全体にきめ細かに論証されていて読みやすかったです。平面幾何の教科書として優れています。しかしそれ以上によかったのは、II章でヒルベルトの形式主義に対する批判と数学教育が形式主義に迎合して平面幾何教育を捨ててしまったことへの批判が具体的に展開されていることです。
幾何学の対象は点や直線、円といった対象ですが、その意味を考慮しなければ幾何学は論じられないということを小平は議論しています。ヒルベルトはそうした意味抜きで幾何学を作り上げようとしましたが、それに成功してはいないことを小平は指摘しています。
小平が他の本で論じている、直観主義より概念実在論のほうがいいと思うという話については、本書では触れられていませんが、本書にある、図を描けば分かる命題と図を描いただけでは分からない命題を分け、旧制中学の幾何では前者については論証しなかったのに、ヒルベルトの幾何ではそれも論証したという話について考えると参考になることが分かります。
概念実在論に従えば図を描くというのは一種の実験で、どうすれば描けるかを考えている段階で分かっていることよりも、実際に図を描いた段階で分かることのほうが多くなります。三角形の二つの中線が交わるという小平の挙げている図を描けば分かる命題の例はその一つです。実験して初めて分かることがあるということは、数学的概念が人間の作り物ではなく、人間の認識の外部にあって人間が探索して発見するものであるという考え方を支持することになる、というわけです。
ヒルベルトは自分が自律的な論証に専念していると思い込み、論証を規定する概念について研究しているのだということに気付きませんでした。概念を大事にするのは直観主義も概念実在論も同じですが、人間がそれを作れると思った直観主義と、概念は人間の認識から独立にあって、それを探索するのだと主張する概念実在論は違います。(この話、僕はあんまりよく勉強していませんが気になる話です)概念実在論のほうがいいという小平の持論についても本書でちゃんと扱ってほしかったというのが本音ですが、そこまで行かなくても本書は十分すごい本なので、星は5つにしました。
数学好きな中高生や数学の必ずしも得意でない大学生や一般の人、もちろん数学に通じた人も含めて、幅広くいろいろな人に読まれるべき名著だと思います。
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幾何への誘い (岩波現代文庫―学術) (岩波現代文庫 学術 7) 文庫 – 2009/10/14
小平 邦彦
(著)
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フィールズ賞受賞数学者による市民のための幾何入門。平面幾何は定木とコンパスを使って描いた図形の現象を研究する自然科学、つまり「図形の科学」である。平面幾何の厳密な体系をわかりやすく展開し、さらに現代数学からの考察、複素数の平面幾何への応用までをたどる。読み進むうち、いつしか幾何の世界に魅了されていく。上野健爾解説。
- ISBN-104006000073
- ISBN-13978-4006000073
- 出版社岩波書店
- 発売日2009/10/14
- 言語日本語
- 寸法10.5 x 2.2 x 14.8 cm
- 本の長さ228ページ
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- 文庫 : 228ページ
- ISBN-10 : 4006000073
- ISBN-13 : 978-4006000073
- 寸法 : 10.5 x 2.2 x 14.8 cm
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- 2020年4月27日に日本でレビュー済みAmazonで購入
- 2020年1月25日に日本でレビュー済みAmazonで購入幾何学の楽しさを伺うことが出来ます!
近頃、頭脳が硬くなって、得手だった応用数学も敬遠してしまいますが、新聞広告で岩波現代文書の中に、小平邦彦氏の「幾何への誘い」が宣伝されていましたので、Amazon経由で購入してみました。
小平氏は、日本初の数学界のノーベル賞とされる、フィールズ賞の受賞者で日本数学界のレベルを引き上げた功労者でもあります。
文書構成は、第1章 図形の科学と平面幾何 第2章 数学としての平面幾何 第3章 複素数と平面幾何 となっていて、複素函数論へ幾何学展開されているのに驚かされます。
読み頃は、第1章で、三角形の公理定理、平行線の公理、円の公理が分かりやすく記述解説されていて、本書の分量の半分以上を占めていて、読み応えがあります。
円錐曲線を構築したフランスの天才パスカル16才の時に発見した定理、フォイエルバッハの定理については、詳しく記述されていて、興味が尽きません。
ギリシャの哲学者プラトンが、創始した学院の入口には「幾何学を知らざる者は入るべからず」と言う額が掲げられて、論理の訓練として重視されていたと言うのも分かる様な気がして来ます。
複素函数の幾何学表示はドイツの天才ガウス(Gauss)が、創意工夫したされた世界ですが。この章は記述解説も少なく、読み進めるのには難しい様に思われます。
しかし、幾何学の面白さと知識展開での重要さを知る意味では絶好な書物の様でした!
- 2013年7月25日に日本でレビュー済みAmazonで購入フィールズ賞の受賞者です。高い目線で説くのではなく、
やさしく分かり易く説明してくれています。素人にあり
がちな混同にも、思い込みにも温かい眼差して丁寧に説いて
います。図もほんの少しの違い、変化まで示して、数も豊富
です。小平先生は一時期、日本とアメリカの教科書づくり
にも携わりましたが、文部省は初等・中等数学から初等幾何学
を排除してしまいました。
初等幾何学の復活に命をかけた数学者の熱意あふるる良書です。
- 2018年3月31日に日本でレビュー済み本書は、高名な数学者による一般人向けの講義として、たいへん程よい記述となっている。
往々にして、易しすぎたり難しすぎたり、なかなかこうはいかないものだ。
初めのほうを読んで、ひとつ確認したくなったことがあり、書店で中学数学の参考書数冊を調べてみた。
すると予想どおり、三角形の合同条件(三辺相等など)は、証明するまでもない真理という扱いになっている。
実は戦後はずっとそうなのだが、本書によると、戦前は三角形の合同条件は証明すべきことだったという。
そんなことをどうやって証明するのかというと、これが少し意外で、面白い。
まず、公理として、三角形が自由に動かせる、とする。
そして、二つの三角形を重ねると、ぴったり一致する、これが証明だという。
いわば、三角形を、金魚や朝顔のような具体的なものと見ていることになる。
そのことを、著者は、戦前の平面幾何は自然科学であった、と表現し、その復活を提唱している。
理由は、公理主義の厳密な適用を学べるからである、というのが本書の主張である。
入り口は素朴で、展開は厳密であって、すなわちこれがユークリッド幾何学、というものであろう。
いまの中学数学は、いわば単なる図形で、ユークリッド幾何学より、さらに素朴といえる。
つまり著者の主張は、採用されていない。
しかしそれも、発達段階からすれば、それなりに合理的な面もあるのだろうと思う。
それはそれとして、本書は名著である。
- 2010年12月14日に日本でレビュー済みAmazonで購入まったくの初心者を意識して、親切でわかりやすく、しかも情熱をもって易しく説明している。なるほどと思いながら、つかえるところなく読み進められる。初心者に安心して奨められる好著。公理についてもはっきりと提示して学問的裏づけもしっかりしている。ただ欠点とはいい難いが、著者独自の偏見が多少感じられる。ヒルベルトの基礎論にもとずく、他の入門書も併読すれば、よりはば広い観点からの充実した、確実なユークリッド幾何の基礎を学べると思います。
- 2012年12月27日に日本でレビュー済みAmazonで購入ある程度数学好きの人なら、朝電車の中で読むのにちょうどいい感じの入門書。前半は中学生ぐらいの事前知識で楽しめる。後半は少し大変になるけど、公理的構成の平面幾何の面白さが大数学者の愛情とともに感じられる感じです。
- 2012年9月21日に日本でレビュー済み今から50年前、中学の数学の先生が、こういう幾何学は、普通の人は、もう
高校へ行っても大学へ行っても学ぶ機会はありません、といっていたのを
思い出す。
この本は、初等幾何学の主だった定理はだいたい網羅しているように思うのだけど
そのへんよくは知らない。数学に縁のない(それでも私は電気工学は学んだ)私が、
この本に載っているような定理を自分で証明しようとすれば
相当骨が折れる、しかし、人生の栄光の為でなく、子供のような好奇心さえ思い出して
取り組めば、相当面白い本だと思う、
説明は実に丁寧です。
- 2013年8月19日に日本でレビュー済みAmazonで購入序章で、旧制の学校での幾何について触れられているのだが、
これが思ったよりも分かり易くて、普段数学と馴染みの薄い自分にも、
日常的な例えで引用されているので、なるほどと思わされてしまった。
ただ半面、序章が終わると、学校でさんざん苦しめられた硬い数学に戻ってしまい、
気力が削がれてしまった。
終始一貫して、幾何を数学としてではなく、序章譲りの科学として同じ論調で通してくれると、
気持ちよく読破できたのではないかと思う。
ちなみに「誘い」とあるが、内容はかなり難しい、
自分は4分の1程度しか理解出来ずに、躓いてしまった。
数学が得意でない人には厳しい本で、初心者や学生時代苦手だった人にはオススメ出来ない。