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1995年７月７日発売。
ジャケット―初回盤では、アウターケースの表側―に、“スペシャリストな任侠ヘルパー”が中に入った着ぐるみの写真があしらわれている歴史的名盤。バックトラックをニューヨークで録音したSMAPのオリジナル・アルバムとしては『006』に続いて２作目、ということになる。
「夜空ノムコウ」を収録した1998年のアルバム『012』、その直後リリースされたミニ・アルバム『La Festa』（『011 ス』では内包されていた各メンバーのソロ曲を、『012』には内包せず別個のものとして発売）、そして翌99年１月のシングル「朝日を見に行こうよ」までSMAPのサウンド・プロデューサーを務めた野澤孝智氏がその“趣味”を全開にしつつ大きな成果を収めたのが、やはり『006』から『012』までのオリジナル・アルバム群、ということになるだろう（もちろん『006』と『007』の間のリニューアル・ベスト『COOL』も、忘れるわけにはいかない）。
その中でもこの『007』は格段に評価が高く、「SMAP 007」で検索すると「名盤」というワードも続けて表示されることがあったりする。
なんでだろう、と、自分なりに考えてみると、楽曲の粒、パフォーマンスの凄さやアンサンブルの魅力、これらはもちろんあるけれど、なんといっても曲を並べたその順番の秀逸さも、このアルバムの高評価に大きく寄与しているように思われる。
ここに揃った13曲をどう並べるか、となった時、前半はわりと流れを決めやすいように感じられるけれど、後半、特に最後に向けて、どんな順番で聴かせて行くか、というのは、相当悩むことになりそうで、それを、なかば力技のような感じもありつつ、こう配置した時点で、この『007』が名盤になることは決定づけられていたのかもしれない。
とりわけ、ハードなサウンドにのせた脱力系の、だがまぎれもなく《ホンネ》として少なからず共感できるコトバをメンバーが歌い、またラップっぽく語っている２曲の間に、ドリーミーなサウンドをもつバラード“Alone in the Rain”がサンドされている、この並び順がもたらしたものは、ラストに鳴り響く「ジェームズ・ボンドのテーマ」に負けず劣らず、大きいように思う。
1995年でも今でも、「ヘタレ」だとか「甘いよ」とか言われそうで、よっぽど親しい友達でもない限り打ち明けることもないまま、自分の中だけの“つぶやき”として完結させてしまいそうな、ひとつの恋に別れを告げた男の気持ちを、近年SMAPの中でも演技者として評価される機会の多い稲垣・草なぎのお二人が、まさにつぶやくように歌っていて、聴いた時の状況によっては思わず男泣きしてしまいそうな仕上がりとなっている。
間奏ではマイケル・ブレッカーのメロディアスなサックス・ソロを聴くことができるが、このレコーディングに関しては、マイケル・ブレッカーが
「飛行機の中で、ビリー・ジョエルの『素顔のままで』が流れていた時、間奏のフィル・ウッズのサックス・ソロのフレーズを、他の乗客たちが一斉に口ずさみ出したことがあって。ああいう感じのソロを、自分も吹いてみたいと思っていたんだ」
と、音楽雑誌の記事の中で語っていたのが、今も印象に残っている（その“フィル・ウッズのサックス・ソロ”は『008』収録版「どんないいこと」「胸さわぎを頼むよ」「声を聞くよりも」、『011』の「愛がないと疲れる」等の間奏でも、聴くことができる。R.I.P.）。
もちろんこの“Alone in the Rain”だけでなく（「感じやすい不機嫌」の摩訶不思議な歌詞を、ゴージャスなサウンドをバックにSMAPが歌う、この絶妙なバランス！ 「人知れずバトル」の歌詞にも注目）、シングル曲も「たぶんオーライ」「KANSHAして」「しようよ」と、すべて別ヴァージョンで収録した、全13トラック・およそ１時間。
きっとあなたにも、充実したひとときをもたらしてくれることでしょう。
《SMAP SOUND MEMO》 ※『012』＆“ウラスマ”（2001/8。名曲「オレンジ」を収録）のレビュー共通で掲載のものに、一部加筆しました。
・『006』（1994/7）～『007』～『008』（1996/3）～『009』（1996/8）～『011 ス』（1997/8）～『012』（1998/6）までのオリジナル・アルバム以外では、NY録音によるバックトラックにより「はじめての夏」、「$10」（必聴！！！）といったシングル曲などをリニューアルしたベスト『COOL』（1995/1。新曲「過去の人」含む）、主に『006』以降のアルバム曲を中心に、リミックスしたもの等も数多く含んで構成した２枚組ベスト『WOOL』（1997/3。未発表曲「突然の夏」「月に背いて」含む）に、聴きどころが多い（『Vest』（2001/3）は全曲シングル・ヴァージョンに準拠しており、NYで収録された音源を使用した楽曲は「たぶんオーライ」等、きわめて少ない）。
・アルバム未収録で、バックにNY録音の音源を用いているものとしては、以下の２つなどがある。
「この街で今も君は」（1995/11、「俺たちに明日はある」カップリング曲）
「恋の形」（1998/5、「たいせつ」カップリング曲。フィリップ・セス編曲。別ヴァージョンが“ウラスマ”に収録）
・NYセッション参加の豪華ミュージシャンを中心に、ほぼ全曲、SMAPの楽曲を新録音、または再構成して制作されたアルバムとして、以下の２枚が発表されている（SMAPのメンバーは不参加）。
『Smappies』（1996/4）、『Smappies II 』（1999/6）
・リミックス盤『BOO』（1995/11）も、なかなか興味深い内容となっています。
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