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NEWS & 主張

福井県高浜町元助役から関西電力幹部への金品受領問題
に関する部落解放同盟中央本部のコメント

(2019.10.07)

 関西電力の幹部ら20人が福井県高浜町の元助役森山栄治氏(以下、森山氏という)から約3億2千万相当の金品を受け取っていたという問題で、森山氏自身にスポットをあて、森山氏の隠然たる力の背景には、部落解放同盟の存在があり、同和の力を利用し、差別をなくすという名目で、関西電力を恐れさせ、地元高浜町で確固たる地位を築くまでに至ったとする報道内容が一部で取り上げられている。

 また、森山氏が町長をもしのぐ権威をもつに至る背景に、部落解放同盟の存在があり、高浜町や関西電力に対してプレッシャーをかけていたとも報道されている。しかも週刊誌にとどまらずネット上でも、「高浜町助役は、地元同和のドンだった」など、差別的な書き込みが拡散され、社会意識として存在する部落差別意識を巧みに利用した差別文章が流布されている。マスコミ関係者や一部のネットユーザーなどによって拡散されようとしている部落差別の助長拡大の現状に対して、わが同盟として明確な見解とこの事件に対する同盟としての態度を明らかにしておきたい。

 まず、その第一には、森山氏自身による私利私欲という問題に部落解放同盟としては一切の関与も存在しないという点である。

 森山氏は、1969年京都府綾部市職員から高浜町に入庁している。1970年部落解放同盟福井県連高浜支部が結成され、福井県内唯一の解放同盟支部の結成ということもあって、部落解放同盟福井県連合会も同時に結成されている。その結成に尽力したこともあって、森山氏は県連書記長(同時に高浜支部書記長)に就任。2年間書記長の要職に就いている。しかし、その言動が高浜町への厳しい指摘であったり、福井県に対する過度な指摘等が問題とされ、2年で書記長職を解任されており、それ以後、高浜町の職員として従事するようになる。確かに解放同盟の関係者であり、県連結成に尽力したひとりではあるが、解放同盟内で影響力を持っていたのは、2年間の書記長当時だけであり、それ以後は、解放同盟福井県連や高浜町支部の運営等において関与することはなく、もっぱら高浜町の助役として原発の3号機・4号機の誘致と増設に奔走したと思われる。

 第二に、部落解放同盟福井県連(同高浜支部)の状況についてである。

 部落解放同盟福井県連合会は、高浜支部の一支部だけで構成されており、その所帯数も80世帯ほどの被差別部落であり、同盟員数に至っても200名ほどの小さい県連の1つである。福井県に対する交渉においても中央本部役員が同行し、県との協議を進めているのが現状であり、福井県や高浜町、ましてや関西電力に大きな影響を及ぼすほどの組織ではない。

 ネットや週刊誌で一部指摘されている1975年の「女性教員に対する糾弾」という事例についても解放同盟福井県連・高浜支部ともにまったく知る由もない出来事であり、解放同盟が関与した差別事件ではないことを指摘しておきたい。

 また、関西電力との関係においても、解放同盟福井県連・高浜支部はまったくの無関係であり、関電を相手に交渉を持ったり、要求書を提出したりなどの行為は一切ないこともつけ加えておきたい。

 さらには、高浜町や福井県に対しては、部落解放同盟中央本部と福井県連との合同の要求書を作成し、提出しており、年に数回程度協議の場をもっているなど、真摯に対応している。

 つまり、「原発マネー」や度を超えた同和予算などが高浜町の被差別部落に施策として実施された経緯はなく、社会性を持った要求内容であり、行政の議事録を振り返ってもらえれば理解できるものである。

 第三は、この一連の経過の本質が、同和問題にあるとする一部の間違った考え方への反論である。

 森山氏が培ってきた町を支配するかの如き振る舞いは、解放同盟の影響力を利用し、関電との蜜月な関係をつくりあげたのだと一部が報じている。しかし、第二のところで指摘したとおり、福井県連は、高浜支部のみの組織であり、影響力が決して高いという団体ではない。また、森山氏自身も1972年から書記長を退任し、解放同盟を離れ、同盟の影響力がまったくない状況時に、森山氏は助役へと上り詰め、高浜町全体に大きな影響力を持つに至るのである。この一連の事件の本質が同和問題ではなく、原発3号機、4号機の誘致・建設にあると言うことがここからでも理解できよう。

 つまり、解放同盟や同和問題という力を利用して隠然たる力を持つに至るという短絡的な問題ではなく、原発の建設運営をスムーズに持って行こうとする福井県、高浜町、関西電力による忖度が、森山氏を肥大化させ、森山氏が首を縦に振らなければ原発関連の工事が進まないという癒着ともとれる関係にまで膨れあがったのである。また、助役退任後は、京都に住むところを移し、原発関連の企業の役員となり、権限を振るっていたという事実を見れば、「部落解放同盟の力を笠に着て」という範囲のものではないことが理解できるだろう。

 さいごに、関西電力がとりまとめた調査委員会による報告書は、森山氏の一方的な叱責、罵倒、恫喝があり、それに臆してしまいズブズブの関係に至ったと記述されている。そして、それが一部の週刊誌やネットでは、関電がビビった背景に同和がある。解放同盟の存在があると結びつけている。森山氏を高浜町のドンと扱い、逆らう者などいない。ならず者呼ばわりするために、被差別部落の出身である。解放同盟の関係者であるという「部落は怖いもの」とする予断や偏見を利用し、さらに森山氏をアンタッチャブルの扱いにくい人物に一部マスコミは差別を利用して肥大化させているのではないだろうか。 

 部落と森山氏を結びつけることで、さらなる「風評被害」がネットで増大されている。高浜町にも差別的な文章やメールが後を絶たないと報告されている。

 明らかにされなければならないのは、原発建設を巡る地元との癒着ともとれる関係であり、それにともなう資金の流れの透明化こそが、この事件の本質であるはずだ。それを部落差別によって、事件の本質を遠のかせてしまうことになることだけは本意ではない。原発の誘致・建設に至る闇の深さという真相を究明することは棚上げし、人権団体にその責任をすり替えようとする悪意ある報道を許すことは出来ない。また、いち早くこうした“同和利権報道”に対して、ヘイトスピーチなどに反対してきた多くの団体や個人が批判を展開してくれていることもつけ加えておきたい。

2019年10月7日
部落解放同盟中央本部
執行委員長  組坂 繁之

 

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