獲物はスペースデブリ!
広島県の老舗漁網メーカー「日東製網」が宇宙航空研究開発機構(JAXA)と「宇宙ごみ除去システム」というものを開発しているそうです。「スペースデブリ(宇宙ごみ)」とは、例えば、耐用年数を過ぎたり事故や故障で役目を終えた人工衛星、あるいは宇宙飛行士が落とした手袋や工具など、「なんらかの意味がある活動を行うことなく地球の衛星軌道上を周回している人工物体」のことです。(ちなみに天然の岩石などは「メテオロイド」と呼ばれ区別されます。)4500tもスペースデブリが今も地球の衛星軌道上を漂っているんだとか。下のモデル図の黄色いやつは全部デブリですよ。
さて、このスペースデブリ、宇宙空間をとんでもないスピードで移動しています。そのため破壊力が激パなく、例えば宇宙船がたった数ミリメートルのデブリと衝突した場合、その宇宙船は大砲で撃たれたと同じだけの損害を受けます。直径10cmもあれば宇宙船を完全に破壊できる威力です。これが数百万から数千万も漂っているそうですから、宇宙こえーな。しかもデブリ同士で衝突して分裂、増殖し続けているっぽいから厄介です。新しい人工衛星を打ち上げる時などに大きな問題になってしまいます。
そんなスペースデブリを、なんと「網」で一網打尽にしてしまおうという計画が。金属で編んだ長さ数キロの「導電性テザー」と呼ばれる細長い網をデブリにとりつけ、大気圏へ再突入させ燃やしてしまおうという話です。デブリにとりついた網は地球のまわりを周回するうちに電気を帯び、地球の磁場と影響し合ってデブリごと大気圏まで高度を引き下げる働きをするんだそうです(一番最初の図)。ローレンツ力ってやつです。網は「捕獲衛星」のロボットアームを使って宇宙ごみに取りつけるんだとか。激クールですね。
開発を手がける日東製網は、定置網漁や底引き網漁、マグロ養殖用として使われる「無結節網(超丈夫な網)」の製造機を世界で初めて発明した企業。昨年創業100周年を迎えた老舗です。その実績から、6年前にJAXAから「電流を流せる網」の開発依頼を受けました。そしてとうとう昨年の夏にアルミワイヤとステンレス繊維を組みあわせた導電性テザーの開発に成功。テザーとは紐のことです。
細いテザー一本では微小デブリに切断されやすいため、網状にして一部を弛ませ、一本が切断されても機能を保てるようにするそうです。
開発を担当する尾崎浩司さんによれば
「ナイロンなどで編む漁網と違い、硬い金属製の網を編むのは難しい。ちぎれて使い物にならない失敗作も作ったが、やっと実用可能なテザーができた」
とのこと。2年後の完成が目標だそうです。
うーん、それにしても100年前の日東製網の方は、まさか未来に自分達のつくった網が宇宙で大活躍するとは思ってもなかったんじゃないでしょうか? なんか胸熱っす...。
最後にちょっと話変わりますが、スペースデブリがめっちゃ飛んでることのわかる動画を貼っておきます。米空軍の次世代型宇宙レーダーシステム「スペース・フェンス」です。カッコイイ!
導電性テザー(EDT):研究開発本部[JAXA]
[日東製網]
宇宙ごみを漁網で一網打尽 広島の老舗とJAXA開発中 [asahi.com(朝日新聞社)]
スペースデブリ [Wikipedia]
(鉄太郎)