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貸出作品リスト:YIDFF '91


※監督の下段のデータは、製作国/製作年/使用言語/色/フィルム種別(35mmの場合のスクリーンサイズ)/上映時間/字幕

YIDFF '91 インターナショナル・コンペティション出品作品


頑固な夢

Stubborn Dreams ('91 ロバート&フランシス・フラハティ賞)
監督:ソボリッチ・ベーラ
ハンガリー/1989/ハンガリー語/カラー/16mm/93分/日本語字幕あり

ひなびた国境近くのハンガリーの小さな村ラーバジャルマトでは、70年にも及ぶ演劇サークルの活動が続いている。団員の大多数は素朴な普通の、辛い労働をしてきた人々で、彼らの顔や手にはその歴史が深く刻み込まれている。年に一度の上演が間近に迫り、練習は熱が入って夜明けを迎えた。束の間なら誰もがスターになれる。こうして、古風なロマン主義とノスタルジアが漂う村の祭りは、芝居の上演で頂点に達する。

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閉ざされた時間

Locked Up Time ('91 山形市長賞)
監督:シビル・シェーネマン
ドイツ/1990/ドイツ語/モノクロ/35mm(1.33)/90分/日本語字幕あり

ベルリンの壁が崩壊する前、監督とその夫は社会主義国家の権威と法を無視した理由で逮捕され、西ドイツに追放された。ドイツ再統一の後、監督はカメラを携え、当時起こったことを分析し理解するためにその地に戻る。彼女は、その時の自分の運命を変えた刑事、弁護士、役人などを追跡する。しかし殆どの人々は、昔のことを思い出そうとせず、上からの命令で何もわからずただ義務を果たしたという事実だけを主張した。これは国家の専横さ、報復、厳重な支配についての記憶されるべき映画である。

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その昔7人のシメオンがいた

There Once Were Seven Simeons ('91 優秀賞)
監督:ヘルツ・フランク、ウラジミール・エイスネル
旧ソ連/1989/ロシア語/モノクロ/35mm(1.33)/89分/日本語字幕あり

この映画の内容は衝撃的である。ソ連(当時)のイルクーツクに住み、来日もしたことのある明朗なジャズ・バンドの家族がいた。しかしそれから3年後、この家族はレニングラード行の飛行機をハイジャックして失敗に終り、4人の息子は集団自殺、母親も自分の意志で息子に射殺される。同じ人間とは思えない運命の落差。その悲劇に至る様々な矛盾する要素を対比させながら、映画は3年間の空白の意味を観客に問いかけてくる。

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石の賛美歌

Canticle of the Stones ('91特別賞)
監督:ミシェル・クレフィ
ベルギー/1990/アラビア語/カラー/35mm(1.66)/105分/日本語字幕あり

パレスチナにおける人間の風景と痛みについての映画である。イスラエルの街を舞台としたこの作品は、その土地に切り放すことができないアイデンティティを持ったパレスチナ人の日常生活の緊張を捉えている。生きている場所そのものが闘争の場であり、自国にいながら亡命者の立場を強いられるパレスチナ人の苦悩と、恋人たちの再会という愛の物語を並置して、ドキュメンタリーとフィクションを互いにさりげなく交錯・浸透させ、魅力的でいいようのない存在感を感じさせる。

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ミニ・ジャパンの子供たち

Children of Mini-Japan ('91 奨励賞、市民賞)
監督:チャラム・ベヌラカル
インド/1990/タミル語/カラー/16mm/60分/日本語字幕あり

インドの南タミル・ナードゥ地方の小さな町シバカシは、インドのマッチ産業の70%、花火産業の90%を占めている。この町は、マッチ・花火工場のオーナーによってミニ・ジャパン(自営の町)と誇らしげに呼ばれているが、同時にこの町は、5歳から10歳までの25万人近くの子供たちが働く世界最大の児童労働者の町である。ともすればセンチメンタルになりがちな児童労働のテーマを、監督はナレーターの解説なしに映し続け、問題の重大さを強調する。

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人工太陽の日食

Eclipse of the Man-Made Sun
監督:ニコレット・フリーマン、アマンダ・スチュワート
オーストラリア/1991/英語/モノクロ、カラー/16mm/55分/日本語字幕あり

崩壊した東西冷戦構造。だが核の危機は遠のく事がない。核の問題について語られたことはすべて見聞きしたと、誰もが思っているかもしれないが、この映画は、多くの新しく、予想もできないシーンで構成されている。記録映画、インタビュー、セミ・フィクションを使い、歴史と証拠を順序よく提示することは避け、広大なテーマを引き出すことにより、驚くべきテクノロジーに馴染んだ私たちの思考を再構成する。

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ホテルクロニクル

Hotel Chronicles
監督:レア・プール
カナダ/1990/英語/カラー/16mm/74分/日本語字幕あり

タイトルからサム・シェパードの『モーテル・クロニクルズ』が連想され、そのイメージに連なる『パリ・テキサス』は、共に路上の文字、路上の文学である。この作品が描くケネディやキングやモニュメントヴァレー、あるいは様々な人々が語るアメリカン・ドリームは、外側から眺めたアメリカ像に過ぎないかもしれない。しかし、この外側からの視点こそ水面下の作品を呼び起こすことを可能にし、ナレーションの詩的な言葉と相俟って、観客を不思議な旅に誘う。

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生きて帰れてよかったね

How Nice to See You Alive
監督:ルシア・ムラト
ブラジル/1989/ポルトガル語/カラー/35mm(1.33)/100分/日本語字幕あり

理想に燃え、反体制運動を行って拷問を受けながらも生き延びた女性たちの体験。体制に異を唱えただけで、その人民から疎外され差別される。その結果、かたくなに沈黙を守り二度と理想を見ようとしない女性たちは数多い。監督もまた都市ゲリラ活動に参加し逮捕・拷問を受け、刑務所で過ごした経験を持つひとりである。彼女は同性の元活動家たちの自らの記憶と思いを徹底的に吐露させ、「ともかく生きていてよかったね」という思いを共有する。

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ママ・カレ

Mama Calle
監督:アリアンヌ・ラーン
オランダ/1990/スペイン語/カラー/16mm/63分/日本語字幕あり

ラテンアメリカは、家出した子供たちが、あらゆる大都会の通りでかろうじて生きている世界である。この作品に登場するメキシコのストリート・キッズは、あどけない顔した小さな大人たちである。夜、冷たいビルの中で子供たちが固まって眠る姿には人間の暖かさがあるが、それは同時に子供たちに近づいた監督の暖かさでもある。この映画が製作された理由は、子供たちがこんな生き方をしなければならない非情さであり、子供たちがいかにもろい存在であることを世界中に見せるためである、と監督は言う。

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特権

Privilege
監督:イヴァンヌ・レイナー
アメリカ/1990/英語/カラー、モノクロ/16mm/103分/日本語字幕あり

この作品は2、3本のフィルムから構成された実験的長編で、更年期およびそれを取り巻く医学的または社会的な神話と数々の現実を描いている。監督は中年女性の立場から社会学的視点と女性特有の感性で、更年期についてはもちろんのこと、周辺に起こる現実的問題を鋭く提起して行き、証言者たちがその物語の糸を縫合する。これは、誰もが映画で扱うことを決してしなかった性的アイデンティティと、人種・性・階級の経済的不平等についての作品である。

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死のトライアングル

Triangle of Death
監督:イェジー・スワトコフスキ
スウェーデン/1990/ポーランド語/カラー/16mm/57分/日本語字幕あり/スライド字幕、音声別

この作品はスウェーデンで活躍するポーランド出身のイエジー・スワトコフスキ監督が故国の悲惨な姿を描いた作品である。ポーランドの南西部にある鉱工業地帯は、工業優先政策のために公害の影響が著しい。特にそれは子供たちの身体をむしばんでいる。映画は大胆にナレーションを省略して、ひたすら映像によって公害に打ち倒された世界を凝視していく。キャメラはまるで生き物のような感触を持ってそれらを映し出す。その鋭い映像の喚起力は、画面に公害の破壊的イメージを誕生させた。