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2005年10月22日

「保険の役割を見失った」保険会社のモラルハザード

保険に入っていれば安心ですよとPRしながら、いざ保険金を払うべき段になると、条件上の難癖をつけてその保険金を払わなかったり、減額したりしてきた明治安田生命保険の社長ら首脳3人が21日、辞任を表明した。22日の新聞各紙によると、同社は特別調査委員会による報告書を公表、不当な不支払いは過去5年間で1053件、52億円に上るらしい。

加入者が不当に保険金支払いを受ける「保険金詐欺」は昔からあったが、これは「保険会社の保険金詐欺」とも言うべき、恐れ入った経営モラルの崩壊である。

報告書は同社の「企業統治(ガバナンス)が機能しなかった」と結論つけているが、まさに旧来の会社組織のあり方そのものが問われていると言えよう。

以前にも書いたと思うが、「モラルハザード」というのは、高い自動車保険に入った人はついつい運転が乱暴になりがちだという「モラルダウンをもたらす構造」を意味する。もともと保険業界から出た言葉だというが、今回のモラルハザードは、収益とは関係なく、厳密に保険金支払い業務にあたるべき査定部門が、「支払う保険金を減らせば収益が上がるから、無理にでも払わないようにする」ことを増収目標に掲げ、それを経営陣が追認したことに起因している。

村上ファンドによる阪神電鉄、楽天によるTBSの株買い占めなど、従来の企業経営が新興IT関連企業によって翻弄されているが、そういう派手な「マネーゲーム」の中で、一定の企業目標にそって地道に収益を上げる努力するという、従来はごく一般的だった企業人の生き方そのものが失われつつある。

自己の出世を図るために、結果的には会社の首を絞めるような本末転倒の増収策を考え出すような人間はどこの組織にもいただろうが、かつては、そういう人間が組織に入れられ、あるいは社内の支配的趨勢になるようなことはなかったと思われる。私の実感によれば、そういったブレーキがきかなくなり、会社ばかりでなく、日本社会全体からごくふつうのモラルが消えてしまったのはここ十数年のことで、しだいに、本来の業務以外の間接部門の人間が、あるいは本来の業務ではほとんど実績のなかった人間が、奇策や追従によって上層部に重用されるようになった。

これが会社経営の責任、あるいは社会全体の責任でなくて何であろうか。日本社会のモラルハザードが行きつくところに行きついた象徴のような出来事である。

投稿者: Naoaki Yano | 2005年10月22日 12:34

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