フロー体験とは、極度にハマッテイル体験、没入している体験のことだ。外部からなんの報酬を得なくても、まったく気にならない。やっていることそのものが報酬なので、内発的に動機づけられている状態でもある。
チクセントミハイによると、フロー体験とは、ひとつの活動に深く没入して、他のなにものも問題とならなくなる状態。その経験それ自体が楽しいので、純粋にそれをするということのために多くの時間や労力を費やすことができる状態。
さて、チクセントミハイによって記述されたフロー経験は、新しい人的資源管理にとっても示唆に富む。
フロー経験とは、自己が行為の場を高い中注力をもって統制し、効果的に環境に働きかけているときに感じる「自己効力感をともなう楽しい経験」のこと。そしてフロー体験とは、外発的な利益とはまったく無縁の、それをすること自体が報酬となる自己目的的(autotelic)活動である。
この自己目的的活動により積極的にいそしみ、内発的な動機を豊かに持っている人にはいくつかの特徴があるとされる。
・自己目的的パーソナリティとは、結果として生じる外発的な目標に達するより、むしろその活動プロセスを楽しむ、人生を楽しむ傾向にある人。
・自己目的的パーソナリティを持つ人は、新しい挑戦をこよなく愛し、自分の能力をフル活用することに楽しみを感じる。
・自己目的的パーソナリティを持つ人は、明確な将来目標を持ち、他者から評価を受け、また深い情緒的体験を有する。また、幸福感が強い。
細かなマネジメントの現場では知的アウトプットが大きな会議やオモシロイ雑談がフロー経験を提供してくれる。本の原稿を書いているときはフロー体験の真っ只中にいる。講演やプレゼンテーションしているときも、けっこうフロー状態だ。大まかなところでは、起業や事業化などのトータルなビヘイビアも、アップダウンはありながらもフロー体験をもたらしてくれるものだろう。プログラミングの最中にフローを体感する人もいれば、流れるような経理処理業務の最中にフローを感得する人もいるだろう。
いずれにせよ、結果のみを追求するスタイルではフロー体験は疎外されてしまう。近年のダメな成果主義(プロセスをとらえずにたんなる結果主義だけ求める)人事のゆきづまりは、フロー体験を仕事から疎外する方向に誘導してきたことに一因がある。
ともあれ、人生の時間の1/3以上を占める仕事のなかで、より多くのフロー体験を得るためには工夫や仕掛けが必要となる。フロー体験の強弱は、仕事のオモシロさを大きく左右するし、生産性にも影響を与えることとなる。いろいろなビジネスパースン、研究者、プロフェッショナルに接していて分かることは、仕事ができる人のなかには、仕事のなかにフロー体験を作り上げている人が圧倒的に多いということだ。
プライベート(私秘的)な時間においてもフロー体験を確保しておくと、社会的文脈のなかの仕事でのフロー経験に接続されることが多いと思う。
ただし、「個人的」な時間はたくさんあっても、その時間が豊穣な「私秘的」な時間になっていないと、真のプライベートな時間にはならない。けっきょくなにも生み出さない空虚な時間になってしまう。
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楽しみの社会学 単行本 – 2001/1/1
楽しむということ改題新装版
- 本の長さ326ページ
- 言語日本語
- 出版社新思索社
- 発売日2001/1/1
- ISBN-104783511853
- ISBN-13978-4783511854
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
金銭、権力、名声を犠牲にしても、楽しみの追求に生活を賭ける人々がいる。内発的報酬獲得への動機づけという視点から、楽しさの基本構造を示すフロー・モデルを作成。91年刊「楽しむということ」の改題新装版。
登録情報
- 出版社 : 新思索社 (2001/1/1)
- 発売日 : 2001/1/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 326ページ
- ISBN-10 : 4783511853
- ISBN-13 : 978-4783511854
- Amazon 売れ筋ランキング: - 273,872位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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著者について
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- 2009年2月16日に日本でレビュー済みAmazonで購入
- 2023年6月1日に日本でレビュー済み仕事以外にしかモチベーションの源泉を求められない人、人事部は必読です。
人が最も多くの時間を割いている仕事でモチベーションが得られなければ、
何をやっても無意味です。
一人ひとりが、
自らの嗜好・志向・強みを十分に理解し、
それらに基づいて仕事を選び、
仕事を通じてそれらを研き、
何度も限界を超えることがモチベーションにつながります。
さらに、一人ひとりが、
これらのことに対して他者を支援していくことも重要です。
フロー理論はこれらのことを教えてくれます。
なお、フロー理論の集大成は著者の「フロー体験 喜びの現象学」に収められています。
また、更なる詳細については「フロー理論の展開」をお薦めします。
2008年読了
- 2022年10月16日に日本でレビュー済み私達人間の多くは、戦争▪飢饉▪災害に苦しんでいる。しかし、この世に生まれたのは、お経に「衆生所遊楽」と説かれているように、本来、楽しむ為、遊ぶ為だと思う。又、そういう世の中を目指すべきだと思う。
著者は、「外発的動機づけ」と「内発的動機づけ」を区分する。前者は、仕事や勉強等、他者からの強制力に基礎づけられての動機であるのに対して、後者は自分自身の内面的欲求に基礎づけられた動機である。そして、後者に基づく活動は、人間に真の喜びと楽しさをもたらす。そして、この没我の状態を「フロー」と名付けている。
学問的な小難しいことはさておき、子供は「フロー」の状態を最初から会得している。もしかしたら、小学生が荒れて学級崩壊するのは、子供から「フロー」を奪っているからではないだろうか?
- 2016年6月30日に日本でレビュー済み内発的動機 自己目的的活動 を ロッククライミング チェス 手術 などから 調査
フロー
- 2009年5月8日に日本でレビュー済み遊びやあるいは困難な仕事は、たとえ外的要因(金銭や名誉)が伴わなくても、時間を忘れるほど没頭して楽しい。それがフロー体験である。本書は、チェス、ロック・クライミング、ロック・ダンス、外科手術を行う者を被験者としてデータを集め、フロー体験とはどのようなものなのかを研究した成果である。
フロー状態に入るためには、自分の技能と実施する行為の困難さが釣り合っていて、その中で自我(エゴ)を忘れ、自己目的的に行為を実施することが必要である。子供が遊びに没頭するのは、この条件が簡単に満たされるに他ならない。大人になってしまうと、仕事は苦痛・遊びは楽しいと考える場合が多い。
そうではない。フロー状態に入れるかどうかで楽しさを区別すべきである。フロー状態に有り続けることが最も幸福で、能力が発揮でき、さらに能力を伸ばせることなのだ。即ち、遊び、教育、仕事等すべてフロー状態にあることが最も有益なのだ。
- 2007年1月14日に日本でレビュー済み楽しみを限界に達するとフローという経験を生むことになる。
フローとは、内発的報酬を目指す。
そして、フローの普及が社会を発展させる主要因になり得るという。
仕事に、対して「外発的報酬」だけ求めていては、いずれ「資源」は枯渇してしまう。
仕事に対しても、「内発的報酬」を求め、フローを起こすことが出来れば、よりよく世界は変わる。
フローの現象そのものと言えるのが「子ども」だ。
学童での経験を振り返ると、こう思ったことがある。
「生きているだけで楽しそうだ」
と。そのポイントは、無限の「好奇心」ではないだろうか。
「子ども」から生まれる哲学的疑問も良質だ。
難しいが、価値ある理論を教わった。