7インチ版より良いところもある、けど...「星3.5」です。
心地よさ。Kindle Fire HD 8.9インチの特長を言い表すなら、まずそれが挙げられます。タブレットとしてはこれまでで一番持ちやすく、読みやすく、映画なんかも見やすいです。でも、米Gizmodoが望んでいたようなiPadやNexus 10とフルに勝負できるような端末かというと、あと一歩の出来のようです。
Kindle Fire HD 8.9インチって?
Kindle Fire HD 8.9インチ(日本国内発売未定)の価格は、たった300ドル(約2万4700円。2012年11月24日現在)です。つまりフルサイズタブレットとしては最安で、年末の買い物リストの最初に加えたくなる商品です。今年中にかなりの人が購入するんじゃないでしょうか。
デザイン
8.9インチというサイズは、フルサイズタブレットとして完ぺきだと思います。10インチよりも持ちやすく、特にポートレートモードにして片手で持つ場合、iPadとかNexus 10より楽に持てます。小さいし軽いし、しかもベゼルはたっぷり取ってあるからです。背面は7インチのKindle Fire HDと同じラバー加工で、ランドスケープモードだと両側にスピーカーが来ることになり、動画閲覧に適しています。iPadとかNexus 10みたいな「洗練された工業デザイン」ではありませんが、デザインも良いと思います。ただしオプションのケースは、僕らが気に入ってた7インチのKindle Fire HDのケースと基本同じものですが、サイズが大きくなるとかさばって感じます。ケース無しのほうが、好きになれそうです。
使用感
7インチのKindle Fire HDを8.9インチにしたもののはずですが、使用感にはかなり違いがあります。サイズが物理的に違うだけではなく、価格もサイズも小さい7インチ版と、より大きくて高価な8.9インチ版とでは期待感が全然違うのです。7インチ版では見過ごせてた欠点が8.9インチだとすごく大きく感じられたりします。
Kindle Fire HD 8.9インチは7インチ版と同じKindle OSで動いていますが、アプリの読み込みはOMAP 4470プロセッサのおかげで高速化しています。メールアプリの重さも軽減されました。逆に言うと、改善点はそれくらいです。
それ以外の違いを指摘すると、まずスクリーンが大きいことで、アマゾン製のスキンのアラも大きく見えてしまっています。まだ、お気に入りボタンとコンテンツが並んでいるホームスクリーンの寄せ集めという感じです。メール着信の通知がないのはもちろん、ホームスクリーンの巨大なメールアプリアイコンがあってもバッジすら出ないのです。Androidアプリの選択肢が少ないことや、他のAndroidタブレットに比べて動作が遅いこともすごく不満な点です。
こんな不満も、安価な7インチタブレットなら「まあ、読書用・動画鑑賞用だし」と割り切れました。でも、大きくて価格も高く、性能も多少は上がっているとなると残念に感じます。同じソフトウエアだってことはわかっているのですが、画面が大きくなると、欠点を掘り返したくなってしまうのです。
好きなところ
サイズもビルドも理想にかなり近いです。iPadやNexus 10のような完成度ではないですが、最低価格の安さから考えると非常にしっかりしています。また7インチのKindle Fire HDに比べると格段に速くなっています。たとえば7インチ版は重いHD動画を開くのに5秒以上かかっていましたが、8.9インチ版ではほぼ2秒程度でした。サウンドは7インチ版同様に高音質で、タブレットとしてはベストに入るし、たいていのラップトップよりも良い音です。そしてもちろんアマゾンは、映画や音楽に関してアップルと同じくらい巨大なエコシステム(ストア)を持っています。
そしてスクリーン。8.9インチ版の1920x1200、254ppiのIPSディスプレイは、iPadの264ppi、Nexus 10の300ppiよりはスペックとしては低いです。でもこれはよっぽど画面に近づかない限り気づきませんし、AndroidアプリのほとんどはスーパーHD解像度にまでアップデートされていません。気づくのはNexus 10ほど明るくないということですが、それでもコントラストは非常に高いです。このように書くと色再現が劣っているように思われるかもしれませんが、実際長時間見るならKindle Fire HDの方が見やすかったです。
雑誌の定期購読やコミック閲覧をする人なら、このディスプレイはおすすめです。Kindle Fire HD 8.9インチではコミックをフルスクリーンで、十分な画質で読むことができます。10インチから8.9インチになっても、使用感は悪くなりません。コミックリーダーとしてはかなり良いと思います。さらに、Wi-FiのスピードテストではNexus 10より速く、同じネットワークで5回テストしても5Mbpsをちょっと下回る程度でした。
好きじゃないところ
それはソフトウエアです。Kindle OS全体がまどろっこしく感じられます。Kindle Fire HDより速いことは間違いないのですが、それでも7インチ版でも感じた不満がさらに大きくなります。
さらに、ささいな点がいくつかあります。テキストがiPadやNexus 10よりデフォルトでちょっと小さく表示されます。それ自体はまあ許容範囲ではあるのですが、目が細くなるくらい小さいのです。それから7インチ版と同様、ボリュームボタンと電源ボタンの出っ張りがないので、ボタンを探すのが面倒だったりします。またゲームとか動画のストリーミングとかを見てると本体が第3世代iPadみたい熱くなってくるので、それらを長時間使う人はちょっと考えた方がいいかもしれません。
買うべき?
お買い得じゃないってわけじゃないのですが、300ドル(約2万4700円)という価格はくせ者です。200ドルのKindle Fire HD 7インチ(約1万6500円、日本では約1万5800円)と、400ドル(約3万3000円、日本では3万6800円)のNexus 10のちょうど真ん中の価格ですが、もしAndroid的なことがすべて可能なフルサイズタブレットを求めるなら、100ドル足してNexus 10を買ったほうが良さそう。300ドルは試しに買ってみるには高いし、とはいえ価格に見合うメリットがあるかというとちょっと疑問だからです。
ただ、もしコミックとか雑誌を読むのがメインの目的だったら、8.9インチ版Kindle Fire HDはお買い得だし、「買い」です。そういう人は多くはないと思いますが。
スペック
プロセッサ:デュアルコア 1.5GHz OMAP4470
ストレージ:Wi-Fiモデルは16GB/32GB、LTEモデルは32GB/64GB
ディスプレイ:8.9インチ IPS 解像度1920x1200
オーディオ:ドルビーオーディオ、ステレオスピーカー
ネットワーク:4G LTE、デュアルバンド・デュアルアンテナWi-Fi
Kyle Wagner(原文/miho)