停止ブレーキが大きな揺れが来る前に作動。その結果、死傷者は出ませんでした。

    日本は山に囲まれた国で、わずかな可住地に1億2700万人がぎゅうぎゅうに住んでいます。その上地震の脅威も避ける必要があるそんな場所に、どうやって公共交通機関を作るのでしょう? それを可能にしているのは、すばらしいエンジニアリングです。

    日本の海岸線、内陸、そして鉄道の線路に沿って、揺れを感知する地震計が地中深くに埋められています。地震の際、まずP波と呼ばれる初期微動が地震計によって検出。その後やってくるS波と呼ばれる大きな揺れより前に、電車の電力供給は停止されます。それによって地震に先駆けて緊急停止ブレーキがかかるのです。

    同時に、新幹線の高架は強化された柱で建設されていて、地震の揺れを軽減するためにXの形をしています。線路には脱線防止ガードも取り付けられ、地震の際の脱線や転倒から列車を守っています。

    新幹線の海外輸出

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    新大阪駅に入る新幹線 image by Shutterstock

    新幹線は日本の象徴です。東京-大阪間だけで、毎日42万人が利用します。超快適なシートに座ってエビ弁当を食べ、サッポロビールで一杯やりながら、絵葉書で見た桜並木を電光石火の速さで駆け抜ける-そんな観光客たちの憧れを日本政府はお見通し。そして、日本政府はお金を儲けながらその技術をアピールするため、新幹線を輸出しようとしているんです。

    導入に向けた関心の差はあるにせよ、台湾、インド、イギリス、ブラジル、中国などの国が新幹線の輸入に向けて日本と協力を始めています(実は2011年に起きた中国の高速鉄道の衝突事故は、2台のうち1台が日本の列車に似たものでした。しかし中国の捜査当局は、信号の欠陥とマネジメントの問題が事故の原因だとしています)。 先日、タイも日本の高速鉄道を導入することに合意したところです。

    先日の訪米中、日本の安倍首相は日本の高速鉄道を売り込むために、カリフォルニア州のJerry Brown知事と会談しました。それに加えて、安倍首相は去年から、さらに高性能なマグレブ(リニアモーターカー)をアメリカに売り込んでいます。ワシントンDCとボルチモアの間にマグレブを導入させたいようです。マグレブとはマグネティック・レビテーション(磁気浮上)の略で、車体が磁力によって線路から浮いています。車輪の代わりに電磁気を使って電車を進ませることで、その走りをさらに軽快に、静かに、そして速くするのです。

    4月、日本のリニアモーターカーは試験走行で世界記録となる速度をたたき出しました。速すぎてびっくりの時速603km

    さらに、日本は自らの資金を投入する準備もしているみたいです。日本の国際協力銀行は、ワシントンとボルチモアを結ぶ路線に50億ドル(約6000億円)を拠出するとしています。この2都市を15分で結ぶというリニアの開通に一役買うかもしれません。

    カリフォルニア高速鉄道局(California High-Speed Rail Authority)の広報担当副ディレクターのLisa Marie Alley氏は次のように話しています。「アメリカ市場への参入には、他の国々も関心を寄せています。カリフォルニアかテキサスのパートナーになれば、アメリカへの最初の参入者になります。その分け前に預かろうと、彼らはロビー活動をしているんです」

    東京からテキサスへ

    テキサス州は日本の高速鉄道導入の手堅い候補です。ヒューストンとダラスはそれぞれ全米4位と9位の大都市。毎週5万人がこの2都市間を車で通勤しています。

    都市が無秩序に膨張したテキサス州は巨大経済都市で、2014年には全米で一番雇用が増えました。ダラスとヒューストンはアメリカでもっとも人口が増加している2都市です。もしテキサスが国だとしたら、そのGDPは世界12位。テキサス州は自身を先進地域としてブランディングして、EUの豊かな国々やアジアのイノベーティブな市場と足並みをそろえたいのです。

    テキサスは日本の高速鉄道を真似しようと全力を傾けています。高速鉄道は240マイル(384km)のダラスとヒューストン間を片道90分で結ぶ計画。民間企業のテキサス中央鉄道(Texas Central Railway)は、日本のJR東海と共同で高速鉄道計画に取り組んでいて、両社はすでに日本の新幹線をカウボーイのふるさとに走らせることに合意しています。

    世界水準で最高の技術だと信じているものをテキサスに導入するつもりです」そう話しているのはテキサス中央鉄道の環境・エンジニアリング担当バイスプレジデントのShaun McCabe氏。テキサスの電車はどのくらい日本のものに似るんでしょう?その答えは、「99%そのまんま」だそうです。

    テキサス中央鉄道は、土地利用を確定したり、規制を整備したり、連邦鉄道局からの承認に向けて働きかけたりしています。この計画、一朝一夕というわけにはいきませんが、野心的に2021年をターゲットに設定しています。しかし、1月に建設が始まったカリフォルニアの高速鉄道とは異なり、テキサスは工事にも入っていません。まだ準備が必要なんです。

    一方そのころ、カリフォルニアでは…

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    2015年1月6日、カリフォルニアの高速鉄道着工式でのJerry Brown州知事 image by AP

    さて、西海岸に目を向けてみると、カリフォルニア高速鉄道局は2029年の建設完了を目指し、連邦政府のお金を680億ドル(約81兆600億円)投じて工事が始まりました。この高速鉄道、最終的にはサンフランシスコとロサンゼルスを3時間以下で結ぶ予定なんですが、カリフォルニア州はいまだに採用する高速鉄道のインフラを決めていません。

    カリフォルニア州が日本の高速鉄道をモデルとして検討するべき理由はいくつかあります。まず地理的なもの。カリフォルニア州と環太平洋地域の仲間どうしです。そして地形。米国地質調査所(USGS)によると、今後30年間にカリフォルニアでマグニチュード8以上の自身が起きる可能性は4.7%から7%にアップ。その間に新しい電車がサービス開始する予定です。

    新幹線には、地震に強い以外にもセールスポイントがあります。それは、車幅。フランスのTGVやドイツのICEといった高速鉄道よりも、足1個半分くらい広くて、よりたくさんの乗客を運べます。これは人口が過密で、常に成長し続けている州には朗報です。テキサスで使用される予定のN700系新幹線は、一車両あたり80人が乗れます。この数字、フランスの電車は40人ですし、ドイツの電車だと50人です。

    しかし、今のところカリフォルニア州は新幹線の購入に至っていません。最終的には、カリフォルニアの高速鉄道線路の75%が、高速鉄道サービス専用に使われる計画です。高速鉄道は現在ベイエリアを走るCaltrainと線路の一部を共用し、その範囲はロサンゼルスのユニオンステーション近辺まで伸びると見られています。新幹線は専用の線路を必要とするので、この共用計画が新幹線の採用を難しくしています。

    速く、効率的なサービスのためには専用の線路が必要です。新幹線は低速な普通の電車と線路を共用なんかしていません。また、踏切や車で止まらなくてすむように、新幹線は地上ではなく、高架の上を走るものです。さらに、重要な耐震機能のためにも、新幹線が使っている技術を盛り込んだ特別な線路を作る必要があるでしょう。

    未来を見よう

    残念なことに、いまだに多くのアメリカ人が高速鉄道は時間とお金のムダだと思っています。カリフォルニアとテキサスでは、税金を費やして、人々の資産を侵害する巨大なインフラプロジェクトを十分精査するようにと市民グループが要求しています。オバマ大統領は今後20年以内に国土の80%を高速鉄道でつなげたいとしていますが、進捗ははかばかしくありません。

    個人的な体験からして、新幹線に乗ることは「宇宙家族ジェットソン」のような超現実的とも言える経験だと思います。楽しさ、未来っぽい奇抜さは置いておいたとしても、新幹線は信じられないほど便利です。飛行機のように隠された手数料はないし、セキュリティ検査のわずらわしさや、不愉快さ、地上走行の長い待ち時間とも無縁。常に時間に正確な新幹線の信頼性と技術はその優秀さの証。また、何よりも安全です。

    新幹線はアメリカの旅行に革命を起こすでしょう。実現するためには、最高の国からヒントをもらわなければいけません。進めるためには、東を見なければ。

    Top image by Shutterstock

    Bryan Lufkin - Gizmodo US[原文

    (conejo)