家人の末期の際、傍らで震えながら読んでいた。怖ろしい気持のもとで怖ろしい文章を手に取ることで何かを抑えていた。
死は死を以て回収されるような気がしていた。
しかし怖ろしさではなく、襲ってきたのは故人への敬いと感謝の気持ちだった。愛する者の死がもたらすものは恐怖ではなく数多の後悔だった。この胸はただ寂しい。
私の父がかつて言うた。寂しいから描ける、と。すべからく不幸であるゆえ芸術は生まれる。
作者ボーモントの旅もやはり。
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夜の旅その他の旅 (異色作家短篇集 12) 単行本 – 2006/7/15
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黄色い金管楽器の調べ,古典的な事件,越してきた夫婦,鹿狩り,魔術師 他
- 本の長さ340ページ
- 言語日本語
- 出版社早川書房
- 発売日2006/7/15
- ISBN-104152087420
- ISBN-13978-4152087423
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登録情報
- 出版社 : 早川書房 (2006/7/15)
- 発売日 : 2006/7/15
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 340ページ
- ISBN-10 : 4152087420
- ISBN-13 : 978-4152087423
- Amazon 売れ筋ランキング: - 987,256位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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上位レビュー、対象国: 日本
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- 2020年9月13日に日本でレビュー済みAmazonで購入『夜の旅』が、ちょっともの悲しい、ドラマがあるといった風情で良かったです。ジャズに詳しい人が読めばもっとわかるかもしれません。
- 2016年10月31日に日本でレビュー済みAmazonで購入もうちょっとヘンテコな方が好みだったので、意外とふつーじゃないか、と思ってしまった。
ごめんなさい。でも、つまんなくはないです。ふつーに面白い。でも、ふつーに面白い本は、私には好みじゃないのだった。
- 2006年10月26日に日本でレビュー済みAmazonで購入1.黄色い金管楽器の調べ
2.古典的な事件
3.越してきた夫婦
4.鹿狩り
5.魔術師
6.お父さん、なつかしいお父さん
7.夢と偶然と
8.淑女のための唄
9.引き金
10.かりそめの客
11.性愛教授
12.人里離れた死
13.隣人たち
14.叫ぶ男
15.夜の旅
以上の15篇が収録されています。
既刊の中で比べると収録話が多いので、一話一話がとても短いですが、そんなことは全く気にならないくらい読み応えがありました。
背中がゾクッとするようなミステリー、バカバカしいブラックジョーク等がありますが、何時か起こりうる可能性のある事件を感じさせる、人間の奥底に潜む闇や弱さを主題にした話が多いように思います。
- 2020年12月10日に日本でレビュー済みチャールズ・ボーモントの熱心な読者では無いのだけれど(例えば、「越して来た夫婦」は、私のやわな神経には耐えられない所があったり、「引き金」は作者のしたり顔が垣間見えて来そうで、─尤もプロ作家としての一題材と言えばそれ迄ではあるが─)、或いは「人里離れた死」の読後の一抹の侘しさ─それは、年齢を重ねる毎に味わい深くなる良さにも繋がる─等、再読に耐えうる秀逸な作品も有り(等と私如きが偉そうな事は言えないが)、別けても「夜の旅」は jazz 奏者の或る意味穿った一面を衝いていて、jazz 好きの人には是非読んで貰いたい逸品と言えると思う。
- 2007年11月3日に日本でレビュー済み日本ではまだ知名度は低いですが、著者ボーモントは本書の初版が出された60年代には米国で流行作家として大活躍していました。本書には著者の旺盛なサービス精神を反映して、さまざまなジャンル・舞台の小説が勢揃いしています。闘牛・レーシーング・ジャズ・航海・狩猟・時間旅行・精神病・心理ミステリー・黒人問題・悪魔・SEXetcと誠に多岐に渡っており、無尽蔵かと思われる職人芸に驚かされます。
『鹿狩り』は、出世を夢見て上役と狩猟に出掛けた男が辿り着いた真実を、『魔術師』は、老齢で死を間近に控えた奇術師の善意の苦い結末を、『淑女のための唄』は、廃船になる運命の船の最後の航海に乗り込んだ、嘗ての乗客である老人たちの旅の行く末を、『人里離れた死』は、過酷なカーレースに挑むベテランレーサーの生きざまを、『隣人たち』は、越して来たばかりの黒人家族に迫る苦難の意外な結末を、ラストの『夜の旅』は、ジャズメンの一座に加わったピアノ弾きの青年を待ち受ける悲劇を、それぞれ哀感を込めて重厚に歌い上げています。
私の好みで渋い作品ばかり取り上げましたが、馬鹿馬鹿しく思わず笑える作品や怪奇な作品もあります。でも、こうして全体を通して読むと、作者の本質は人間性を重視した作風にあると強く感じさせられました。悪戯に奇を衒って意外性ばかりを狙うのではなく、どの短編も決して順風満帆でない人々の人生経験に裏打ちされた、それぞれ納得のいく結末になっています。私は本書を読んで、この作者の作品をもっとたくさん読みたいと思いました。幸い今年(2007年)新たな作品集『残酷な童話』が出ましたので、そちらも必ず読もうと思っております。
- 2007年2月11日に日本でレビュー済みトワイライトゾーンの脚本で有名な著者の日本で唯一出版されている短編集。知名度はリチャード・マシスンの方が上だが、この異色作家短編集で比較すると、この「夜の旅その他の旅」は質的にはるかに凌駕していると思う。
ホラーあり、スラプスティックあり、ホロリとさせられる人情ものありでバラエティにとんでおり、最初の数行を読み出しただけですぐに物語の世界へ引き込まれてしまう。中のいくつか(特に最初の作品など)はヘミングウェイを思わせる乾いたタッチの作品もあるが、ストーリーテラーぶりと内容の濃さはこちらの方が数段勝っている。
マシスンのみならず、フレドリック・ブラウン、ロバート・シェクリィ、星新一などをお好きな方は買って読んで損はない。このシリーズで一冊だけ買うなら、文句なしにこの本をお薦めする。