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[中国、ドイツ]

離開(りかい)

Gone
离开

- 中国、ドイツ/2015/中国語/カラー/Blu-ray/78分

監督、脚本、撮影、編集、製作、提供:金行征(ジン・シンジョン)

1960年代には中国全土にあった小学校も、一人っ子政策の影響を大きく受け、90年代に次々と廃校になった。廃墟と化した校舎がひっそりと残る村々に住む子どもたちは、山を下り、バスに揺られながら、遠く離れた小学校に通っている。茶畑だけでは生活が苦しいと語る農家、母親が家出し生活に行き詰まりを感じている一家。浙江省中部の山岳地帯にある学校の日常と、過疎化した村に住む人々の語りからは、中国の農村を取り巻く厳しい現実がにじみ出る。



【監督のことば】2012年、私は浙江省の山村で教育ボランティアの活動に参加した。意外なことに一帯では多くの学校が閉鎖しており、廃墟になっていたり、高齢者の活動センターに建て替えられたりしていた。調べたところ、こうした学校の大半は60年代に建てられたもので、どの建築も趣が似通っている。当時の中国は文化大革命前夜であった。毛沢東時代に提唱された「人多ければ力も大なり」のスローガンに応じて出生率は急激に上昇し、村々に学校が建てられていった。しかし、80年代になって一人っ子政策が浸透すると、出生率は急降下した。改革開放後は経済が飛躍的に発展し、多くの人が地方の町や村から都市へ働きに出たこともあり、地域の学校は継続できなくなった。

 琅珂(ランクー)中心小学校は、学校の閉鎖が続いた山村における最後の小学校である。1929年に開校し、90年代には新校舎も建てられた。当時は260名を超す児童がいたが、2012年に31名にまで減り、14年には最後の2名を残すのみとなり、15年に閉校を迎える。こうしてこの地域からも学校がなくなってしまった。今後近い将来、ここには村人がいなくなり、数千年続いた農家の伝統も失われるかもしれない。

 中国が人口増加を抑えるために行った一人っ子政策は、世界的な貢献はしたのだろうが、国内の多くの農村家庭にとっては、重い負担と不幸をもたらすものだった。男女比のバランスが崩れ、農村では外から嫁を買って家庭を設けるようになった。私たちは、映画の中に出てくる裘爐虹(チウ・ルーホン)や朱紫燕(ジュー・ズーイェン)の家庭から考えさせられる。ひとつの国の政策のために、多くの庶民の運命が変えられてしまったのだ。

 私はカメラでこの山村の学校の変遷を記録した。児童数が激減してゆくという地域の状況の変化を追いながら、この世代の人々が心に負った受け入れ難い傷を描いたつもりである。私たちは歴史の進展を変えることはできないが、カメラで歴史の変革を記録することはできるのだ。


- 金行征(ジン・シンジョン)

杭州の浙江工商大学でグラフィックデザインを学んだ後、メディアアートを多摩美術大学、ベルリン芸術大学で学ぶ。監督作品に、チェコ共和国のブルノ16、ブラジル・ベロオリゾンテのフォーラムドックで上映された『Shuai Jun's Childhood』(2010)、『The Promoter』(2011)、ベルリンのコントラビジョン国際映画祭で上映された『The Birth』(2014)、『A Village』(2014)などがある。本作はベルリン芸術大学の卒業制作作品で、2015年のフライブルク映画フォーラム、マルセイユ国際ドキュメンタリー映画祭で公式上映された。