新しい意味で「ペン一本あれば仕事できる」時代に?
アドビがCreative SuiteからCreative Cloudへの移行を発表しました。アドビの主力ソフトウェアがパッケージじゃなくなるってことも驚きでしたが、この発表の最後にもうひとつのサプライズがあったんです。それは小さなハードウェアなのですが、Creative Cloudの将来を感じさせるものです。その名も「Project Mighty」、感圧式のiPadスタイラスと、デジタル定規の「Project Napoleon」です。
アドビがハードウェアなんて作るのは意外な気がします。しかもタブレットのスクリーンとスタイラスの組み合わせでは、実際の紙とペンのような感触はなかなか実現できていません。でもアドビはスクリーン技術の向上に賭けて、そんなスクリーン上で使えるようなツールの開発に資金を投じたんです。
1年ほど前、アドビはAmmunitionという工業デザインスタジオに対し、タブレットでのデザインプロセスを改善するハードウェアのデザインを依頼しました。Ammunitionはこれまで、電子書籍リーダーのNookやヘッドフォンのBeats by Dr. Dreといった製品も手がけています。「アドビはiPadに真のクリエイティブツールとしてのポテンシャルを感じる一方、現時点ではそこに至っていないとも考えていたんです。」Ammunitionの創業者、ロバート・ブルナー氏が米Gizmodoの電話インタビューで語りました。「我々は今回のツールが、ツールベースの製品群に向けた最初のステップになると考えています。」
Project Mightyでは、ユーザーのアイデンティティや設定をスタイラスに登録させるという興味深い試みをしています。この背景には、Creative Cloudで複数デバイスを許容していることがあります。ひとりのユーザーが複数のデバイスを使うということは、デバイス間でのユーザーのスタイルや設定の共有が課題になります。その課題を解決する手段としてProject Mightyがあります。そこには、線のウェイトやスタイルなどなどの情報をすべて保存できます。異なるデバイスを使っていても、ユーザーは同じ「手」で描くことができます。UIもクレバーで、指で消しゴムのように消去したり、やり直し操作をしたりが可能です。またAmmunitionによるハードウェアデザインは、三角形を使った形状やLEDライトなどがとてもエレガントです。
一方、Project Napoleon(名前はその小さなサイズ→小柄だったナポレオンに由来)の機能はちょっと説明がややこしいです。定規形のデバイスで、左手(右利きの場合)に持ってProject Mightyと一緒に使うと、指で特定の種類の線を選択できるというものです。たとえばある大きさの弧を描きたいとしたら、弧のプロンプトをタップすると、Napoleonが手を正確にガイドしてくれます。こんな機能は落書き程度なら不要と思われるかもしれませんが、建築家やデザイナーにとっては、タブレット上のスケッチを作業フローに組み込むためのカギになりえます。
別の言い方をすると、ソフトウェア上のツールバーを物理的なデバイスにしたような感じですが、やっぱり定規といった方がわかりやすいのかもしれません。「タッチベースの世界では、ツールはどんな外観にでもできます」と前出のブルナー氏は言います。「でも、長い間慣れ親しんできた道具と同じようにしてみたっていいんじゃないでしょうか?」
ブルナー氏は「こうしたデバイスは、クラウドへの入口になりえます」とも言います。「これらを使って、自分の作ったコンテンツを持ち運ぶことも可能です。」
そんなMightyとかNapoleonはどこで手に入るかというと、実はまだ発売予定はありません。そういう意味では、まだCreative Cloud連携ツールキットとして構想中だとも言えます。でもブルナー氏によれば、この種のプロジェクトが他にも進行中とのことです。なので、これからもクリエイティブな仕事のあり方を変えそうな面白いものが、アドビから次々と発表されそうです。
Kelsey Campbell-Dollaghan(原文/miho)