著者はサラリーマンから経営学者に転進した人。
経営学を学び、また自分もうつ病の患者である立場から、職場のメンタルヘルスについて興味を持って調べている私にしたら、これはとても重要な先行研究だ。職場のメンタルヘルスについて研究している人は産業医や精神科医ばかりで、経営学者でこういうことをやっている人を見かけたのは初めてだ。で、この本から、経営学の切り口からでも研究できる可能性を感じて勇気づけられた。
過労死、過労自殺という形で、死にいたるまで働く人は、強制的に働かされているのか?それとも自発的な意思によるものなのか?
過労死・過労自殺者の多くは、頼まれるといやと言えず、職場の仲間や顧客、取引先への責任をほとんど無限なものとして背負い込んでしまう「メランコリー親和型気質」(これ、私もあてはまる)である。
一方、彼らが働く日本の職場では、アメリカの職場のような明確な職務分担がなくて、わざとあいまいな分担しか定めないことでメンバーの積極的な協業を促そうとしている。
すると、メランコリー親和型気質の人は職場のルールに守られることなく、どこまでも仕事を抱え込んでつぶれていく・・・
対策としては、個々人が、もっと仕事に対して限定的にかかわること、私的な空間や家庭をかえりみよう、と結ばれている。
メランコリー親和型気質、というのは精神医学の言葉。いっぽう、「日本の職場」を分析した部分では、経営学者らしく、職場についての先行研究を豊富に引用して分析してあった。一見関係なさそうな精神医学と経営学を融合して、本を一冊つむぎだすことができるんだな!と、かなり感心。
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過労死・過労自殺の心理と職場 (青弓社ライブラリー 27) 単行本 – 2003/3/13
大野 正和
(著)
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- 本の長さ200ページ
- 言語日本語
- 出版社青弓社
- 発売日2003/3/13
- ISBN-104787232118
- ISBN-13978-4787232113
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
なぜ、死にいたるまで働くのか。強制によるものなのか、自発的な意志に従った結果なのか。「心理」と「職場」の相互関連を読み解き、自己と他者との能動的な関係構築を提言する。
登録情報
- 出版社 : 青弓社 (2003/3/13)
- 発売日 : 2003/3/13
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 200ページ
- ISBN-10 : 4787232118
- ISBN-13 : 978-4787232113
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,145,122位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 222位総務・人事・労務管理の労働問題
- - 1,400位労働問題社会学
- - 21,962位社会学概論
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著者について
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上位レビュー、対象国: 日本
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- 2006年7月28日に日本でレビュー済みこの本の長所
著者独自の視点が出せているところ。過労死にいたるのは長時間労働が原因というよりも(著者は否定的だが、当然過労死の原因の一つだ)、日本人が持っており、それが会社でも重宝されたメランコリー親和性の性格(まじめ、几帳面など)を持つ人が、労働時間が二極化した1980年代から会社での仕事を一手に請け込んだ末に追い込まれ、その結果自分を苛んで死にいたる場合が多いと言う視点には考えさせられるものがあった。
この本の短所
(1)せっかくの独自の視点も、過労死などの解決には何にも役立たないところ。(ア)著者の主張どおりならば企業責任の追及にブレーキがかかる恐れもある(著者は否定しているが、やっぱり自己責任だ)、(イ)著者流の「自分」になるよりも、まずは西洋的ミーイズムに陥っても「無邪気な個人主義」のほうがなりやすいのではないか、などの疑問を持った。
(2)分析が少しアバウト。(ア)1980年代になぜ労働時間が二極化したのかが明らかではない、(イ)メランコリー親和性の性格を持つ背景には社員教育の問題もあるのではないか(川人博『過労自殺』、ウォルフレン『日本/権力構造の謎』などを参照)、(ウ)終身雇用は日本だけか(アメリカでも行われていた。『「これだ!」と思える仕事に出会うには』などを参照)、など疑問の残る分析が多かった。
結論―著書星4つ、短所星2つ、全体として星3つ。
- 2004年3月22日に日本でレビュー済み多くの人が長時間労働をしていても,どうして過労死・過労自殺にいたる人とそうでない人がいるのか,という点に着目して考察がなされる.
確かに,労災を認定する際には,客観的な指標として「時間」は絶対的で使いやすいし,過労死が起こる際には必ず長時間労働が起こっているのだから,長時間労働は過労の必要条件ではある.が十分条件ではない.
本書ではその前提と実際の過労の事例の分析から,まじめで責任感が強く他者に気を遣う「メランコリー親和型性格」の人が,まわりの人からの信頼を受けて非常に重い責任を感じ,一人で大量の仕事を背負って孤独に超長時間労働に陥る時にこそ過労死・過労自殺が生じている,と指摘する.
この構造には日本型の「曖昧な職務分掌」が深く関係していて,「自分の職務」が不明確であるがゆえにまじめで責任感が強い人ほど大量の仕事を背負っていくことになるという循環が見られる.
この構造が過労の全てではないとは思いますが,実際の過労死・過労自殺事件の構造でこのようになっているものは非常に多いと思います.このことは,なんとなくはどの論者も感じているようではありますが,本1冊かけて詳細に論じてあり参考になると思いました.