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2004.03.18

誤字等No.046

【ホットドック】(外誤科)

Google検索結果 2004/03/18 ホットドック:19,400件

アメリカ人の国民食、ホットドッグ。
hot dog(熱い犬)」なんて、変な名前ですね。
まさか、犬の肉を使うのが正統な作り方というわけでもないでしょう。
その名前の由来について記載したページは、たくさん見つけることができました。
その中のひとつをご紹介しておきます。
DANchan's Home Page」というサイトの中にある、「アメリカンフードについて(4)」というタイトルのページです。

ホットドッグ」の「ドッグ」は、まぎれもなく「dog(犬)」のことです。
しかしこれが「ドック」と表記されるケースが非常に多いのです。

もともと日本人は伝統的に、清音と濁音をあまり区別しません。
有名な「いろは歌」は、すべて清音で書いてあっても適度に濁点を入れて読むことができます。
単独で使う場合には清音の単語が、連語になることで濁音になることも珍しくありません。
そして特に外来語の場合、往々にして「語尾の濁点」があいまいとなります。

bag(鞄)」を「バック」と発音したり、「bed(寝台)」を「ベット」と言ったりすることは普通に行われています。
そして大抵は、何の問題もなく通用します。

そういった発音に抵抗のない人は、「ドッグ」と「ドック」を区別しません。
声に出して発音するとき語尾にアクセントがなければ、聞き分けも難しくなります。
区別が難しければ、その人にとって両者は「等価」となります。
「そんな細かいコト、どっちでもいい」といった感じでしょうか。
特に、同じページの中で「ドッグ」と「ドック」を併記しているようなページでは、両者は使い分けされることもなく「同じ言葉」として扱われています。

ドッグ」だけでもそうなのですから、「ホットドッグ」となっても同じこと。
検索結果は、それを如実に示しています。
ホットドッグ」が33,000件に対して、「ホットドック」は19,400件。
これだけ使用頻度が高ければ、もう誤字の範疇外であり、「表記の揺れ」と判定されるレベルと言えます。

ドックフード」や「ブルドック」は、それでいいです。
それを聞いて「dock food」や「bull dock」だと思う人はあまりいないでしょうから、コミュニケーションの阻害要因にはなりません。
正確に伝わるなら、それでいいのです。

でも、ちょっと待ってください。
ホットドック」も、そうでしょうか。

Googleの「イメージ検索」で「hot dock」を調べてみたら、バイクの写真が出てきました。
私にはよく分かりませんが、どうやら、ちゃんと意味を持った言葉のようです。
また、コンピュータの世界では、電源を入れたままパーツを取り付けることを「ホットドック」あるいは「ホットドッキング」と言うことがあります。

違う意味の言葉が実在するのであれば、少なくとも文字にするときは「hot dog」は「ホットドッグ」と表記した方が良いという気がしてきました。
意味が違いすぎるので、そう簡単に誤解されることはないと思いますが。

さて、「ドッグ」と「ドック」が「等価」であれば、逆方向の変化も起こります。
本来は「ドック」であるものが「ドッグ」になってしまう例は、何があるでしょうか。
ありました。「人間ドッグ」です。
人間ドッグ」あらわる! 新種の人面犬か? それとも半人半犬の妖怪か?
…と、冗談のネタにされてもおかしくない言葉ですね。

人間ドック」とは、短期入院などにより精密に行う健康診断のこと。
航海を終えた船をオーバーホールする「dock(船渠)」に由来する言葉でしょう。
ドッグ」では意味不明です。
しかし、「人間ドッグ」の検索結果の中には、病院や役所のページがずらっと並んでいます。
この人たちは、本当は「dock」だということが分かっているのでしょうか?
それとも、「dog」だと思い込んでいるのでしょうか?

おそらく、どちらでもないと考えられます。
単なる「カタカナ語」としか認識していないのではないでしょうか。
そして「ドッグ」と「ドック」が等価だと思っていれば、「人間ドッグ」にも違和感は生じません。

結局、こういった些細な違いは「気にしない」方が幸せなのでしょうね、きっと。
余計なストレスを溜めて、「人間ドック」で警告されないためにも。

[実例]

日本人とは、かくも「外国語の発音」に弱いのでしょうか。
このような「外国語の発音」が原因と思われる誤字等の品種を、「外誤科(がいごか)」と命名しました。

[亜種]

ブルドック:23,900件
ドックフード:11,100件
ドックラン:6,440件
プレーリードック:6,390件
ソルティードック:992件
ドックレース:559件
人間ドッグ:9,960件
ドッギング:21件

※ 2005/07/09
「ホットドッグ」の名前の由来について記されているページへのリンクが切れているというご指摘を頂きました。
修正し、サイト名とページタイトルを追記しました。

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