携帯ネットワークがダウンしても、端末同士はつながってる。
香港で中国政府への抗議運動に参加している人たちが一斉に使い始めているアプリがあります。それは、携帯電話ネットワークがダウンしてもメッセージを送りあえるアプリ「FireChat」。iOSでもAndroidでも使えます。今香港の金融街には数万人の学生や市民が集まって、中国政府による香港の選挙制度変更に抗議を表明しています。最初の集会を主導したのは学生たちで、デモにもテクノロジーがうまく活用されています。参加者の多くはスマートフォンを使いこなし、デモ現場のライヴフィードは以下のようなものがあちこちから発信されています。
デモ参加者たちはFacebookやTwitterのようなメジャーなソーシャルメディアも使いつつ、FireChatも使い始めているんです。活動家のひとり、Joshua Wongさんが仲間の学生たちにFireChatを勧めたことから急速に広がっていきました。
FireChatを運営するOpen Gardenは、この22時間で香港からの新規ユーザーが10万人に達し、同時に使っているユーザーは3万3,000人と報告しています。これらはTwitterのような巨大ネットワークなら日常的な数字ですが、FireChatはまだ小規模でマイナーなアプリです。この局所爆発的な数字も、FireChatが市民運動にとって有用なツールであることを示しています。
FireChatが急拡大した理由は、ユーザー同士の接続方法にあります。FireChatは「メッシュネットワーク」とよばれる端末間の数珠つなぎ的なネットワークを作り出します。とはいえ現状、FireChatでつなげられるのは最大200フィート(約60m)までで、人混みでしか役に立ちません。でも今まさに人混みを成している香港のデモ現場では多くの人が巨大メッシュネットワークに参加でき、情報をアップデートしあえるんです。
メッシュネットワークは端末同士で作られていて、携帯電話ネットワークを使いません。だからもし中国政府が携帯電話ネットワークを強制シャットダウンしても、デモ参加者はFireChatを使い続けられます。メッシュネットワークはトカゲのしっぽみたいに1ヵ所を切っても他の部分が生き残るので、FireChatを止めるにはそこに集まった全スマートフォンのBluetooth機能をオフにする必要があります。気軽なチャットならこんな堅牢さは必要ありませんが、政治的対立においてはこれがライフラインになりえます。
ただしFireChatは暗号化されていないので、アプリを持っている人なら誰でも公開メッセージを読めます。プライヴェートなチャット機能もないので、こっそりメッセージを送り合うこともできません。それでも中国本土でインスタグラムがブロックされたりしている今、政府の強制ブロックを回避できるFireChatの存在意義は急拡大しているんです。
source:TechInAsia
Kate Knibbs - Gizmodo US[原文]
(miho)