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[ポーランド、日本]

海辺の王国で

In Thy Kingdom by the Sea
(Umibe no okoku de)

- ポーランド、日本/2019/ポーランド語、英語/カラー、モノクロ/デジタル・ファイル/23分

監督:慶野優太郎
撮影:梅墅轩(メイ・シューシュエン)、慶野優太郎、アグニェシュカ・ルベラ
編集:慶野優太郎、ドロタ・ロシュ
テキスト:羽玉巻治
テキスト・リーディング:カミーラ・カルスカ
音楽:パンツェルネ・ロヴェレ
音響:ニコラス・デ・ラ・ヴェガ
製作:ポーランド国立ウッチ映画大学
提供:慶野優太郎

列車で飛行機で車で一路飛ばして港へ。そこでは、フィリピンなど外国から出稼ぎに来ている船乗りたち、夫がほとんど海に出ている女性、親が漁師なので自分も漁師になると言う少年たち、海軍基地から出てくる兵士たち、学生たち、教会の神父と信者たち、墓地に参る人々等、海に関わる様々な人生が語られる。モノクロの詩的なリズムある映像に、港に生きる人々の世界が広がっていく。ポーランドで映画を学んでいる若手日本作家による作品。(YK)



【監督のことば】ポーランドに来て5年が経とうとしている。この映画は3年経った頃に撮影されたものだ。住んでいたウッチという街で、ある日路面電車に乗ると「国立グディニャ海洋大学学生募集」という広告が載っていた。ウッチは海から300キロ以上離れている。海が見たくなった。

 その年の夏、私は6万円ほどで中古車を買い、半ば無目的に東ヨーロッパを走り回った。外国暮らしが長くなって、少し寂しくなってきた時期だった。止められなくなったひとり旅の途中で、いつかの広告を思い出した。

 夏が終わると、グディニャで撮影を始めた。撮影中に車は何度も故障した。冬にはマイナス15度のなか故障し、車中で寝袋にくるまって夜を明かしたこともあった。

 決まって大事なときに故障したが、この車のおかげで映画に登場する人々に出会うことができた。グディニャでは、仲良くなった何人かの友人から、対岸に見えるヘル半島に行ってみるといいと聞いた。細いところで幅100m、細長く35kmにわたって延びる半島で、夏は観光地として人気だが、冬は閑散とし、いつ海に侵食され沈んでしまうかわからない土地に漁師が住んでいるという。日本人として親近感が湧いた

  映画には私がポーランドで出会ったこの二つの土地に住む人々と、グディニャ港に停泊していた外国船の乗組員が出てくる。遠く外国から来た私は、彼らになって、家族を持つこと、かけがえのない人と離れて暮らすことについて考えてみたくなっていた。


慶野優太郎

東京生まれ。早稲田大学文学部映像演劇コース卒業。映画雑誌『Mirage』を創刊・編集。YIDFF 2011ではデイリーニュース班で活動。大学卒業後、 ポーランドの国立ウッチ映画大学に留学。ポーランド・ウッチに住むスリの少年を主人公にした短編『We Won't Have Our Time Again』(2019)などを監督。平成30年度文化庁新進芸術家海外研修制度の研修員に選出される。また2018年には、ハンガリーの映画監督タル・ベーラの個人指導を受ける。2019年よりポーランド国営ラジオ局に取材した長編ドキュメンタリー映画を制作、また映画学校卒業後に制作予定の長編映画の執筆準備を行う。