良いものだから、買い換える必要がない。
今週月曜日、アップルが7月~9月期決算を発表しました。相変わらず増収増益、iPhoneの売上もアップ、Macの売上もアップ、iPadの売上は…あ、下がっ…まあ、はい。すべてがヒットとはいかないですからね。それにiPadの売上が落ちたからって、iPadはもうだめだってことじゃないんです。タブレットは死んでいくのではなくて、むしろ永遠に生きるからこそ、この売上減なんです。
そもそも、iPadの売上台数自体まだまだ大きいです。この四半期だけで、1,230万台も売れています。ただし1年前と比べて13%ダウンしていて、iPhoneやMacが同じ時期に伸びていることを考えると、落ち込み具合がますます光ります。だからアップルウォッチャーたちはがっかりしてますが、売上が落ちたってだけでは、iPadまたはタブレット全般がもう終わりってことにはなりません。
iPadの問題は、この2年半ほどの間に1台買っていれば、新たに買う理由が特にないってことです。Retinaディスプレイ搭載なら、それでもう十分です。うっかりトイレに落としたりして、やっと買いどきが来るんです。
でもiPadは、テクノロジーの進化とともに毎年アップグレードされています。とはいえ、新たに買いなおすほどのアップグレードじゃないってことです。すでに持ってるiPadで、十分使えますからね。
iPad 3以降、追加された機能を振り返ってみましょう。まず薄くなった…けど、もともとやたら薄いです。軽くなったけど、もともとやたら軽いです。他にも処理速度が速いとか、Touch ID搭載とかもあります。でもiPadの処理速度は、たいていの人がiPadでする操作にはもともと十分でした。最新のiPad Air 2を街で見かけたとしても、みんなが持ってる古いiPadと比べて本当にうらやましいことがどれだけあるでしょうか? iPadにTouch IDが付いてたらいいなって、心底思ってた人がどれだけいるでしょうか?
iPad Air 2ですらそんな感じですが、iPad miniはもっとかわいそうです。iPhone 6 Plusにカニバライズされて、1年経ってもアップデートされたのは「Touch IDが付いた」ってことだけです。先週のiPadイベントでも、ほとんど言及されませんでした。もうアップルは、iPad miniを買ってほしくないのかもしれません。iPad miniは忘れて、大きいほうのiPadのことだけ考えてくれってことなのかな、と思います。
iPadの(ビジネス的に)最大の問題は、その長い長いアップグレードサイクルにあることがだんだん明らかになってきました。「手抜きだけど豪華なクリスマスギフト」として使う以外に、買うための強い動機がないんです。長くても2年ごとにみんなが買い換えるiPhoneと比べればその差は歴然だし、MacBookでさえ、入学シーズンという格好の売り込みタイミングがあります。でもiPadは、一度買ってしまえばもう買い換えのタイミングがなく、ただずっと使い続けるか、飽きてレシピ閲覧専用端末にするか、それくらいしかありません。バッテリーも、良くも悪くもそれほど早く劣化しません。
ティム・クックCEO自身、決算報告のなかでこの問題を認めています。
ここでわかるのは、ユーザーがiPadをスマートフォンより長く使い続けているということです。この事業を始めて4年しか経っていないので、アップグレードサイクルがどれくらいになるのか、我々にもわかっていないのです。
でも良いニュースは、この問題は我々ユーザーにとっては別に問題じゃないってことです。iPadやタブレット一般が便利じゃないとか、今後便利じゃなくなるとかいうことはありません。たとえば移動中に映画を見たり、ベッドでマンガを読んだりするとき、これ以上に適したデバイスは見当たりません。セカンドスクリーンとしてもラップトップ以上に使いやすいし、価格も(もっとかさばるChromebookを除けば)より手頃です。
というわけで、iPadはもう要らない、なんて言う人がいたらそれは言い過ぎです。強いてiPadの欠点をいえば、長く使える、使えすぎるってことだけです。それが欠点だなんて、むしろぜいたくな悩みですね。
Top art by Michael Hession
Brian Barret - Gizmodo US[原文]
(miho)