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YIDFF 2013 ともにある Cinema with Us 2013
輪廻 逆境の気仙沼高校ダンス部
宮森庸輔 監督インタビュー

めぐりめぐり、辿り着いた先


Q: 映像や写真、舞台監督など、マルチに活躍なさっている宮森監督ですが、気仙沼高校ダンス部との出会いも、仕事でのつながりだったのでしょうか?

MY: 仕事で気仙沼に行ったのは事実ですが、彼女たちとの出会いは本当に偶然によるものでした。私は海外のテレビ局からのコーディネーターをしてほしいとの依頼で、被災地である気仙沼におもむきました。避難所で一泊してからテレビ局員と会う約束だったのですが、連絡が取れなくなってしまいました。結果的に2週間後に会えたのですが、そのあいだに、気仙沼の様々な人にお世話になりました。その時に、ダンス部員のひとりである三浦佳織さんに出会ったんですよ。彼女に「ダンス公演があるから見に来ないか」と誘われ、「それなら、映像の仕事もしているし、ダンスを撮ってあげるよ」というのがこの映画を撮ることになったきっかけですね。

Q: 彼女たちが踊った『輪廻』の美しさに感動しました。宮森監督ご自身は、彼女たちのダンスを見てどのように感じられたのでしょうか?

MY: 私も実際に彼女たちのダンスを見て驚き、感動しました。指導者もいない、練習場所の確保も難しい。その中で作られたダンスであの完成度の高さ。普通に生活している高校生が考えられるような内容でもないですし、実際に震災を経験した彼女たち自身が作ったからこそ生まれた作品ですよね。そのように感じたからこそ、ただダンスを撮るだけでなく、『輪廻』が作られるまでの過程も撮ってみようと思ったんですよ。

Q: 映画の中での彼女たちは、辛さや悲しみなどあまり出さず、明るく、前向きでしたね。意図的に負の描写があるものを避けたのでしょうか?

MY: いえ、まったくそのようなことは考えていなかったです。ありのままの彼女たちを撮っていたら、自然とそうなりました。それに、彼女たちだけでなく、他の被災者の方たちにも言えることですが、被災者の方って意外とあっけらかんとしているんですよ。「震災があって悲しい」ではなくて、何より「死ななくて良かった。命があっただけ良かった」という考えなんですよ。映画の中で部員の子もそう言っていましたよね。震災があったからこそ、部員同士仲良くなれたし、家族に対する考え方が変わった。震災自体はマイナスなものではあるけれど、それをプラスにとらえ、前向きに考えている。彼女たちの辛さや悲しみなどは、彼女たちがひとりになったときを撮れば、もしかしたら見えたかもしれません。しかし、私はそこまで踏み込もうとは思いませんでした。

Q: この映画に対する監督の思いをお願いします。

MY: 映画のラストでも伝えているように、震災からの完全復活はまだまだ先です。それに、彼女たちのダンスに感動し、この映画を撮った者としては、『輪廻』が過去のものになるのはもったいないと思っています。この映画がきっかけとなって、彼女たちが再び『輪廻』を踊る機会ができればと個人的に願っています。『輪廻』に込められた震災の恐怖、被災者の辛さ、支援してくれた人たちへの感謝が映像からではなく、直接伝わってほしいです。この映画が未来へとつなぐものになったら、監督として幸せです。

(採録・構成:永田佳奈子)

インタビュアー:永田佳奈子、室谷とよこ
写真撮影:大宮佳之/ビデオ撮影:大宮佳之/2013-09-28 東京にて