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出生前診断・2013

出生前診断歴史・年表English文献

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◆坂井 律子 20131220 『いのちを選ぶ社会――出生前診断のいま』,NHK出版,272p. ISBN-10: 4140816228 ISBN-13: 978-4140816226 1500+ [amazon][kinokuniya] ※ p01.

◇立岩 真也 20140301 「生の現代のために・1――連載・97」,『現代思想』41-(2013-12):-

 「☆05 精神障害者の「処遇」と同様、一九七〇年を越えた時期においても優生思想は本格的に問題にされていない(素直に肯定されている)というのが私の見解であり、この点において優生学史研究の第一人者である米本昌平と見解を異にすることは立岩[1997→2013]で述べた。近く刊行されたものでは、おもには「新型出生前診断」について紹介している坂井律子[2013]で読まれるべきは、その新しい技術について記された部分とともに、一九七〇年代初頭の兵庫県における「不幸な子どもの生まれない運動」についてその当時についての取材をもとに記された部分である。そしてこの「運動」についてはそれ以前、二〇〇一年の松永真純による貴重な論文(松永[2001→2005])がある。」

◆2013/04/29 「血液検査で子どもの障がいがわかるって、それって、いいこと? パート3」

今春、妊婦の血液検査で赤ちゃんの障がいの有無を調べる新しい出生前診断が、全国で開始されました。当面、高齢妊娠等の「ハイリスク」妊婦を対象に行われ、これらの検査は、彼女たちの要望に応えるものであり、「安心」をもたらすものだとされています。
しかし、本当にそうでしょうか?自らの身体の大きな変化に加えて、様々な不安を抱えている妊婦に、さらなる過重な負担を強いるだけなのではないでしょう か。元気に楽しく暮らしている障がい者やその家族がたくさんおられることも知らされず、すべての子どもを生み育てるための社会的支援が不十分な中で、「赤 ちゃんに障がいがあったらどうしよう」と“恐怖”ばかりをふくらませることにはならないでしょうか。
今回は、「ハイリスク」と名指しされた女性たちの立場から出生前診断の問題を考え、自分達が真に必要としているものは何かを発信している“「ハイリスク」な女の声をとどける会”の皆さんに話を伺います。
妊娠中の女性(カップル)、これから産むかもしれない人、かつて妊婦だった人、産まない/産めない人、子育て中の人、障がいとともに暮らす人、出生前診断のあり方にモノ申したい人、みんなで話し合ってみませんか。

テーマ:新型出生前診断について考える―「ハイリスク」な女の声をとどけたい
講師:二階堂祐子氏・渡部麻衣子氏(「ハイリスク」な女の声をとどける会)
日時:2013年4月29日(祝・月) 午後1時半〜午後4時半 
会場:クレオ大阪中央(大阪市立男女共同参画センター中央館) 研修室1
   大阪市天王寺区上汐5-6-25  TEL 06-6770-7200 begin_of_the_skype_highlighting 06-6770-7200 無料  end_of_the_skype_highlighting
(地下鉄谷町線四天王寺前夕陽ヶ丘駅1・2番出口から徒歩約3分)

主催/連絡先:生殖医療と差別―紙芝居プロジェクト(旧優生思想を問うネットワーク)
   大阪市浪速区日本橋5-15-2-110 ここ・からサロン内 TEL 06-6646-3883 begin_of_the_skype_highlighting 06-6646-3883 無料  end_of_the_skype_highlighting
協賛:京都ダウン症児を育てる親の会(トライアングル)
資料代:500円
*手話通訳の用意あります。

◆2013/03/30 「新型出生前診断 4月スタート 「妊婦の決断」ケアの課題に」
 産経新聞 3月30日(土)15時3分配信
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130330-00000141-san-hlth

 新型出生前診断を受ける場合の流れ(写真:産経新聞)→上掲HP

 「□阪大病院、検査再考期間設ける
 新しい出生前診断の実施施設として認定を受けた大阪大学医学部付属病院(大阪府吹田市)が、4月上旬からの診断実施に向けて準備を進めている。ダウン症 などの染色体異常を高い精度で調べる新診断には生命倫理上の問題を指摘する声もあり、妊婦らからは「母親の判断を支える態勢は整っているのか」などと戸惑 いの声も上がる。医療関係者は「検査を受けるかどうかも、よく考えて決めてほしい」と呼び掛けている。
 新診断をめぐっては、日本医学会や日本産科婦人科学会(日産婦)などが、阪大病院など全国15施設を実施施設として認定した。
 阪大病院では1月、産婦人科と遺伝子診療部でつくる医療チームが発足。臨床遺伝専門医や染色体異常の子供の診断経験があるベテラン医師、カウンセラーら約10人で構成される。同病院では4月上旬から2年間で、50人を目標に検査を実施する予定だ。
 出生前診断は、これまで母体血清マーカー検査などが行われてきたが、精度は6〜8割だった。精度の高い羊水検査は流産のリスクがあり、敬遠する人も少なくなかった。
 新診断は、血液検査だけのためリスクが低く、高精度だが、出生前の人工中絶など「命の選別につながる」という懸念もある。阪大医療チームの金川武助教は「陽性だったとしても子供に障害がない可能性もあり、確定検査が必要だ」と説明する。
 新診断の導入を控え、妊婦らの思いはさまざまだ。
 4月に出産予定の東京都目黒区の40代主婦は「自分の妊娠判明時にこの検査があれば受けていた」と話す。この主婦は昨年11月、母体血清マーカー検査を 受けた。その結果、ダウン症の確率は主婦の年齢を考慮しても高いものではなかったが「検査をきっかけに夫と『子供に障害があったらどうするか』と真剣に話 し合った」と振り返る。
 別の妊婦は「(障害のある子を)産もうと決めた妊婦へのケアがまだまだ不十分ではないか」と戸惑う。
 中絶には妊婦の負担も大きい。出生前診断について詳しい立命館大先端総合学術研究科の立岩真也教授は「障害の有無で出産、中絶の選択を迷うかもしれない と思うなら、検査を受けるべきでない」と指摘する。日産婦は、新診断について、検査対象を高齢妊娠や染色体異常の子供の妊娠歴がある妊婦などに限るとする 実施指針を決めている。
 阪大病院の場合、検査希望者に対し、新診断や染色体異常について丁寧な説明を行うだけでなく、1週間の再考期間も設ける。陽性の場合はその後も診察を継続しケアを続ける方針だ。
 金川助教は「診断は赤ちゃんの命に関わる問題。受ける前にしっかり考えてほしい」と話している。

【用語解説】新型出生前診断

 妊娠10週以降の妊婦の血液を採取し、血液中の胎児のDNA情報から胎児のダウン症など3種類の染色体異常を調べる検査。自己負担の費用は約21万円 で、従来の出生前診断よりも早い妊娠10週から検査できる。従来診断より精度が高く、陰性の的中率は99%。ただし陽性の場合は年齢などの条件によって確 率が異なるため、羊水検査などが別途必要となる。日本産科婦人科学会は今月、検査対象を高齢出産などに限定するとした指針を発表した。
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最終更新:3月30日(土)15時29分5」(全文)

 ※私がお送りしたコメントと若干?ニュアンスがことなります。→「コメント」

◆2013/05/10「新型出生前診断、1か月で441人…陽性は9人」
読売新聞 2013年05月10日
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20130510-OYT1T01201.htm

妊婦の採血だけで胎児に3種類の染色体の病気があるかどうかが分かる新型出生前診断を、4月の導入開始から1か月間で441人の妊婦が受けていたことが分かった。
 札幌市で開かれている日本産科婦人科学会で10日、報告された。想定を上回る需要に、希望する妊婦が近くで検査を受けられない状況も起きている。
 実施施設の医師らで作る共同研究組織「NIPTコンソーシアム」が全国15の実施医療機関の実績調査をしたところ、研究として始まった4月から1か月間で検査を受けたのは、30歳から47歳の441人。検査を受けた理由は、「高齢妊娠」が91%と最も多かった。
 結果が判明した257人中、染色体の病気が疑われる「陽性」と判定されたのは9人で、「ダウン症」が6人、「18トリソミー」が3人。「13トリソミー」や判定保留はなかった。
(2013年5月10日23時24分 読売新聞)

◆2013/04/13「高齢妊娠「安心欲しい」=新出生前診断、各地で始まる」
時事通信社 2013年04月13日
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201304/2013041300059

妊婦の血液から胎児の染色体異常を調べる新型出生前診断が、今月から始まった。各地の病院では高齢妊娠を理由に検査を受ける例が多い。年齢が上がれば異常の可能性が少しずつ高まるためで、病院を訪れた女性らは「安心が欲しい」と切実な思いを口にした。検査結果は2週間後に知らされる。  
埼玉県に住む主婦(43)は10日、昭和大病院(東京都品川区)でカウンセリングと採血を受けた。友人が出産後に赤ちゃんの染色体異常が分かり、不安が募った。  
認定遺伝カウンセラーの四元淳子さんは、穏やかな声で検査の仕組みを説明した。検査対象のダウン症について「個人差が大きく、活躍している人もいる」と語ると、女性は「そうですよね」と緊張した表情を緩めた。  
検査を受けたのは、安心を得たいから。染色体異常が分かったらどうするか、答えは出ていない。「病院の考えを押し付けられるのではなく、自分で決めるのだと感じた。ずっと気に掛かっていたが、一歩進むことができて少し安心した」と病院を後にした。  
愛知県に住む医療事務の女性(35)は、会社員の夫(34)と8日、名古屋市立大病院(名古屋市)を訪れた。羊水検査を受けるつもりだったが、体への負担が大きく流産の危険性があるため新型診断に切り替えた。  
超音波検査で目にした小さなわが子。障害が分かったとしても中絶にためらいがある女性は、「無理をする必要はない」と考えた夫と口論もした。  
「年齢を考えれば、中絶したらもう子どもを持てなくなるかもしれない。それなら産みたいと思った」と女性。夫は「『やれる』としっかりした言葉があり、気持ちが変わった」と女性を見やった。  
四元さんは「高齢妊娠を理由に検査を受ける例が最も多い。ほとんどの人が安心を求めているが、大事な決断を迫られる場合もあると自覚を持ってもらうようにしている」と話した。(2013/04/13-05:33)

◆2013/04/01「新型出生前診断始まる…認定15施設を公表に」
 読売新聞 2013年04月01日
 http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20130401-OYT1T01191.htm?from=ylist

 妊婦の採血で胎児の3種類の染色体の病気が高い精度でわかる新型出生前診断について、日本医学会は1日、国立成育医療研究センター(東京)など15の認定施設を公表した。
 準備の整った施設から臨床研究として順次、開始される。検査の意味を十分理解しないままの人工妊娠中絶を防ぐため、染色体の病気や検査の内容を説明する遺伝カウンセリング体制の充実した施設に限定して実施される。
 対象は、超音波検査などで染色体の病気が疑われた場合や高齢妊娠などの妊婦。費用は約20万円かかる。
 認定施設の一つ、昭和大(同)では同日、染色体の病気を持つ子どもを妊娠したことのある妊婦や高齢の妊婦など5人が、検査前の遺伝カウンセリングを受けた。その結果、全員が検査を希望し、採血を行った。
(2013年4月1日22時18分 読売新聞)

◆2013/03/26「社説 新出生前診断/指針を踏まえ実施は慎重に」
河北新報 2013年03月26日
http://www.kahoku.co.jp/shasetsu/2013/03/20130327s01.htm

 妊婦から採取した血液で、ダウン症など3種類の染色体異常が分かる新しい出生前診断「母体血胎児染色体検査」について、日本産科婦人科学会は先日の理事会で実施指針を決定した。これを受け、検査は4月に始まる見通しとなった。
 実施指針は、「生命の選別」という倫理上の問題を内包した出生前診断の安易な普及に一定の懸念を表明。その半面、指針案の段階で「35歳以上」としていた検査対象の年齢制限を削除して「高齢妊娠」とするなど、条件を緩めた側面もある。
 妊婦が十分な認識なしに検査が行われたり、結果を確定的なものと誤解したりする可能性も否定できず、十分なカウンセリングのできる施設で限定的に行われるべきだとした。
 実施医療機関には、臨床遺伝専門医の資格を持つ産婦人科医、または小児科医の常時勤務を求めるなど、指針は体制にも具体的に踏み込んでいる。
 新たな出生前診断は99%の精度で、ダウン症かどうかを判別できる。正確に診断できる羊水検査は流産の危険をわずかながら伴うし、胎児の染色体異常の確率を調べる血清マーカーは精度に問題がある。
 精度面でも母体への負担という面でも、従来の欠点を補う方法であるのは確かではある。
 1年間に生まれる赤ちゃんは100万人余り。親の気持ちになってみれば赤ちゃんの状態を知りたいと思うのは自然な気持ちであり、そこに診断法が広がる素地がある。
 染色体異常の赤ちゃんの出生率は、母親の年齢とともに上がるとされる。母親の4人に1人が35歳以上という時代。晩婚化が進む社会情勢の中で、実施する医療機関が増えれば受診希望者も増加することは容易に想像できる。
 だが、予想にたがわず、先行した欧米では、検査結果から中絶を選択する妊婦も多いという。倫理面での問題は世界的に議論の対象となっている。
 今回の指針は生命倫理を置き去りにして、診断が安易に普及することに歯止めをかける学会や世論を背景に策定が進められた。取りまとめに当たっては、関係団体や一般からの意見も反映する手続きも踏んだ。
 出生前診断をめぐっては、これまでも議論を呼んだことがある。母体血清マーカー検査の普及を受け、1999年、当時の厚生省は「障害のある胎児 の出生を排除し、障害者の生きる権利と命の尊重の否定につながる危険がある」として、出生前診断には慎重な立場を示した経緯がある。
 子どもを望む夫婦の重い「選択」は一定程度尊重されるべきだろう。一方で、生きる権利と多様な個性や社会を認める観点から考えれば、「選別」を促しかねない新たな診断に危惧を覚えるのも確かであり、技術の進歩に比して国民の議論が立ち遅れていることも気に掛かる。
 新たな診断法は、限定的な範囲での慎重な実施にとどめるべきではないだろうか。

◆2013/03/21「新型出生前診断、ダウン症協会が日産婦に要望書」
読売新聞 2013年03月21日
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20130321-OYT1T00994.htm

 妊婦の採血で3種類の染色体の病気が高い精度でわかる新型出生前診断について、日本ダウン症協会は21日、日本産科婦人科学会(日産婦)などに要望書を提出したと発表した。  要望書では〈1〉胎児がダウン症と診断された妊婦と家族を支援する「ピアカウンセリング」の実施〈2〉ダウン症の人の実生活を知ってもらうために、産婦人科医療に携わる医師や看護師、助産師向けのセミナーの企画・実施――の2点を求めた。
 日産婦は9日、新型検査について運用指針を発表。検査は日本医学会が認定・登録した施設に限定され、来月にも始まる見通し。

要望書本文(日本ダウン症協会ホームページ内)
http://www.jdss.or.jp/info/201303/youbou0320.pdf


◆2013/03/20 「「世界ダウン症の日」でイベント=新出生前診断「命の選別悲しい」―東京」
 時事通信社 2013年03月20日
http://news.livedoor.com/article/detail/7517297/

 国連が定めた「世界ダウン症の日」を21日に控え、日本ダウン症協会は20日、ダウン症の人が普通に生活している姿を知ってほしいと、子どもたちがダンスや歌を披露するイベントを東京都豊島区で開いた。
 イベントでは、ダウン症の人で初めて大学を卒業した鹿児島県の岩元綾さん(39)があいさつし、胎児の染色体異常を調べる新型出生前診断が4月から導入されることについて、「今生きている人の否定につながり、悲しみを感じる。生まれない方がいい命などない」と訴えた。
 他に仕事を持つ20〜30代の男女3人が壇上に上がり、「自分で稼いだお金で、自分で計算しながら食事に行っている」「将来はかわいい彼女を見つけたい」と暮らしぶりや夢を語った。

◆2013/03/19 「社説 出生前診断 なお必要な幅広い議論」
 北海道新聞 2013年03月19日 社説
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/450371.html

 妊婦の血液検査だけで、胎児のダウン症など3種類の染色体異常が高い精度でわかる新型出生前診断が4月にも始まる。
 日本産科婦人科学会が診断の運用指針を決め、北大病院など全国約20施設が、臨床研究として実施する予定だ。
 出生前診断には羊水検査などさまざまな方法があるが、今回の検査は妊婦の体への負担が軽いうえ、妊娠の早い段階で結果がわかる。多くの人が受診を希望する可能性がある。
 ただ、簡便さだけで診断の目的や限界などが十分に理解されないまま進められると、「命の選別」の手段になりかねない。慎重に扱うのは当然である。
 指針は、実施施設に臨床遺伝専門医の資格を持つ産婦人科医などの常勤や遺伝カウンセリングの実施を求めた。対象も、高齢妊娠や染色体異常の子どもの妊娠歴がある人などに限定した。
 ずさんで営利目的の検査が横行しないよう条件を厳しくするのは言うまでもない。学会は医療機関に指針の徹底を図るよう指導すべきだ。
 注意しなければならないのは陽性と出た場合、的中率が低いため、羊水検査を受ける必要があることだ。
 そこで異常が見つかれば、家族が産むかどうかの重い判断を迫られる。悔いのない選択ができる環境を整えなければならない。
 何よりも大切なのは、医療者側が家族の悩みや思いに寄り添う姿勢だ。検査の目的や安全性だけでなく、ダウン症の子どもたちの実態や社会の支援体制など、きめ細かな判断材料を提供することが肝心だ。
 医療機関によってばらつきが出ないよう、大事な情報を学会として標準化することも欠かせない。
 こうしたカウンセリングを担う臨床遺伝専門医の資格を持つ産婦人科医は、約150人(道内3人)にすぎない。これでは体制が不十分だ。学会は大学、病院とも連携し、人材養成を急ぐべきだ。
 診断を受けた家族がその後どんな選択をしても、家族や生まれてくる子どもが差別や偏見にさらされるようなことがあってはならない。
 親の悩みに応じる長期的な相談体制のほか、障害児の教育、療育機関の拡充など、政府や自治体は支援の一層の充実が求められる。
 子どもの先天異常は染色体異常だけではない。今後、技術が進めばさまざまな検査で将来の病気までわかるようになるかもしれない。
 出生前診断をどこまで認めるのか。遺伝情報を誰が、どう管理するのか。倫理面の検討も学会任せにせず、厚生労働省や障害者団体も加わり、幅広く論議したい。

◆2013/03/17 「社説 出生前診断 命にどう向き合うのか」
 中国新聞 2013年03月17日 社説
 http://www.chugoku-np.co.jp/Syasetu/Sh201303170069.html

 妊婦の血液から胎児の染色体異常を調べる新しい手法の出生前診断について、日本産科婦人科学会が実施指針をまとめた。来月にも一部の医療機関で実際に診断が始まる。
 検査を受けられる妊婦を限定し、十分な体制を整えた医療機関だけで実施しようという内容である。無秩序な拡大に歯止めをかけるのがねらいだ。
 ただ指針に強制力はない。羊水検査などに比べて母親や胎児の負担や危険も少なく、検査希望者は増えるだろう。それが結果的に、「命の選別」をもたらすとの懸念が広がっている。
 命にどう向き合うか、子を授かった親に限らず、社会全体が問われているといえよう。
 この検査は米国の民間会社が開発した。妊娠初期の女性の血液を採れば、胎児の先天的な障害のうちダウン症などが高い確率で分かるという。
 今回の指針は、検査がこうした障害児の排除や生命の否定につながりかねないと指摘し、十分なカウンセリングのできる施設を登録・認定した上で限定的に実施すべきだとした。
 具体的には臨床遺伝専門医の資格を持つ産婦人科または小児科医師の常勤を求めている。
 さらに、高齢妊娠やほかの検査で染色体異常の可能性が指摘された妊婦らに対象を限定。当面は一般医療ではなく、「臨床研究」として行うとした。
 一定の目安となろう。とはいえ、これで倫理上の問題が全て解決するわけではない。
 胎児の状態を知ろうとする親の気持ちはもっともだ。勧められなくても診断を受けようと考える女性は多いだろう。受診を制限するものだとして指針に反発する向きもあるようだ。
一方、検査そのものに反対する声が根強くある。人工妊娠中絶につながりかねないからだ。
 母体保護法は胎児の障害を理由にした中絶を認めていない。ところが「経済的理由」「母体の健康」などの容認規定が拡大解釈されている現実がある。医師が介在せずに商業ベースで検査が普及すればなおさら、著しい事態を招くかもしれない。
 技術の進歩により、もっと簡便で確実な検査法も開発されるだろう。学会の自主ルールだけでは早晩、追い付かなくなることも想定しておく必要がある。
 その意味で注目すべきは、田村憲久厚生労働相が、従来の検査方法も含めた出生前診断全般について実態調査に乗り出す意向を明らかにしたことだ。
 国の責任でルール作りをすべきかについては、さまざまな意見があろう。ただ、その点を含めた国民的な議論を起こしていくためにも、調査結果は広く公表してほしい。
 出生前診断は妊婦やそのパートナーに、短い時間のうちに重い決断を迫る。どんな選択をしても後々まで心が揺れ続けるケースが少なくないだろう。今回に限らず、カウンセリング体制の充実は待ったなしである。
 さらに障害があっても産むと決意した女性や家族をどう支えていくか。出産後の息の長いケアが欠かせない。
 社会のありようが問われている。誰もが安心して子どもを産み、育てられるか。万人を等しく受け入れ、共生の精神に満ちた社会となっているのか。国や地域を挙げて考えるべき課題はむしろ、そこなのだろう。」(全文)

◆2013/03/13 「新型出生前診断:検査11病院を公表 4月にも実施」
 毎日新聞 2013年03月13日 東京朝刊
 http://mainichi.jp/select/news/20130313ddm003040038000c.html

 「新型出生前診断に関する研究組織「NIPTコンソーシアム」は12日までに、現段階で検査を実施する準備が整った11病院をウェブサイト(http://www.fetusjapan.jp/nipt)で公表した。実施病院の認定を行う日本医学会の「施設認定・登録部会」は各病院からの申請受け付けを始めており、今後順次審査が始まる予定。
 同コンソーシアムによると、11病院は内部の倫理委員会の承認を得るなど臨床研究を行う準備が整っており週内にも申請を始める。他に同コンソーシアムに は全国の約30病院の産科医や遺伝カウンセラーが参加しており、この中からも申請する病院が出る見通し。準備が整った病院は、公表リストに追加する。審査 を通れば、約20の病院で4月にも検査の実施が可能になる。
 「施設認定・登録部会」の委員は産婦人科医や小児科医、倫理の専門家が務め、9日に示された日本産科婦人科学会の指針に基づき、実施医師の経歴や研究計 画書を審査する。同部会は各病院に対し、妊婦一人一人について▽新型出生前診断の検査結果▽羊水検査などによる確定診断の結果と、それを妊婦にどう説明し たか??などについて、3カ月ごとの報告を義務づけている。【斎藤広子】

 ◇NIPTコンソーシアムが公表した新型出生前診断を実施予定の施設

北海道大病院(札幌市北区)
岩手医大付属病院(盛岡市)
宮城県立こども病院(仙台市青葉区)
新潟大医歯学総合病院(新潟市中央区)
埼玉医大病院(埼玉県毛呂山町)
国立成育医療研究センター(東京都世田谷区)
昭和大病院(東京都品川区)
横浜市立大付属病院(横浜市金沢区)
名古屋市立大病院(名古屋市瑞穂区)
兵庫医大病院(兵庫県西宮市)
長崎大病院(長崎市)
 (※12日現在)」

◆2013/03/12 「社説 出生前診断 もっと深く考えたい」
 東京新聞 2013年3月12日
 http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013031202000138.html

 「妊婦の血液で胎児の染色体異常を調べる新しい出生前診断の実施指針がまとまった。安易に使われないためにルールをどう整えるのか。命の選別という倫理問題も絡むだけに慎重に進めてほしい。
 新型の母体血胎児染色体検査は、ダウン症などの先天的な障害を調べるものだ。
 これまでも出生前診断法はあったが、新型の検査法は精度が極めて高い。しかも血液検査という簡単な方法で診断ができるため、医療現場で安易に広がり妊娠中絶が増えるのではないか、と懸念されている。
 そうなる前に検査ルールの整備を目的に日本産科婦人科学会は実施するための指針を公表した。
 対象を高齢妊娠や染色体の疾患などが疑われる人、染色体異常の妊娠歴がある人などに限定した。
 検査で何が分かるのか、検査結果の受け止め方、障害を受け入れようとする親の支援など十分なカウンセリングが欠かせないとして、実施する施設には産婦人科医と小児科医の常勤を求めた。うち一人は臨床遺伝専門医の資格を持つことが要件とした。
 実施施設の認定・登録制度も設けて監視する。準備中の施設は臨床研究として四月にも始める。
 検査は、千人に五人の頻度で生まれる一部の染色体異常のみが対象である。先天性の障害や疾患が限定的にしか分からない。しかも確定的な診断ではない。
 検査を十分に理解してもらうにはカウンセリングが不可欠だが、臨床遺伝専門医は約千人、専門のカウンセラーは百四十人と少ない。対象者や施設を限定した慎重さは当然だ。人材育成とともに症例を積み、検査体制を整えてもらいたい。
 指針には拘束力はないが、厚生労働省は医療現場に指針の尊重を求めた。生命の否定につながりかねないだけに、全ての関係者が守るべきものだろう。
 一方で、検査は妊婦の権利でもある。新型検査の普及も止められない。今後、技術が進めば出産前に異常が分かる障害や疾患の範囲も広がるだろう。
 以前の検査は治療につなげられたケースもあったが、今は治療法のない異常が分かってしまう。技術進歩で命の選別という倫理的な問題に直面している。
 臓器移植での脳死は、国会でも議論された。何のために出生前診断を行うのか、妊婦や医療関係者だけの問題ではない。ここは立ち止まって、深く考えたい。」(全文)

◆2013/03/12 「出生前診断の実態調査へ 厚労相、羊水検査など」 日本経済新聞 2013/3/12 11:32
 http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG12019_S3A310C1CR0000/

 「田村憲久厚生労働相は12日の閣議後の記者会見で、日本産科婦人科学会がまとめた妊婦の採血検査による新しい出生前診断の指針について「すべての関係 者が指針を尊重して対応してほしい」と述べた。その上で、羊水検査なども含めた出生前診断全般の実態調査を4月以降に始め、遺伝カウンセリング体制の充実 を検討していく考えを明らかにした。
 国が出生前診断の実態調査に乗り出すのは初めて。
 新出生前診断は妊婦の血液検査でダウン症など胎児の3種類の染色体異常を調べる。指針では同学会などでつくる委員会が条件を満たしているか実施施設を審査、認定する仕組みで、複数の医療機関が臨床研究を検討している。4月から実際の診断が始まる見通しだ。
 実態調査は研究班を立ち上げ、医療機関などを対象に実施。検査件数や遺伝カウンセリング体制などを調べ、1年以内をめどにまとめる。
 新出生前診断は採血だけで検査ができる半面、命の選別につながるとの懸念もある。田村厚労相は出生前診断の法制化について「難しい」との認識を示した。」(全文)

◆2013/03/10 「新出生前診断 来月にも 高齢妊娠が対象」
 東京新聞2013年3月10日 朝刊
 http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013031002000138.html

 「日本産科婦人科学会(日産婦)は九日、妊婦の血液で胎児のダウン症など三種類の染色体異常を高い精度で調べる新しい出生前診断「母体血胎児染色体検査」の実施指針を理事会で決定した。日本医学会に設置した認定・登録機関で施設の審査を今月中にも終え、四月に始まる見通しという。
 国立成育医療研究センターなど約二十施設が既に施設内の倫理委員会の承認を得て臨床研究として始める準備を進めている。安易に広がれば命の選別につながる倫理上の問題が指摘される検査技術が生殖医療の現場に登場することになった。
 指針では、検査対象を高齢妊娠としたが、指針案にあった「三十五歳以上」との年齢表現を削除した。学会は「三十五歳が高齢妊娠の目安」とし条件緩和が目的ではないとした。国立成育医療研究センターの臨床研究に参加する施設の規定では三十五歳以上に限っている。
 指針では、簡便さを理由に広く普及すると、ダウン症などの出生の排除や生命の否定につながりかねないと指摘。十分なカウンセリングのできる施設で限定的 に行われるにとどめるべきだとして、臨床遺伝専門医の資格を持つ産婦人科医または小児科医の常時勤務などを求めた。妊婦の対象は高齢妊娠のほか、染色体異 常の子どもの妊娠歴があることなどとした。
 施設の認定・登録は臨床研究だけを審査対象とする。指針検討委員会の久具宏司(くぐこうじ)委員長は「一般臨床に導入する場合は、指針の内容を見直す必 要がある」とした。日産婦は産婦人科以外で検査が実施される可能性があるとして、日本医師会や日本医学会などと共同で指針の尊重を求める声明を出した。
 日産婦は昨年十二月、対象妊婦や実施施設の条件などを定めた指針案を公表して、広く意見を募っていた。新出生前診断はダウン症のほか、呼吸障害などをもたらす18トリソミー、13トリソミーが検査対象。」(全文、記事には図あり)

◆2013/01/22 「新型出生前診断、条件緩和求める…産婦人科医会」
 YOMIURI ONLINE(読売新聞)  http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130122-00001078-yom-sci×

 「妊婦の血液で3種類の胎児の染色体異常がわかる新型出生前診断の指針案について、日本産婦人科医会(木下勝之会長)は、実施条件の緩和を求める要望書 をまとめた。 日本産科婦人科学会の意見公募(パブリックコメント)に対し、締め切り日の21日に提出した。 指針案は、妊婦に適切な情報提供を行う遺伝カウンセリングを重視し、産科医と小児科医が常勤し、どちらかが遺伝の専門資格を持つなどの厳しい実施条件を盛 り込んだ。これに対し、要望書は、検査を希望する多くの妊婦に対応するために、「一般診療所や大小の病院も加われる条件にするのが... > このページを見る」

◆2013/01/21 日本産婦人科学会「母体血を用いた出生前遺伝学的検査に関する検討委員会「母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査に関する指針(案)」への検討要望事項」
 www.jaog.or.jp/news/2013/01/21/document/検討要望事項.pdf

◆2013/01 日産婦指針案パブリックコメントへの意見書 DPI日本会議

私たちDPI(障害者インターナショナル)日本会議は
国連が認めた国際組織の一員として、1986年に発足をしました。

現在、身体障害、知的障害、精神障害、難病等、
障害種別を超えた、全国88団体が加盟した、
特定非営利活動法人として活動を続けてきています。
結成以来、四半世紀以上に渡って、障害者の自立と社会参加、
権利保障を確立するための活動を進めてきています。

近年は2006年に国連で採択された障害者権利条約の批准に向けて、
内閣府に設置された障がい者制度改革推進会議やそれを継承した
障害者政策委員会などを通じて、さらにその取組みを強化してきました。
とりわけ、全ての障害者の地域での自立した生活の権利の実現を
目指して活動を進めています。

障害があっても他の人々と同等の、当たり前の暮らしが出来ること、
どんなに重い障害があっても、
選別されることなくその生命が尊重され、必要な医療や介護を受けながら、
その人らしい尊厳ある生を保障される社会こそが、真に求められる社会です。
しかしながら、これまでの歴史上、障害者は、地域社会から排除・分離され、
生存そのものを脅かされ、厳しい差別と偏見、
排除の中で過酷な生活を強いられてきました。
特に、かつて「不幸な子どもの生まれない県民運動」や
「優生保護法改悪」など「障害の予防」を掲げた動きの中で、
「障害児が生まれてくること自体が不幸」であるかのような、
偏見・差別意識が強められてきた事実は、決して忘れられてはなりません。
残念ながら、21世紀の今日においてさえ、
障害者の人権が確立したとは到底言える状況ではありません。
また、これらの歴史に対する検証・総括も十分なされているとは言えません。

そうした中、今回、貴学会が、特定の染色体異常を
診断の対象とする出生前遺伝学的検査に関して、
指針を作成し、実施を進めようとしていることは、
再び、障害児・者に対する偏見・差別を強めかねないものとして、強く反対します。

周知の通り、2006年に国連で採択された障害者権利条約では、
障害を社会との関係でとらえる「社会モデル」を採用し、
第3条一般原則では「差異の尊重、並びに人間の多様性の一環及び
人類の一員としての障害のある人の受容」
(川島聡=長瀬修仮訳、2008年5月30日付)が規定されています。
そして、この障害者権利条約の批准に向けた
障害者制度改革が現在進められているところですが、
その中でも、「障害の予防」「出生前診断」等と
優生思想の関係が大きな問題として取り上げられてきました。

2011年に改正された障害者基本法では、
それまでの「第三章 障害の予防に関する基本的施策」が
「第三章障害の原因となる傷病の予防に関する基本的施策」に改められました。
すなわち、障害者の出生や存在そのものに対して
否定的なイメージを与える「障害の予防」が削除され、
「障害の原因となる傷病の予防」に書き換えられたのです。

また、内閣府に置かれている障害者政策委員会は、昨年12月に、
「○新障害者基本計画に対する意見」をとりまとめました。
その意見では、「尊厳死や出生前診断の議論では重度障害者が
切り捨てられないよう配慮するべきである」
「○障害の原因の除去や早期発見・早期治療は大切だが、
それだけを強調すると優生思想につながる懸念がある」との指摘がなされた上で、
<新基本計画に盛り込むべき事項>として、
【◎出生前診断等が障害者の生存に対する否定的な見方や施策につながらないようにすること。】
との提言が盛り込まれました。
この意見書に基づいて策定される新障害者基本計画は、2013年度から始まります。

以上のように、これまでの優生思想とそれに基づく歴史に対する反省、
並びに、国連・障害者権利条約(社会モデルや差異の尊重と障害者の受け入れ)、
障害者制度改革の動きなどの点から、出生前診断に反対するとともに、
貴学会に対して、これらの動向を最大限尊重した取り組みを求めるものです。

▼意見書(PDF版)はこちら
http://dpi.cocolog-nifty.com/website/work/20130121dpicomment.pdf


UP:20150117 REV:
出生前診断  ◇出生前診断:歴史・年表  ◇産・生  ◇身体の現代:歴史生命倫理 
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