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YIDFF 2013 アジア千波万波
みんな聞いてるか!
カマル・アフマド・サイモン 監督インタビュー

映画として美しいものを作りたかった


Q: 平和な親子のシーンや緊張感のある村人たちの話し合いのシーン、幻想的な早朝の岸辺のシーンなど、様々な雰囲気のシーンが印象的でした。ひとつの映画にまとめる上で構成はどのように考えましたか?

KAS: 大枠では地球の気候変動をテーマに持っていこうとしましたが、そういう問題ばかりに注目してしまうと、とても苦しくなってしまいます。なので、気候変動というテーマをきっかけに、美しい土地、空、人々とその暮らしぶりを、映画の世界で見せるように構成しました。

Q: この作品を制作した過程は、どのようなものだったんですか?

KAS: あの災害が起きた時、私は別の作品を制作中でした。しかし、その土地で苦しんでいる人々と、コペンハーゲンでの気候変動の会議の状況を見て、アーティストとしてすぐに応えていかなければいけないと感じました。

 制作期間は3カ月で、地元の船に乗せてもらって200キロを旅しました。そこで私は、出会う人々が美しく活気に満ち、勇気を持っていると感じ、それは気候変動という問題にはまったく関係ないと気がつきました。私は気候変動に非常に怒りを持っていましたが、それは彼らへの愛に変わっていきました。

Q: 最後のほうの少年との会話のシーンで、監督の声を残したのはなぜですか?

KAS: それまでは古典的な物語の語り口調でしたが、私の声を残すことで、この作品がドキュメンタリー映画であり、フィクションではないということを観客に思い出してほしかったからです。また、そのシーンで少年が私に「どこかに連れて行って」と言いますが、私はそれを聞いてとても普遍的だと感じました。つまり、人が育った家を捨ててどこかへ出ていき、最終的には戻ってくるということが象徴的に表れていると感じ、このシーンを入れたんです。

Q: タイトルには、どのような意味が込められているのですか?

KAS: この作品は雨のシーンから始まり、人の関係から政治的なことまで様々な話が出てきます。私は客観的にそれらを見て、村の人々は何年かかっても、堤防とダムを作ると思いました。しかし、堤防が完成した後、また雨が降ってきたんです。つまり、この作品は雨から始まり、堤防ができて問題が解決すると思ったらまた雨が降ってくる、というように繰り返し巡っています。ある場所から出発してどこか別の場所に到着すると思っていたらまた振り出しに戻ってしまった、人生は繰り返していくんだと思いました。そして、自分たちの夢を見続けていく、鼓舞しながら生きていくんだという人生の歌が、自分に聞こえてきたかのように感じました。その歌をみんなにも届けたいと思い、このタイトルにしました。

Q: 現在のシュタルカリ村は、どのような状況なのですか?

KAS: 今のところ村は生き残っていますが、今後どうなるのかは分かりません。実際に村に行ってこの作品を制作した監督として言いますが、この映画はその村についての限られた映画ではありません。似たような村、状況は日本にもあると思います。この映画は、とにかく諦めてはいけない、進んでいかなければいけない、夢を見続けていこうという映画です。

(採録・構成:鵜飼桜子)

インタビュアー:鵜飼桜子、黄木可也子/通訳:川口隆夫
写真撮影:岩田康平/ビデオ撮影:仲田亮/2013-10-14