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YIDFF 2017 アジア千波万波特別企画
ロックスリー・スペシャル」「ロックスリーの館(展示)
ロックスリー 監督インタビュー

軽やか、自由に、いろいろな行為をとりまぜて


Q: 「ロックスリーの館」では、ドローイングやイラストレーション、アニメーションなど、監督の多彩な作品が大量に展示されていて圧倒されました。過去のデイリー・ニュースに描いたマンガの原画や、山形映画祭スタッフへ個人的に贈った絵画作品からは、監督と山形映画祭が築いてきた信頼関係や時間の厚みを感じ、興味深かったです。

R: 今回展示したものは1989年以降の作品がほとんどですが、山形に関わる作品のオリジナルがきちんと守られていたことがうれしかったです。フィリピンでは水に流されてしまったりするのでね。山形映画祭の人たちと関わることは今でも楽しいです。

Q: いろんな手法の作品がないまぜになった空間でしたが、その多面性が監督の魅力だと思います。表現手法によって感覚の違いはありますか?

R: ミクストメディアの発想で、ボールペンや油彩など、いろいろとりまぜて使うようにしています。ボールペンはロックンロールのギターのような速い動きが出るし、油彩やアクリルはゆっくり描いて色使いも気にします。絵と映画では、映画のほうが充実感がありますね。映画は撮影するし、ペインティング、ドローイング、音響もとりこむことができて、上映もする。さまざまな行為をとりまぜることができるのですごく面白いのです。今回「ロックスリー・スペシャル」で上映した新作映画『スライシング・アート』の中では、ドローイングによる紙芝居のようなシーンがありますが、あれはボールペンですごく速いスピードで描いたものを撮影しました。絵を描く楽しさは、子どものころより強くなったと感じています。 子どもの頃は親に、健全なものを描けと強制されていたので、今のほうが自由度が高いのです。でも卑猥なものを描くというのも、センスがよければいいと思います。

Q: 新作映画『ユアーズ・トローリー』と『マニラ・スクリーム』では、子どもたちの姿が印象的でした。深刻な環境汚染や貧しいバラック生活のなかでも、子どもたちの瞳は輝いていて。もともと関係があった子たちなのですか?

R: 映画を作るにあたり初めて知り合いました。私たちは貧しい地域に入り、子どもたちの親とおしゃべりしながら、彼らとだんだん友だちになって、そのうち親から許可をもらい、撮影を始めました。私は子どもが好きです。貧しい地域の子どもたちを撮影すると、貧しさが映ってしまうけれども、悲しく見せたくはない。彼らは一日三度食事をとっているし、学校に通い、生活しています。その幸福な様子を見せたいと思いました。『ユアーズ・トローリー』では、もうけは少なくても、子どもたちのために一所懸命働く大人たちのたくましい様子も映しています。

Q: 『ユアーズ・トローリー』で、監督自身がトローリーを押しながらハーモニカを演奏するシーンがありましたが、どういった意図があったのですか?

R: この映画にはすでに貧困や苦しい労働などが映っているので、より軽やかなものにしたいと思いました。そこで音楽を使い、楽しい雰囲気の映画にしたかったのです。フィリピンのテレビドキュメンタリーだと、貧しい人たちが映される時は、多くの場合その人物は涙を流していたり、同情を乞うような言動をしているところが使われます。でも私はそういうふうに見せたくなかった。前向きなイメージにしたかったのです。 映画を通して私たちも、彼らの背中を押してあげたいと思っています。がんばれよ、と。

(構成:黄木可也子)

インタビュアー:黄木可也子、桝谷頌子/通訳:藤岡朝子
写真撮影:安部静香/ビデオ撮影:田寺冴子/2017-10-08