クリスマスイブの夜、けちで頑固で冷酷なスクルージは、甥からの食事の誘いも冷たく断り、募金を求める紳士も追い払い、いつもと変わらないわびしい食事をして家に帰ります。心の底からクリスマスなんてくだらないと思っていたからです。
そんなスクルージの前に、事務所の元共同経営者で、7年前に亡くなったマーレイの幽霊が現れます。マーレイは、生きている間に何も良いことをしなかったために、亡くなった後で重い鎖に縛られさまよい続けているといい、スクルージに同じ運命をたどらせないために現れたのだと言います。そして同じ道をたどらないためには三人の幽霊の訪問を受けるようにと助言します。
そうして順番にやってきたのが、第一の幽霊、第二の幽霊、第三の幽霊。
三人の幽霊は、毎晩スクルージにさまざまな風景を見せます。第一の幽霊は「過去」を、第二の幽霊は「現在」を、そして第三の幽霊は「未来」を。幽霊とともに、いろんな時代の「自分」と「自分」を取り巻く人たちの暮らしやスクルージに対する気持ちを目にするうちに、スクルージにどんどん変化が訪れます。
19世紀のイギリスの作家、チャールズ・ディケンズによるこれぞ王道! のクリスマスの名作。クリスマスらしい、慈悲の心、親切の心、感謝の心をもつことの大切さを、ゆかいな方法で教えてくれる本書は、世界じゅうで読み継がれています。
このお話の面白さは、なんといっても、あの世からやってくる三人の幽霊の姿や特徴でしょうか。それぞれどんな姿をしているのかまず想像しながらもカラーのさし絵が入っていますので、じっくり見てみてくださいね。この三人の幽霊は、他の『クリスマス・キャロル』のお話では、精霊と呼ばれたりもしており、その姿はさまざまな絵で表現されていますので、比べてみるのも面白いかもしれません。
さまざまな版で出版されている『クリスマス・キャロル』のお話。こちらでご紹介するのは、愛蔵版です。その魅力は、豪華な造本。白い表紙に金色でひいらぎとタイトルが箔押しされた美しい本が、青くて丈夫な美しい箱に収納されており、本の表紙を開くと真っ赤な見開きが目に飛び込んできます。
クリスマスを深く味わうための読書に、また小学校高学年から中高生、大人の方へのクリスマスの贈り物にもぴったりの一冊。ぜひ手にとって、造本の美しさと合わせてお楽しみください。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
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